第137話 公都セレニア防衛戦 4




 俺達はまだ西門付近にいる、モンスターの攻撃の第二波、第三波があるかもしれないからだ。しばらくの間様子見をしているところなのだが、西門での戦いに参加した衛兵や冒険者達、ブライガー伯爵の軍の人達はそれぞれ休憩を取っている。さすがにみんなへとへとだろう。


と、そこへ街の中央から兵隊が現れた、おそらくセレニア軍だろう、そう言えばジョナサンさんに相談するとジョアンナ様が言っていたから、たぶんその関係で動いたのだろう、セレニア軍は真っ直ぐ西門へ向かって来た。そこで隊長らしき人が話し掛けてきた。


「な!? なんと! もう戦いが終わっているではないか! 一体どういう事なのだ」


「ああ、隊長さん、お疲れ様です、見ての通りもうモンスターの襲撃は西門では終わりましたよ」


「・・・お、お主は?・・・」


「あ、はい、冒険者のジローと申します」


「・・・その背中の旗は、・・・確か義勇軍の旗だったと記憶しているが・・・」


「あ、はい、自分は義勇軍でもあります」


「・・・お主が西門を救ってくれたのか?」


「え? いや、そんな事ありませんよ、西門の救援に駆けつけてきた軍はブライガー伯爵の軍ですよ」


「俺様がそのブライガーだが」


「こ、これはブライガー伯爵様、我がセレニア公国の為にお力をお貸し下さった事、深く感謝しております、」


「なあに、気にする必要はない、俺様は元々はセレニアではなくパラス・アテネの救援に向かう所だったのだが、通りかかっただけの事なのでな、まあ、宴などあれば参加するがね」


「は、お気遣い、感謝いたします、事が落ち着き次第公爵家の方から労いと感謝の言葉があるかと思います、酒の用意もその時にでも」


「うむ、わかった、ではここはセレニア軍に任せて、我等は東門の救援に行こうではないか、なあ、ジロー君」


「はい、そうですね、急ぎましょう」


「義勇軍の方もありがとうございました」


「いえ、まだ終わってはいませんから」


俺とスカーレットさんとピピは合流し、ブライガー伯爵の軍と共に東門へ向けて移動しはじめた。この場はセレニア軍に任せればいいだろう、俺達は東門へ急ぐ。


街の中央の道を通ってそのまま東門へ、途中市民の人々がこちらを見て指を挿し、「あ、義勇軍の旗だ」などと噂にしているのが聞こえてくる、俺の事だよなあ、恥ずかしい。さっさと通り過ぎよう。


東門に到着した時、ここにもセレニア軍がいたのだが、なんだか様子が変だ、みんな休息しているみたいだ。あれ? 東門にもモンスターの攻撃があったんじゃなかったっけ。ちょっと聞いてみよう。


「あの~、すいません、東門にモンスターの襲撃があったと聞いて来たのですが・・・」


「ん? あんたは?・・・まさか義勇軍なのか! いやーご苦労さん、折角来てくれたのに申し訳ないのだけど、東門にも援軍が現れて何とか事なきを得たよ、モンスターは全滅だよ」


「え? 援軍ですか、一体どこの軍隊ですか?」


「さあ? けど今、東門警備隊長がその援軍と話をしているよ、ほら、あそこ」


兵士が指を挿した方を見ると、警備隊長らしき人物と一緒に、どこかで見知った事がある顔ぶれが見えた。あ! あれは・・・


「なんだ? 折角俺様達が駆けつけてきたというのに、もう終わっておったのかね」


「ええ、どうやらそうみたいですね、しかも東門を救ったのはどうやら俺の知り合いかもしれないみたいです」


「ほう、ジロー君の知り合いかね、折角だから挨拶でもしてきたらどうかね」


「あ、はい、そうですね、それじゃあちょっと失礼いたします」


俺は東門の警備隊長らしき人と話し合っている人物に声を掛けた。


「お話中失礼いたします、冒険者のジローと申しますが、東門の救援に来たのですが、どうやら遅れてしまった様ですね、申し訳ありません」


「え?・・・冒険者?・・・あなたその背中の旗は義勇軍の旗ではなくって」


「あ、はい、義勇軍でもあります」


隊長と話していると、見知った人から声を掛けられた。


「・・・な~んだ、誰かと思えばおっさんじゃない」


相変わらずおっさん呼ばわりだ、元気そうで何よりだな。


「しばらくぶりですね、エミリエルお嬢様、それに・・・フレデリック王子」


「久しぶりですねジロー殿、息災そうで何よりです」


「まさかここで王子達に出会えるとは思ってもみませんでしたよ」


「我々はパラス・アテネ王国の救援の為に軍を動かしたのですが、その途中でこのセレニア公国がモンスターに襲われている所を目撃しまして、それで助けに参った次第なのですよ」


「そうだったのですか、立派な行動だと思います、エミリエルお嬢様もよく戦いましたね」


「あら、私は今回はあまり戦ってはいないわよ、そうよねカスミ」


「え? そうなんですか、みなさん戦っておられたではないですか」


「まあ、私の連れてきた50人の私兵は後方で支援していただけだし、基本的に前線で戦っていたのはフレデリック王子率いる150人のザンジバル軍と、あなたよね」


「あ、そうそう、酷いじゃないですかお嬢様、私にだけ最前線で戦えだなんて、しかも大物のモンスターばかりを倒せだなんて、無茶にもほどがありますよ」


「あら、でもオーガを沢山倒したじゃない、あなたのビンタで、」


「結果的にそうなっただけですよ、私だってカヨワイ女なんですからね」


「はいはい、素手でオーガを倒せるか弱い女性ね、・・・て、そんなのいる訳ないじゃない!」


「まあまあ二人とも折角こうして知り合いに出会えた訳なのだから、エミリーもカスミも穏便に」


なんだか賑やかだな、エミリエルお嬢様とフレデリック王子の事は知っているけど、もう一人の女性は知らないな、一体誰なんだろうか。


「あのー、もしよろしければそちらの女性を紹介していただけませんか」


「あ、そうよね、おっさんは初見だったわね、この子はカスミ、私の専属護衛よ」


「初めまして、エミリエルお嬢様の専属護衛をさせていただいております、一般人のカスミと申します」


「素手でオーガを倒す人は一般人とは言わないわよ」


「ちょっとお嬢様は黙っててください」


この人素手でオーガを倒したのか、凄そうだな、どこからどう見ても普通のお嬢さんに見えるのだが、それに美人だ。カスミさんと言うのか。


「申し送れました、俺の名はジローと申します、一応義勇軍と言う事になっていますが、ただの冒険者です、以後、お見知りおきを」


「ジローさんとおっしゃるのですか、よろしくお願い致します」


「はい、こちらこそ」


「おーい、ジロー君、俺様にもこの者達を紹介してくれたまえ」


「あ、そうですね、こちらのカイゼル髭がよく似合う人がブライガー伯爵様です、旅の途中で知り合いまして、とてもお強いんですよ」


「うおっほん、俺様がブライガー・フェルナンド伯爵だ、以後、よろしく頼む」


「お初にお目にかかります、バーミンカム王国ミレーヌ伯爵の娘、エミリエル・ルクードと申しますわ」


「初めまして、ザンジバル王国王子、フレデリック・ザンジバルと申します、よろしく」


「ほーう、わざわざザンジバルから来なさったか、それは長旅であったであろう、パラス・アテネの救援の為に来るとは見上げた心意気よ、よろしく頼む」


お互いに挨拶を交わして、お互いの無事を称えあった。そうか、東門の救援はザンジバル軍が駆けつけたのか。騎士バンガード殿は元気かな。と、そこへ、そのバンガード殿がやって来た。


「王子、見回りをざっとしてきましたが、もう問題ありません、モンスター共は全滅したようです」


「ご苦労、バンガード、休憩してくれ」


「王子、そんな事よりセレニアに凱旋でさあ、うまい酒にありつきましょうや」


「おまえは相変わらずだな」


「お久しぶりです、バンガード殿」


「ん? おいおい、そこにいるのはまさかジローか、なんだ久しいじゃねえか、この出会いを祝して乾杯といこうや」


「相変わらずですね、バンガード殿は」


そんなこんなで、久しい人達にも出会えて、何とか東門の問題も無事解決できたみたいだな。後の事はセレニア軍に任せればいいか、俺達はセレニアに凱旋でもしようかな。とにかく、セレニア公国を無事に守る事ができてよかった。みんなのおかげだな。



{シナリオをクリアしました}

{経験点2000点獲得}


{シークレットシナリオをクリア}

{5BP獲得  1SP獲得}



お、どうやらシナリオをクリアしたみたいだぞ、ふう~、やれやれ、これで一息つけるかな。なにはともあれ何とか守れてよかった。




おじさん仲間に助けられたよ
















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