第153話 王都パラス・アテネ到着
俺とカスミさんは今は休憩している、周りを見るとモンスター共はみな逃げ出している、どうやらこの場の戦いは決着が着きそうだ。
そこへ、ピピとエミリエルお嬢様がやって来た。
「二人共、お疲れ様、何か変わりは無い?」
「これはお嬢様、いけません、ここはまだ危のうございます」
「何言ってるのカスミ、モンスターなんてとっくに逃げ出しているじゃない、そんな事よりこれからどうする? 王子は追撃したがっているみたいだけど」
「すいません、お嬢様、俺達今はあまり動きたくないです、もう少し休憩したいです」
「あら、そうなの、わかったわ、王子には私から言っておくから」
「助かります」
ピピは俺のところに来て、空中をふわふわと飛んでいる、エミリエルお嬢様はフレデリック王子がいる所へと歩いて行ったみたいだ。
そうだ、ルビーさん達は大丈夫かな、ちょっと様子を見に行こうかな。
「カスミさん、俺の冒険者仲間のいるところへ行きませんか?」
「はい、いいですよ、行きましょうか」
俺とカスミさんはその場を立ち、ゆっくりとルビーさん達がいるところへと歩いて向かう。
その時、地面にキラリと光る物が落ちていた、これは・・・ペンダントだ。よく見ると葉っぱと木片で作られた素朴な感じの造りをしている物だった。これは確か、あの時のザンジバル軍の兵士が持っていた・・・これが地面に落ちているという事は・・・・・・
「・・・どうしたの? ジロー」
俺はそのペンダントを拾い上げる。やっぱりあの時の兵士の物だ・・・・・・
「・・・ピピ、何だかやり切れないよな・・・」
「・・・たたかいはひじょーなのよ」
「・・・ピピは逞しいな・・・」
「・・・たくましくなきゃようせいはやってられないのよ」
「・・・そうかい・・・」
そうだよな、俺達、モンスターと戦っているんだよな・・・戦いに敗れる者もいるんだよな・・・
その時、突然後ろから声を掛けられた。
「冒険者殿、この辺に私のペンダントが落ちていませんでしたか?」
「うわっ、びっくりした、あ!? あなたはあのときの兵士の方ではないですか!このペンダントここに落ちていましたよ!」
「おお、これは、冒険者殿が見つけて下さったのですか、かたじけないです」
何だよ! 心配させんなよ、とっつぁん。俺はまたてっきり・・・
兵士にペンダントを渡す、兵士はとても喜んでいるようだ。
「いやー、助かりました、戦っている最中にヒモが切れてしまいましてね、ずっと捜していたのですよ、いやーよかった、娘にどやされずに済みます、冒険者殿、ありがとうございます」
「・・・いえ、どういたしまして・・・」
ザンジバルの兵士は他の兵士達と合流していった。
「どうしましたか? ジローさん」
「何でもありません、行きましょうか、カスミさん」
俺達はルビーさん達のところへとやって来た、ルビーさんもサーシャも元気みたいだ、ドワーフ傭兵団の皆も無事な様で。
「終わりましたよ、ルビーさん」
「ああ、見てたよジローさん、それに、そっちの娘さんも」
「あ、初めまして、ジローさんと同郷のカスミと申します」
「カスミだね、よろしく、あたいはルビー、魔法使いさ、あんたがサイクロプスと戦ってくれたお陰であたいは助かったよ、どうもありがとうよ」
「いえ、私なんか大した事は・・・」
「ジローさんもありがとうよ、あたいの為に高価な薬を使ってくれたんだろ、感謝するよ」
「いえ、ルビーさんが助かって良かったと思います」
「次は私ね、私はサーシャ、弓使いのスナイパーよ、ご覧の通りエルフよ、よろしく」
「は、はい、よろしくお願いします、サーシャさん」
一頻り挨拶し終わった時、エミリエルお嬢様がこっちにやって来た。
「あら、元気そうね、変わりない」
「おや? エミリーのお嬢ちゃんも来てたのかい、物好きだねえ、こんな所まで」
「私だけじゃないわよ、フレデリック王子もこっちに来ているんだから」
「ええ!? 王子様もかい、こりゃあ賑やかになるねえ」
「ところで、おっさん、王子様の事だけど、」
「はい、何か」
「殿下は追撃を断念したみたいよ、今はパラス・アテネの軍の人とお話しているみたい、このまま王都へ向けて出発するそうよ」
「そうですか、それがいいかもしれませんね」
逃げたモンスターを追撃できるほど、こちらに余力は残っていないだろう。ここは素直に王都へ向かうべきだろうな。これまでの行軍で兵士達も疲れているだろうし。
「ところで、ジローさん、ファンナは見かけないけど、どうしたんだい?」
「ああ、その事で俺は今パラス・アテネに行こうとしているんですよ、ファンナとは連絡が付かないので」
「ファンナと連絡が付かない? そうかい、そいつは心配だねえ」
「私とルビーは今はドワーフ傭兵団に雇われの身だから、自由に行動できないのよね、ジローの事を手伝ってあげたいけど、今の私達じゃちょっと無理かな」
「そうですか、いや、お気持ちだけで十分ですよ、サーシャ」
「ごめんね、ジロー」
そうだよな、ルビーさん達はドワーフ傭兵団の人達に雇われているんだった、今の依頼を放棄させる訳にはいかないよな。
皆と色々話して、このままパラス・アテネ王国の王都へ向けて出発する事が決まった。俺はエミリエルお嬢様の馬車には乗らず、徒歩で王都に向かう事にした、ルビーさん達と一緒に歩く。移動速度はゆっくりだ。
「ジローさんは王都に着いたらどうするんだい?」
「そうですね、まずはファンナを捜さないと、それから先程の戦いで召喚されたモンスターが、一体誰の仕業かも調べたいですね」
「そうかい、あたい等は王都にある傭兵ギルドに寝泊りしているから、何かあったら訪ねておくれよ」
「はい、その時は頼らせていただきます」
こうして、俺達は王都に到着したのだが、大きい、物凄く大きい、流石このミニッツ大陸一の中心国家だけのことはある。壁なんて30メートルぐらいなのが王都全体をぐるりと囲んでいて、とても一日じゃ回りきれないぐらいだ。セレニアの公都も大きかったが、パラス・アテネの方が圧倒的にデカイ街だ。
壁門のところまで行くのにかなりの時間が掛かった、壁門も横幅が広い、馬車4台が横に楽にすれ違える程に道幅がある。門衛の人数も多い。
皆は壁門を素通りしていったので、俺もその様に素通りしようと思って門を通り過ぎようとした時だった。
「ちょっと待て! 貴様は何処かで見た顔だな、手配書と見比べてみる、ちょっと待っていろ」
「は、はい・・・」
一体なんだろうか? この国に来たのは初めてなのだが・・・
「んん!? 間違いない! こいつだ! こいつが怪盗マイルドセブンだ! 全員出動! こいつを確保せよ!」
な!? 何だ何だ!? 突然俺の周りに衛兵達が俺を取り囲みだしたぞ。一体どうなってんだ?
「さあ! 大人しくお縄に付け、怪盗マイルドセブン!」
何だ? そのたばこみたいなのは?
おじさん何もしてないよ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます