第136話 公都セレニア防衛戦 3






 ジローサイドーーーーーーーーーー


俺はブライガー伯爵と一緒に西門を出て、草原地帯になっている戦場に足を踏み入れた。スカーレットさんとピピは西門の所で抜けてきたモンスターに対処してもらう為、西門に残してきた。俺の背中には義勇軍の旗がはためいている。目立ってしょうがない。


戦場は乱戦状態になっている、確かに俺の背中に旗を掲げていれば自分がどこにいてもわかりやすくはあるけれども、俺とブライガー伯爵は戦場に打って出た。見渡す限りモンスターだらけだ。衛兵と冒険者達が戦っている。文字通り乱戦だ。


「それではジロー君! おっぱじめようか!」


「はい! 伯爵!」


まずは一番近いモンスターのところまで行ってミドルアックスを振り下ろす。ゴブリンを倒す。


ブライガー伯爵も背中のバスタードソードを抜いてオークに切りかかる、一刀両断だ。一撃でオークを倒す。さすがだ。


俺の方にオークが向かって来た、オークの槍を余裕をもって回避する、返す刀でミドルアックスを横薙ぎに振るいオークを倒す。


さらにゴブリンが3匹向かってくる、俺はバックステップで距離を取り、戦い易い様に位置取りをする。


ゴブリンが石斧で攻撃してきた、それをかわして反撃する。


ミドルアックスを振り下ろす、ゴブリンを倒す、一撃だ。


次のゴブリンが棍棒で攻撃してきた、これをかわす。カウンターでこちらも攻撃する。ゴブリンを倒す。


次はこっちの番だ、ミドルアックスを横薙ぎに振るう、ゴブリンに当たる、一撃で倒す。


大丈夫だ、まだ疲れていない。乱戦になっているからどこからモンスターが向かって来るか読みきれない、慎重に辺りを見渡す、まだまだモンスターの数は減らない。衛兵や冒険者達も頑張ってはいるのだが、如何(いかん)せんモンスターの数が多い、範囲魔法で攻撃すれば楽なんだが、こう乱戦になり、敵味方入り乱れていてはそれも出来ない。フランクさんの魔法はあてに出来ない。


「どうしたジロー君、疲れたかね!」


「いえ、まだ大丈夫です!」


「とにかく、各個撃破していくしかないみたいだよ! 気合を入れて行こう!」


「はい! 伯爵」


とにかく、ただひたすらモンスターを倒していく。モンスターの攻撃はスキル「ハイスピード」のおかげで余裕をもって回避できる、相手の攻撃モーションがまるでスローモーションになったかのようにゆっくりした動きに見える。盾のベルシーダはまだ一度も構えていない。


・・・・・・どれぐらいモンスターを倒したのだろうか、もう結構な時間が経ったと思うが、周りを見渡す、モンスターの数が見る間に数が減っている。よし、もうひとふん張りだ。


そこで、一際大きなオークが目に入った、あ! あれは・・・


「みんな! 気をつけろ! オークロードだ! オークロードがいるぞ!」


「何! オークロードだと!」


「あ! 本当だ!」


まさかの大物ボスモンスターのオークロードがこの戦場にいた、おそらくヤツがこの群れのボスだろう。どうする! 今の俺で対処できるか! ブライガー伯爵はオーク共に群がられて身動きが取れていない状況だ。俺がやるしかない。


伊達に上級職のバトルマスターじゃないんだ、俺がやってみるしかない。


俺はオークロードの前に躍り出た。デカイ、2メートルは優に超えている。恐ろしいがここで引くわけにはいかない。他のみんなはとっくに疲れ果てている様子だ。そんな状態でオークロードに相対させる訳にはいかない。怖いが俺1人でやってみる。


オークロードの鼻息がふんすっ、と鳴く。


っと、同時に巨大な棍棒が振り下ろされて俺に当たりそうになる。


俺はその攻撃をサイドステップで避ける。


そのままの勢いでミドルアックスを振り下ろす。


ズドッ!


「なに!?」


ミドルアックスの攻撃は、オークロードの硬い皮膚に阻まれ思った以上にダメージを与えられていない。


オークロードの攻撃がさらに続く。


「ブモオオーーー!」


オークロードの棍棒が横薙ぎに振るわれる。


俺はそれをしゃがんで避ける、大丈夫だ、ヤツの動きは見える。


今度はこちらから攻撃する、しかし、やはりオークロードの分厚い皮膚に阻まれ、大してダメージを与えていない様だ。


「これならどうだ!」


俺はファイアの魔法を使った。


「ブヒ!」


よし! ダメージを与えられているみたいだ。ファイアの魔法は見事にオークロードに命中した。


やはり火の魔法か、・・・そう言えばルビーさんがオークロードを倒した時に使っていた技が確か炎の剣舞、ブレイズダンスだったよな。・・・・・・よーし! 俺も少しやってみるか。


俺はミドルアックスに手をかざして魔力を流すイメージをしてみる、属性は火だ。


「・・・」


すると、どうした事だ、なんと俺にも出来てしまった。ミドルアックスは赤熱しだして、もの凄く熱くなっている。よーし! これなら!


俺は赤熱したミドルアックスを思いっきり振り下ろした。


「ブヒイイイイ・・・・」


よし! 結構なダメージを与えているみたいだ、オークロードの分厚い皮膚を見事に切り裂いている。


このまま一気に畳み掛ける、連続してミドルアックスを振り回す。


攻撃が当たったところからもの凄い勢いで炎が吹き出ている、よし! いける!


俺は容赦なくミドルアックスを振り回す、オークロードに次々とダメージが入って行く。


「これで! どうだあーー!」


渾身の力を込めてミドルアックスを振り抜いた。


「ブヒイイイイーーーーー・・・・・・」


ズシーンっとオークロードが断末魔を上げながら倒れこんだ、オークロードはピクリとも動かない。


「・・・名付けて、ヒートアックス・・・・・・」


辺りは静けさが支配していた、剣戟の音が聞こえない、どうやらモンスター共を倒しきったみたいだな、みんなもうへとへとだろう。


「「「「「「 わああああああーーーーーーーー!!! 」」」」」」


すると、あっちこっちから歓声が上がった、何事だ?


よく見ると何故だかみんな俺の方を見ている様だった、な、なんでしょうか?


「義勇軍だ! 義勇軍がオークロードを倒したぞーーー!」


「やるなあ、義勇軍も!」


「流石は義勇軍っといったところだな」


「うおおおーーー! 義勇軍バンザーーイ!」


な、なんだ? 皆して義勇軍を褒めだしたぞ、・・・あ! そうか、俺の背中に義勇軍の旗が掲げられていたんだっけ。忘れてた。


「やるなあ、ジロー君! さすが俺様が見込んだだけの事はある! わっはっはっは!」


「ど、どうも・・・」


「うむうむ、どうやら戦場も落ち着いてきたみたいだし、セレニアに凱旋でもしようではないか! なあ! ジロー君!」


「ええ、まあ、あ! でも東門でも確かモンスターの襲撃があったはずです、そちらの救援に向かいませんと!」


「おや、そうなのかね、それじゃあもう一分張りといこうかね!」



 東門付近ーーーーーーーーーー


「た、隊長! あれを見て下さい!」


「今度は何!」


「援軍です! 援軍がやって来ました!」


「え!? 援軍ですって! どこ! どこの国の軍隊なの!」


「わかりません! ですが200人規模の兵力を確認しました!」


「え!? たった200人? まあいいわ! それでも援軍はこの状況でありがたいわね」


「た、隊長!」


「今度はなに!」


「オーガが!、オーガが吹き飛ばされています!」


「な!? なんですって!?」


「間違いありません! 誰かがオーガをぶっ飛ばしているみたいです!」


「・・・・・・一体、誰なの? そんな豪傑な軍隊なんて・・・」


「そ、それが!・・・一人です、たった一人の女性がオーガを素手でぶっ飛ばしているみたいなんです!」


「えええ!? そんな事ある訳が・・・」


スパーン!


「グギャアア・・・」


「ほ、本当だわ、でも一体誰なの、そんな豪傑な女性って・・・」


「あ! 隊長! その女性がこちらにやってきましたよ」


「な、なかなかの美人じゃない」


「・・・・・・あ、どうも、」


「あなたが我等を助けてくれたの?」


「・・・え~と、そうだと思います」


「・・・なにはともあれ、助かったわ、どうもありがとう」


「いえ、」


「ところで、あなたは一体誰なの?」


「あ、私はお嬢様の護衛です」


「お嬢様?」


「はい、エミリエルお嬢様です」


「・・・あなた、お名前は?」


「あ、はい、私は・・・・・・」






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