第139話 セレニアで宴会




 俺とスカーレットさんとピピで今は立食形式の宴に参加している、うまそうな食事がこれでもかと言わんばかりに用意されている、いつのまにこれだけの料理を用意できたのかな、ちょっと疑問だ。


お酒もいろいろな種類の酒が用意されているみたいだ。さーて、何から食べようかな。そう言えばシスターマリーを見かけないな、もしかしたら厨房にいたりして、まさかな。いや、ありえるか。シスターマリーの作る料理はうまいからな、きっと厨房でお手伝いしているに違いない。


あ、しまった、義勇軍の旗を掲げっぱなしだった、俺は急いで義勇軍の旗をバックパックに仕舞いこむ。よし、これで準備完了、いつでも食えるぞ。まずは肉だ、肉料理のあるところへと向かう。小皿に取り分けてその場で食う。なんだかバイキング形式みたいだな。うん、うまい。


「おいしいわね、ジローさん、このハムのステーキなんか最高ね」


「ですね、あ、こっちのローストチキンもうまそうですよ」


「・・・あたしはさくらんぼだけでじゅうぶんだもん」


「そんな事言わずピピも食ってみろよ、うまいぞ」


俺はハムステーキを小さく切り分けて、ピピにも食べやすい大きさにしてピピに差し出した。ピピは少しづつ食べる。


「どうだピピ、うまいか」


「・・・うん、おいしい」


「そうか、そりゃあなによりだな」


「このサラダもおいしいわよ、ピピちゃん」


「・・・たべる」


ピピも結構満足しているみたいだ、よーし、俺も食うぞ。ハムステーキを頬張る、うん、うまい、胡椒がきいている。こっちのローストチキンもうまい、肉ばっかじゃなく野菜も食べないとな。サラダを取り分けて葉野菜みたいなのを食べる、うん、新鮮でいい感じだ、歯ごたえがあって野菜を食っているって感じだ。


お酒もすすむ、うまいエールにうまい飯、いいな、こういうの。他のみんなもうまそうに食べていて、料理に舌鼓を打っている。酒も飲んでわいわいと騒がしい感じになってきている。スカーレットさんは蜂蜜酒ミードを飲み、ピピはさくらんぼのブランデー漬けを食べている。


少し酔ったかな、お酒はほどほどにしとこう。折角うまい飯が用意されているんだ、ゆっくり味わおう。


「ジロー殿」


ふいに誰かに呼ばれたような気がした、誰だろうか。周りを見渡すとそこにはジョアンナ様と騎士ヨムンさんともう一人、イケメンがいた、おそらくジョナサンさんだ。何かな?


「これはジョナサン様、本日はこの様な宴にお呼び頂き恐縮です」


「堅苦しい挨拶は無しにいたしましょう、ジロー殿、マリアンデールから聞きました、わざわざバーミンカムからマリアンデールの事をを探しにやって来たとか、何の知らせもせず申し訳なく思っていたところです」


「いえ、そのような、何か事情がお有りになったのでございましょう」


「はい、実は、マリアンデールをこちらに連れてきたのは、あの貴族のばか共が勝手にした事なのです、私の耳にその情報が届いたのはマリアンデールがこの国に到着した後だったのです」


「・・・貴族、ですか・・・」


「はい、おそらく次期公爵に仕立て上げようとしていたのでしょうね、マリアンデールは振り回されていただけみたいですし、・・・議事堂の件は聞きました、ジロー殿には感謝しかありません、本当にありがとうございます、マリアンデールとジョアンナの事を守っていただき・・・」


「ああ、その事ですか、いえ、大した事では、それよりもあのホークウッドなる人物とは一体何者なのでしょうか、只者ではない気が致します」


「・・・やはり、ジロー殿もお気付きでしたか、確かに、ホークウッドがあやしい動きをしていたのはこちらでも把握しておりました、奴は黒ですよ、真っ黒です、闇の崇拝者との関わりも噂されていましたし、怪しい奴等がホークウッド邸に出入りしているという情報もあるぐらいです」


「・・・やはり、そうでしたか、闇の崇拝者の一人と同時に議事堂にいた時からどうも嫌な予感がしていました」


「そして、件のホークウッド邸の屋敷に踏み込んだのですが、既にもぬけの空でした、家具一つありませんでしたよ、綺麗さっぱり無くなっていました」


「そうでしたか、おそらくテレポートリングを使って何処かへと転移したと思います、どこにいったのかまでは存じませんが・・・」


「・・・そうですか、ホークウッドの件は引き続き警戒を怠らない様にしませんとね、またいつ現れるかわかりませんから・・・」


「そうですね、」


「ともかく、ジロー殿、この国の為に尽力していただき、感謝いたします」


「は、勿体無きお言葉、恐縮です」


「モンスターの襲撃の事も恐らくホークウッドの計画だと思います、ジロー殿もお気をつけて」


「はい、」


モンスターの事もホークウッドの差し金か、・・・と、いう事はホークウッドの奴はモンスターをも操っていたって事なのか、だとしたら今回の件も慎重に考えないとならないな。


・・・・・・闇の崇拝者・・・・・・か、・・・


「ジロー! 今回の戦いのお話を聞かせなさい!」


「ジョアンナ様、今回はあなたもご覧になられていたではないですか」


「西門の戦いの事ですわ!」


「う~ん、そう仰られても、お話するような事はございませんでしたよ」


「何を言っているの! わたくし聞きましたわ! オークロードをやっつけた話ですわ!」


「おいおい、ジョアンナ、ジロー殿は疲れておいでだ、あまりご無理を言う物じゃないぞ」


「だって、お兄様・・・」


「お前がその手の話に傾倒している事は知っていたが、皆の者は今疲れておいでだ、ここは大人しくしていなさい」


「う~~、だって・・・」


ジョアンナ様の目がキラキラと輝いている、よっぽど好きなんだな、冒険話が。


「いいですよ、お話致しましょう、」


「ジロー殿、あまり妹を甘やかさないで下さい」


「構いませんよ、俺は」


「じゃあ! 早く聞かせなさい!」


「はい、オークロードは手ごわい強敵でしたが・・・・・・」


俺はオークロード戦の話をしようと思っていたのだが・・・


「ジロー殿」


ふいに誰かに呼ばれた、今度は誰だ?


「おっさん、こんな所にいたの、あら、こちらの方がたはどちら様なの」


「よ~う、ジロー、飲んでるか~」


別の方向からフレデリック王子とエミリエルお嬢様達がやって来た、カスミさんと騎士バンガード殿も一緒だ。


「貴方は、確かジョナサン公子でしたか、今回のモンスターの襲撃騒ぎは災難でしたね」


「貴方方は確か、ザンジバル王国軍のフレデリック王子でしたか、お初にお目に掛かります、このセレニア公国の公爵家の者で、ジョナサンと申します、こっちが妹のジョアンナです」


「初めまして王子様、わたくしジョアンナと申します、以後良しなに」


「初めまして、ジョアンナ様、ザンジバル王国王子、フレデリック・ザンジバルと申します」


「私はバーミンカム王国マゼランの都のミレーヌ伯爵の娘、エミリエル・ルクードですわ、以後お見知りおきを」


「あら、貴方も戦いに参加したのですか? あらまあ、色々聞きたいですわね」


「戦いに参加したのは私ではありませんわ、こちらの私の専属護衛のカスミがオーガ共の相手をいたしましたのよ」


「あらまあ、そうでしたの、こちらのお嬢さんが、とても強そうには見えないですけれども」


「あ、初めまして、私はカスミと申します、エミリエルお嬢様の護衛をさせて頂いております」


「カスミはね、とっても強いのよ、オーガを素手で倒しちゃったんだから、」


「まあ! その話、是非聞きたいですわ!」


「え、いえ、そんな、私なんか大した事では・・・」


これまたジョアンナ様の目が輝きはじめた、琴線に触れたみたいだな。カスミさんも強いみたいだな、今度俺も聞きたい事があるから一緒に飲みに誘ってみようかな。いや、やめとこう、そんなガラじゃないからな。


「ジロー君、いるかね」


またふいに誰かに呼ばれた、今度は誰だ?


「お、居た居た、ジロー君、こんなところにいたのかね、ん、何やら賑やかだねえ、俺様も仲間に入れてくれたまえ」


「これはブライガー伯爵様、わざわざご足労痛み入ります」


今度はブライガー伯爵とその護衛のフランクさんがやって来た。


「これはブライガー伯、今回のモンスター襲撃の件での救援、誠にありがとうございました、貴方方一人一人の奮戦があったればこそ、この国の平和が守られた事、このジョナサン、感謝の念に耐えません、フレデリック王子、エミリエル嬢、カスミ殿、ブライガー伯、本当に有難う御座います」


「はっはっは、何、気にする必要は無い、たまたま通りかかっただけなのだ、それに背中に纏いつく影りみたいな物は、男と言う名の物語みたいなものだよ」


「ちょっと、何言ってんですか伯爵、また勇者語録ですか? いい加減にして下さいねホント、」


「ちょっとフランク黙って」


「・・・・・・な、何はともあれ、感謝の気持ちしか返せませんが、宴など、どうか楽しんで頂ければ幸いです」


「うむ、うまい飯にうまい酒、実にいいな、楽しませて貰っているよ、ジョナサン殿」


「・・・皆様、冒険のお話をわたくしにお聞かせ下さいませ!」


「ああ、いいとも、まずは・・・・・・」


こうして、ジョアンナ様に今までの戦いと如何にして戦い抜いたかなどをみんなで話ていった。ジョアンナ様は終始目を輝かせて、鼻息荒くみんなの冒険話に耳を傾けていた、ホント好きなんだな、ジョアンナ様は。


宴もみんなでわいわいがやがやと騒ぎ、戦いの疲れそっちのけで酒や料理を楽しんだ。俺もいい感じにほろ酔い気分になり、つい夢中になってジョアンナ様に冒険話をこれまた臨場感たっぷりに語って聞かせた。あまり飲み過ぎないようにしなくては。




おじさん、もうお腹いっぱいだよ








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