第150話 遭遇戦




 ここはパラス・アテネ王国の王都近郊あたり、俺と騎士バンガード殿は今、パラス・アテネ軍とモンスター共が戦っている戦場へ向けて馬で駆けている。俺は馬に乗れないので、騎士バンガード殿の操る馬の背に乗せてもらい、二人乗りさせてもらっている。


「ジロー! 現場は乱戦になってるかもしれねえ! 今のうちにあの旗をマント代わりに結んどけ!」


「え? あの旗? ああ、義勇軍の旗ですか、わかりました」


馬に乗りながらなので難しいが、何とかバックパックから義勇軍の旗を取り出し、背中に羽織り首の前で結ぶ。よし、これで乱戦の中でも俺が何処にいるのか一目でわかるようになった筈だ。やっぱり恥ずかしい、けど、そんな事言ってられない。


馬はどんどん進み、戦場が近くなってきた、あまりモンスターが沢山いる敵陣中央まで突入するのは危険な感じがする。


「バンガード殿! あまり敵陣深くまで突っ込まないで下さい! 身動き取れなくなってしまいますよ!」


「わかってらい! ジローを適当なところで降ろして、俺は本隊に合流する!」


「はい! お願いします!」


モンスターが沢山いて密集している所をなるべく避けて、騎士バンガード殿は馬を進ませている。よくわからないが、こういう時の馬って怖くないのかな、確か馬って前方が見えないんじゃなかったっけ。それにしてはバンガード殿が操る馬はスイスイと敵陣の中を進んでいる。きっとバンガード殿の操馬技術のウデがいいのかもしれない。


それにしても、何処を見てもモンスターだらけだ、パラス・アテネ軍は陣形を崩されながらも必死になって戦っている、戦場は乱戦状態になりつつある様だ。ここまでだな。


「バンガード殿! ここまでで十分です! 俺はここで降ります!」


「わかった! ジロー! 無茶だけはするなよ!」


「はい!」


俺は騎士バンガード殿の馬から飛び降り、地面に着地する。周り中モンスターだらけだ、騎士バンガード殿は、馬に跨ったままでモンスターを次々と馬で跳ね飛ばしながら来た道を引き返して戻っていった。


「さて、一丁おっぱじめますか!」


目の前のモンスターにミドルアックスを振り回して蹴散らす。モンスターは一撃で倒せる、力25は伊達じゃない。周りのモンスターが一斉に動き出した、俺を取り囲む様に位置取りをして次々と掛かって来た。


「俺もこんな所で倒れる訳にはいかない! 容赦無くいくぞ!」


モンスターの構成はゴブリンが殆どで、あとはオークの数が多い、大鬼のオーガはまだ少ない方だ。ミドルアックスを縦に横にと振り抜いて、モンスター共を倒していく。囲まれてはいるが、いまのところ何とか持ち堪えている。次々とモンスターが向かって来てはそれを倒す。背後を取られないようにうまく立ち回る、ちょっと疲れてきた。だが戦いは始まったばかりである。ペース配分を考えながら戦う。だけど俺はそんな器用な事はあまりできない、とにかく目の前のモンスターを倒していく。


俺の前にオーガが立ちはだかった、オーガは身長3メートル位で全身これ筋肉といったごつい体格をしていて、力が強い、そして思いの他、動きが素早い。強敵ではあるが、こちらの攻撃が届かない訳ではない。ただ一撃で倒せないだけだ。


スキル「ハイスピード」のおかげでモンスターのオーガの動きも、まるでスローモーションのように見える。モンスターの攻撃を避けるのが楽になってきた。ただ自分の体力が持つのかと言う事である、俺ももう年だからな。若者の様にはいかない、だけどまだ大丈夫だ、まだ疲れていない。


「グガァアア!」


オーガがパンチ攻撃をしてきた、俺はそれをサイドステップで避ける。ついでにこちらも攻撃する。


今度はドロップキックをかまして来た、更に避ける。スキルのおかげだ。ついでに攻撃、よし着実にダメージを与えている。


今度はこっちの番だ、俺は前方に高くジャンプしてオーガの頭目掛けてミドルアックスを振り下ろす。


よし、攻撃は命中、見事にオーガの頭を捉えた。かなりのダメージを与えたようだ。


「グガァアア・・・・・・」


ズシーーン、とオーガが倒れる、よしやったぞ、オーガを何とか倒した。流石にオーガともなると一撃という訳にはいかない。


周りの様子を見る。モンスターの数はまだ全然減らない感じだ。一体どの位のモンスターがいるんだ?周り中モンスターだらけじゃないか。


モンスターと戦いながら、少しずつ前進する。しかし、圧倒的にモンスターの数が多い。ちっともサイクロプスに近づけない。


その時、戦場の別の方向からトキの声が聞こえた。


「ザンジバル騎馬隊! 突撃いいいいーーーー!!!」


「「「「「 おおおーーーーーーー!!! 」」」」」


ザンジバル軍だ。王子の騎馬隊の突撃が始まったようだ。


ドドドドドドッ!!っと騎馬隊の馬の蹄の音が物凄い勢いで聞こえてくる、騎馬隊は戦場を真っ直ぐに突っ切って駆けている。100騎からなる騎馬隊の突撃はさすがに物凄い迫力だ。騎馬隊はモンスターを次々と跳ね飛ばしながらランスを前に構えて、モンスターを刺し貫いていき、あっという間にモンスターの数を減らしている。凄い。


いつの間にかサイクロプスまでの道が開けた、よーし、流石は騎馬隊だ。やはり騎馬は歩兵に有利に働いているようだ。フレデリック王子から声を掛けられた。


「ジロー殿! 無事ですか!」


「はい! 王子! 助かります!」


「サイクロプスまでの進路は確保しました! ご武運を!」


「はい!」


「ジローさん! 行きましょう!」


「え!? カスミさん!」


「私も行きます!」


「わかりました! 頼らせていただきます!」


いつの間にかカスミさんも戦線に出て来ていた様だ。カスミさんと二人で騎馬隊が開けた道を突き進んでいく。


カスミさんはゴブリンやオーク、オーガでもお構いなしにビンタをかましながら進んで行く。ほぼ一発だ。一発でモンスターをぶっとばしている。カスミさんはぶっちぎりで強い。え? これ俺いらないんじゃ。


サイクロプスは巨大な為、すぐに見つける事ができた。俺はちょっと疲れてきてはいるが、まだ大丈夫だ。何とかやってみる。


「ジローさん! あそこ!」


カスミさんが指差した方向を見ると、いた! サイクロプスだ。デカイ! 本当にこんなのと戦わなくちゃならないのか、これは大変だぞ。しかし、こっちだってカスミさんがいてくれる。遅れは取らないさ。俺も頑張らないとな。



ルビーサイドーーーーーーーーーー



「サーシャ! 援護の攻撃はどうしたんだい!」


「今やってるでしょ! モンスターの数が多すぎるのよ! そこ、狙ったわよ!」


「お嬢ちゃん! 援護の魔法はどうなっとるんだ!」


「もう魔力がカラなんだよ! あたいはこれ以上戦えないよ!」


「なんだって! ええーい仕方ない、ドワーフ傭兵団! 魔法使いを守りながら後退!」


「「「 へい! 」」」


「サーシャ! 頼むよ! あんただけしか援護攻撃できないからね!」


「無茶言わないでよね! こっちだっていっぱいいっぱいなんだから!」


「団長! デカブツが来ますぜ!」


「なに! サイクロプスのやつ、こっちに来よったか! ええーい! 後退、急げ!」


「ルビー! どーすんの!」


「逃げるしかないだろ! 退くよ! サーシャ!」


「逃げながら弓を撃つって結構大変なんだからね!」


「弱音なんか聞きたくないよ! ほら! 急いで!」


「だめだ! サイクロプスのヤツ! こっちに狙いを付けやがった! 来るぞ!」


「グガァアアアア!」


「サイクロプスが棍棒を振り上げおったぞ! 気をつけい、嬢ちゃん!」


ドゴッ!


「あうううーーー・・・・」


「ルビいいいいいーーーーーー! いやあああああーーーーーーーー!」


「なんてこった! サイクロプスの攻撃をまともに・・・」


「ルビー! いやよ! こんなところで寝てないで起きるの! ルビー!」


「エルフの嬢ちゃん! 動かさん方がええ! 落ち着け!」


「ドワーフは黙ってなさいよ! ルビー! しっかり!」


「このままじゃこっちがやられるわい! サイクロプスが来とるんだぞ!」


「だけど! このままにはしておけないわ! 何とかしてよ!」


「無茶言うでないわい! わしらだって戦いの機先ってやつを見極めておるんだ! ここは逃げるべきだぞ!」


「・・・誰か!・・・何とかしてよ!・・・だれかあああーーーー!」























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