第154話 牢屋へGO!
まあ、そんな訳で。
牢屋に入れられてしまった訳なんですけれども・・・
俺じゃねえっつーの!
俺の名前はジローだっつーの!
怪盗マイルドセブンなんて知らねえっつーの!
散々そう言ったのだが聞き入れては貰えなかった。
みんなも、俺の事を擁護してくれたのだが、衛兵達は一向に聞く耳を持たなかった。
「俺は無実だっつーの!」
「すいません、少し静かにしてもらえませんか」
「あ、はい、すいません」
隣の牢屋にも誰か入っている様だ。女の子の声だったな。・・・待てよ? 何処かで聞いた声だな。
「あの~、そちらにいるのは、もしかしてファンナだったりする?」
「・・・え!? その声! もしかしてジローさんですか!」
「やっぱりファンナだったか、よかった、心配していたんだよ」
「ジローさんこそ、一体どうしたんですか?」
「それはこっちも聞きたいよ、ファンナが牢屋に入っているなんて思いも寄らないからね」
「ジローさん! 酷いじゃないですか! どうして私を置いて先に逃げちゃったんですか!」
ファンナは怒っている様だ、一体何に怒っているんだ?
「ファンナ、落ち着いて、何があったの? ファンナを置いて逃げるってのがよくわからないんだけど」
「ジローさん、衛兵に取り囲まれていたじゃないですか」
「え? ああ、ついさっきの事?」
「違います! 三日前の事ですよ!」
三日前? 知らないなあ。
「ファンナ、俺は三日前というと、まだセレニア公国に居たよ」
「そ、そんな!・・・じゃあ、あの人は一体・・・」
どうやらファンナも俺のそっくりさんに出会ったらしい、どうしてファンナが牢屋に入れられているのか聞いてみよう。
「ファンナ、一体何があったの?」
「・・・はい、順を追って話します、私はサリー王女様と共にパラス・アテネの港町に着いたのですが、そこでサリー様と別れ、私は冒険者ギルドへと向かいました」
「うん、それで」
「その途中でジローさんを見かけたのです、私は、まさか?っと思い、ジローさんに近づき声を掛けようとしました」
「俺のそっくりさんだね」
「はい、今思えばおかしいな~っと思います、それで、ジローさんに近づいた時でした、街の衛兵がジローさんのことを取り囲みだしたのです」
「なるほど、」
「私は何かの間違いだと思い、ジローさんに加担し、衛兵に手を上げてしまったのです」
「え!? そうなの?」
「はい、私は公務執行妨害とかでその場で逮捕されました。ジローさんはいつの間にかどこかへと消えているし、・・・私はどうしようと思いました・・・」
「そうだったの・・・」
まさか、ファンナが衛兵に手を上げていたとは、さすがにこれは事案だろうな。しかし、俺の為を思っての行動だったんだろうな、ファンナは優しい子だからな。
「ファンナ、よく聞いて、実は俺のそっくりさんがこの街に居るみたいなんだ、そいつの名前は怪盗マイルドセブン、怪盗ってぐらいだから多分何か犯罪を犯している可能性が高い、俺はそいつと間違われて逮捕されたのさ、参ったよ」
「そうだったのですか、何かおかしいな~と思っていたんですよ、これで納得です」
「何はともあれ、ファンナが無事で良かったと思うよ」
「そう言えばジローさん、私、サリー様に頼んで伝意の石の使い方を教えて、ジローさんにパラス・アテネに来ないでって伝えて貰った筈なんですけど」
「ああ、その伝言は聞いたよ、だけどファンナが心配だったからね、こっちに来ちゃったよ」
「今、街の至る所にジローさんのそっくりさんの手配書が張り出されていますからね、それでサリー様に頼んだのですが、結局ジローさんも捕まってしまったんですね」
「申し訳ない」
「だけど、良かった~、ジローさんが犯人じゃなくて、」
「心配掛けたね、ファンナ、ごめんね」
「いえ、もういいんです」
こうして、俺はファンナに会う事ができた、まあ、望んだ形ではなかったが。何にしてもファンナが無事で本当に良かった。
・・・それから、どれぐらいの時間が経ったのだろう・・・
一週間? いや、一月は経った筈だ。いい加減体が痒くなってきた、飯も不味いし、風呂に入りたい風呂に。気が滅入る、俺は無実なのに。しかし、ファンナも置いては行けない。どうしたもんか・・・
・・・何やら外が騒がしい、一体なんだ?
その時、突然看守がやって来て、俺とファンナの牢屋の鍵を開けた。
「出ろ、恩赦が出たぞ、」
「恩赦?」
「ああ、そうだ、我が国の抱える事態、魔物の大進行(スタンピード)が収束したのだ、」
「え!? そうなのですか!」
「ああ、モンスターを操っていた首謀者も倒されて、今、都はお祭り騒ぎだぞ、首謀者を倒したシャイニングナイツの方々に感謝しろよ」
「そ、その首謀者ってのは一体誰なんですか!?」
「ん? 確か、ホークウッド・・・だったかな、そいつが魔物共を操っていたらしい」
そうか! やはりホークウッドの仕業だったか、それにしても、そのホークウッドを倒してしまうなんて、シャイニングナイツってのは本当に実力者揃いなんだな、俺じゃあこうはいかないだろうな、ホークウッドに勝てる気がしなかったからな。
「折角自由の身になったんだ、中庭で体を洗ってから外へ出るようにしろよ」
「は、はい、どうもご苦労様です、お世話になりました」
俺は久しぶりに牢屋を出て、ファンナと顔を合わせる。
「ああ、ジローさん、やっと出られましたね!」
「ええ、よかったですね、ファンナ!」
俺とファンナはようやく解放された事に喜び、お互いの無事を確かめ合う。
「いやー、一時はどうなるかと思いましたよ」
どうやら他の受刑者も恩赦が与えられた様だ、牢屋に入っていた人達がみな、中庭へと歩いて向かっていた。
「俺達も中庭へ行こう、ファンナ」
「はい、行きましょう、ジローさん」
俺達は牢獄の通路を通って、中庭へとやって来た、その光景は凄かった。
「み、皆さんすっぽんぽんですね」
「い、幾ら自由の身になったからって、女性まで裸に・・・」
恐らく裸になる恥ずかしさよりも、自由の身になった事の方が上回ったのだろう、みんなすっぽんぽんになり石鹸を使って体を洗っている。
「ファンナ、郷に入っては郷に従えと言うし、ここは一つ俺達も裸になって洗おうじゃないか」
「ええーー!? そんな、は、恥ずかしいですよ!」
俺は有無も言わさず服を脱ぎだした、それに続いてファンナもゆっくりと服を脱ぎだした。石鹸を手に取り、泡立てて、水を少しからだに掛けて、体を洗う。気持ちいい、今までの垢が取れていく感じがした。
ファンナも恥ずかしがりながらも石鹸で体を洗っている、こうして見ると、ファンナも綺麗なボディーラインをしている。・・・は、・・・いかんいかん、何考えてるんだ、親子ほども歳が離れている相手だぞ、邪な考えは捨てよう。
俺は体を丹念に洗う、最後に桶に掬った水を頭から被って、綺麗に体を洗い流す。
「ふう~、さっぱりした」
気分すっきりだ、ファンナの方を見るとファンナも体を洗い終わって布で水滴を拭いているようだった。俺も看守の人に渡された手拭いで体を拭く、・・・よし、綺麗さっぱりだ。気分一新した。
収容所の出入り口の所にある荷物を預けるカウンターで、俺達が持っていた装備品を返された、俺とファンナはそれぞれ装備を身に着けて監獄を後にする。
「・・・ようやく自由になれましたね、ジローさん」
「・・・そうですね、ようやくですね、ファンナ」
まあ、収監されていた間に事態は収束したそうだが、・・・俺は何しにここへ来たんだか・・・
おじさん、ホント参ったよ
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