第152話 対サイクロプス戦




 俺は今、サイクロプスと相対している。カスミさんが先にサイクロプスと戦ってくれたおかげでルビーさんを助ける事が出来た、カスミさんには感謝だな。


それにしてもたった一人であんな巨体なサイクロプスと渡り合うカスミさんって、一体何者?って感じだ。見た目は普通の17歳位の女性に見えるのだが、彼女もまた俺と同じ転移者なのだ、きっと何かしらの力が宿っているに違いない。


俺はサイクロプスに接近して、攻撃が届く範囲の足に狙いを付ける。


「それ!」


サイクロプスの軸足にミドルアックスを叩き込む。


「グウォオオーー・・・」


よし! しっかりとダメージは通るみたいだ、ただ、一撃でどれ位のダメージを与えたのかはわからない。ただひたすら攻撃していくしか今の所、手が無い。


俺のジャンプ攻撃は精々5メートル位の高さしかジャンプできない、まあ、それでも普通の人よりかは遥かに高くジャンプ出来るのだが。


カスミさんは余裕で7メートルを超えるサイクロプスの顔までジャンプして、ビンタを顔面に叩き込んでいる。一体どんだけの身体能力なんだ?


サイクロプスが巨大な棍棒を振り上げた、攻撃が来る!


「カスミさん! 一旦距離を取って!」


「はい!」


サイクロプスはデカイ図体なので、こっちとしては見上げる形になるので、相手の攻撃のタイミングを見極める為にある一定の距離を保つ必要がある。


大体5メートル位離れていれば、サイクロプスの攻撃モーションを見極める事が出来る。


サイクロプスが棍棒を振り下ろしてきた。


俺とカスミさんはそれぞれ左右にサイドステップで避けて距離を取り、回避する。


「どうしますか、ジローさん!」


「サイクロプスの弱点は頭と一つ目のところです! カスミさんは顔面にビンタを打ち込んで下さい! 俺はサイクロプスの足をメインに攻撃していきます!」


「わかりました!」


俺の攻撃をサイクロプスの弱点の頭に届かせる為には、サイクロプスを屈ませる事でもしないと届かない。まずは軸足を中心に攻撃を叩き込んでいき、態勢を崩す必要がある。


「どっせえええい!」


カスミさんがサイクロプスの顔面にビンタを叩き込む、凄く痛そうだ。


「グガアアアア・・・」


カスミさんは着実にダメージを与えている。


「いたたた、」


「どうしました!」


「いえ! 大丈夫です! ちょっと掌が張ってきただけです!」


そうか、カスミさんの身体能力はずば抜けて高いが、耐久力が高いという訳でもないのか。カスミさんにあまり無理させられないな。


俺はサイクロプスに再接近し、カスミさんがビンタを叩き込んだ隙を突いて軸足に攻撃を叩き込む。


「グガアア・・・」


よーし、俺も着実にダメージを与えている。この調子でいけば・・・


「きゃああ!」


カスミさんが悲鳴を上げた! 何だ!


上を見上げるとサイクロプスの手にカスミさんが握り込まれていた。マズイ! カスミさんが捕まった!


俺はハンドアックスに持ち替えて、サイクロプスの腕目掛けて投擲した。


ドカッ!


よし、当たった。サイクロプスは思わずカスミさんを手放した、よし、うまくいった。


「助かりました、ジローさん」


「攻撃モーション中に不用意にモンスターに近づいてはだめですよ、」


「はい、気をつけます」


まあ、カスミさんはあまりこういった事は慣れていないのかもしれないけど、俺だってゲーム「ラングサーガ」の知識で今まで何とかやってきただけだしな。とにかく油断は禁物と言う事だな。


サイクロプスが歩く度に地響きがする、正直怖いが何とかやってみる。


サイクロプスが棍棒を横薙ぎに攻撃してきた。


俺はバックステップでこれを回避する、その後直ぐに軸足に急接近しミドルアックスを叩き込む。


カスミさんも顔面にビンタを叩き込んで、サイクロプスの態勢を崩し、スタッ、と着地する。


サイクロプスはタフだ、間違いなく大物ボスモンスターだな、慎重にいく。


攻撃しては離れ、様子を伺い、また攻撃に転じる、これをくり返す。


まだサイクロプスは屈まない。ホントにタフだな、こいつ。


「グガアアア!」


サイクロプスが俺達の攻撃に鬱陶しがったのか、棍棒を振り回し突然暴れだした。


「カスミさん! 距離を取って!」


「はい!」


俺も距離を取る、しばらく様子見だ。サイクロプスの攻撃で他のモンスターが巻き込まれて倒されていく。無茶苦茶だな。見境なしか。こっちはしばらく呼吸を整える。これまでの戦いで俺も結構疲れている。


試しにファイアの魔法を使ってみる、狙いは頭だ。


「くらえ! 《ファイア》!」


炎が真っ直ぐ飛んでいき、サイクロプスの頭に見事に命中した。


「グオオ・・・」


おや、意外とダメージを与えたみたいだ、サイクロプスは顔を押さえている。


「ジローさん! あなた魔法が使えるのですか!?」


「え? ええ、まあ」


「・・・そうですか、」


ルビーさんの声も聞こえた。


「あたいもう驚かないよ、ジローさんが魔法を使っても」


しかし、これはチャンスだ、今のうちにサイクロプスに接近して、軸足にミドルアックスを連続で叩き込む。


「グガアアア・・・」


すると、サイクロプスに変化があった、しつこく軸足に攻撃していたおかげか、多々良を踏んで転びそうになる。よし!チャンスだ!


「カスミさん! ビンタを!」


「はい!・・・どっせえええい!」


バチコーン!


「グオオオオ・・・」


よーし!サイクロプスが態勢を崩して屈みこんだ、これで俺のジャンプアタックが頭に届く。


「ヒートアックス・・・発動!」


俺はミドルアックスに火の属性の魔力を注ぎこむ、ミドルアックスが赤熱して炎を帯びた。


「よし! いくぞ!」


俺はジャンプし、サイクロプスの頭目掛けてヒートアックスと化したミドルアックスを力一杯叩き込む。


「うおおおおおおお!」


ズガガガガッ!


攻撃は見事に頭に命中、弱点を捉えた。サイクロプスの防御を抜けて大ダメージを与えた筈だ。


「グガアアアアアアアァァァーーーーー・・・・・・」


ズシーーーン


サイクロプスがゆっくりとした動きで倒れ込んだ、サイクロプスはピクリとも動かない。


その時だった、倒したサイクロプスが突然大量の砂粒になって地面に崩れ落ちた。


「なに!? 砂粒に変わっただと?」


どういう事だ? 倒したモンスターが砂に変わるって事は、このサイクロプスは誰かに召喚されたモンスターと言う事になる。一体誰が・・・・・・


サイクロプスほどの大物モンスターを召喚して使役出来る人なんてそうそういない。


真っ先に思いつくのは、やはりホークウッドあたりか・・・それとも別の奴か、いかんいかん、先入観で考えては答えが遠のくかもしれない。ホークウッドじゃないかもしれないし。



{経験点1000点獲得しました}


{シークレットシナリオをクリアしました}

{3BP獲得}



お、どうやら経験点が手に入った様だ、いつもの女性の声が頭の中で聞こえた。ふう~やれやれ、何とかなった。


周りを見るとモンスターは皆一斉に逃げ出している最中だった、ボスモンスターが倒されたので状況不利と判断したのかもしれない。


「何とかなりましたね、ジローさん」


「ええ、もうへとへとですよ」


「私も・・・」


俺とカスミさんは背中合わせになり、その場で座り込んだ。後の事はザンジバル軍やパラス・アテネの軍の人達に任せればいいか、とにかく疲れた。もう動きたくない。


そこへ、一人の馬に跨った騎士風の人がやって来た。


「お前達! 無事か!」


突然声を掛けられたので振り向くと、全身鎧のフルプレートメイルを着た騎士だった、声から察するに女性だと思うが、フルフェイスの兜を被っていて顔はよくわからない。おそらくべっぴんさんだと思うが、声が透き通った感じだったから多分そうだ。


「サイクロプスが出たと聞いて急いで駆け付けて来たのだが、おらんではないか?」


「ああ、サイクロプスなら倒しましたよ」


「なに? 嘘を申すな、そんなサイクロプスを討伐できるほどの大部隊がいたとは聞いておらんが、お前達、生き残りか?」


「あ、いえ、そうではなく・・・」


「ふん、大方大部隊の影に隠れてこそこそと逃げ回っていたのであろう、働かぬ者に水はやらんぞ」


「は、はあ、あの~、貴方は一体・・・」


「ん? 私か、お前達の様な見るからに下っ端に自己紹介するのも何だが、一応名乗ってやる、我が名はシャルロット、女神教会聖騎士隊所属のシャイニングナイツだ、クラスは聖騎士パラディンで隊長を務めている」


なんと、シャイニングナイツの方だったか、そう言えばサーシャがシャイニングナイツは色々と活躍している、って言っていたな、サーシャ曰く義勇軍とシャイニングナイツは月とすっぽんらしい。


シャルロットさんは凛々しい出で立ちをしていらっしゃる。


「そこのお前、その羽織っている物は義勇軍の旗か?」


「え? ああ、これですか、はい、自分は冒険者のジローと申します」


「何? 冒険者? 義勇軍ではないのか」


「あ、はい、義勇軍のメンバーでもあります」


「・・・そうか、何にしてもサイクロプスがいないのでは私が来た意味も無いな、私はこれで失礼する、他の所の兵士達の様子も見に行かなくてはならないのでな、では」


シャルロットさんは馬を転進させて、他の人達がいる所へと行ってしまった。


「・・・何なんでしょうね?、ジローさん」


「・・・さあ? 何なんですかねえ」




おじさんは動きたくないよ






















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