第134話 公都セレニア防衛戦 1




 


  公都セレニア東門付近ーーーーーーーーーー


「隊長! モンスターの構成がわかりました!」


「そう、それで、どうなの」


「はい! モンスター共の構成はゴブリン、オーク、オーガからなる混成部隊だそうです!」


「・・・オーガまでいるのね・・・とにかく皆! 東門の防衛を最優先してちょうだい! ここを突破されれば一般市民に危害が加わるわ! 何としても守りきるわよ! いいわね!」


「「「「「 は! 」」」」」


「・・・それにしても、こいつ等は一体どこから・・・」


「隊長! バリスタや投石器の数が足りません! 城壁上からの弓隊だけの攻撃ではこの数のモンスターに対処できません!」


「わかったわ! 伝令! 来て!」


「は!」


「北門と南門のバリスタと投石器をこっちに持ってくる様伝えなさい!」


「は!」


「モンスターの数! 尚も増加中! 距離12000!」


「・・・防衛ラインを下げるのも時間の問題ね・・・何とか持ちこたえて!」


「ゴブリンやオークならまだしも、オーガが相手では我が隊では対処出来るかどうかわかりません!」


「・・・冒険者に救援を要請したほうがいいかしら・・・」


「隊長! 至急伝!」


「何!」


「上級貴族達が撤退するまでの間、戦線を死守せよ、との事です!」


「え!? 貴族達はもう逃げ出す準備をしているの! 何があったのよ! 一体!」


「自分はそれ以上の事は聞いておりません!」


「・・・何かしら・・・議事堂で何かあったのかしら・・・わかったわ! 伝令ご苦労様」


「は! それではこれで」


「参ったわね、こっちだってまだ戦線を支えきれていないというのに」


「隊長! オーガが動き出しました!」


「いけない! オーガは相手にしないで! 周りのモンスターに戦力を集中しなさい!」


「駄目です隊長! オーガの動きが素早くて逃げ切れません!」


「まあ、大鬼だからねオーガは、体格の割りに動きが素早いから冒険者達も手を焼いているって言うし」


「一匹だけではありません! ここから見えるだけでも3体のオーガを確認しています!」


「バリスタと投石器はまだ! こっちもそう長くはもたないわよ!」


「た、隊長! 至急伝!」


「今度は何!」


「た、たった今! 西門が破壊されたと報告が!」


「なんですって! 西門が! まずいじゃない! 西門を突破してきたモンスターにこっちが挟撃されるじゃない! なんて事!」


「じ、自分は持ち場に戻ります!」


「ご苦労様、まったく、・・・参っちゃうわね・・・よし! 全隊! 聞きなさい! 東門の最終防衛ラインまで後退するわよ! 急ぎなさい! ほら! 急いで!」



セレニア公国近郊ーーーーーーーーーー



「ん? おや?・・・おい、フランク、見てみろ、セレニアから黒煙が上がっているぞ」


「え!? 黒煙ですか?・・・あ! 本当だ! 一体何があったんでしょうね、伯爵」


「どうやらセレニアは今、モンスターの大軍に侵攻されているようだな」


「パラス・アテネに向かっていた我々が通りがかっただけなのですがねえ」


「やれやれ、パラス・アテネの救援に向かう途中でこのような場面に出くわすとはな」


「どうします、伯爵」


「まあ、セレニアにはジロー君達がいるんだったな、同じ義勇軍の仲間としてほってはおけんな」


「セレニアに手を貸すので?」


「まあ、ここまで来たんだ!ジロー君の救援でもしてみるのも一興ではないかな! そうだろ! 野郎共!」


「「「「「「「「「「 へい!、ブライガー伯爵様 」」」」」」」」」」


「よーし! 俺様に続けー! セレニア公国を助けに行くぞ!」


「西門付近と東門付近にモンスターが集中しているようですね、どちらに向かいますか伯爵」


「大物がいるのはどっちだ、フランク」


「西門付近のようですね、遠くの方にカノントータスがいますから」


「カノントータス?」


「デカイ亀のモンスターで、背中の甲羅の上に大砲みたいなのがあって、砲撃をしてくるヤツですよ、攻城兵器ですね、はっきり言って」


「なるほど、では西門へ向かうぞ! 皆の者! 俺様に付いて来い!」


「やれやれ、パラス・アテネに着く前に一騒動ありそうですね」




ジローサイドーーーーーーーーーーーー



 ここは議事堂内、俺達は闇の崇拝者達の謀(はかりごと)を未然に防いで、シスターマリーやジョアンナ様を守りきる事ができた。しかし、貴族達の殆どを守りきる事ができなかった。生き残った貴族達はほんの数人だけだ、してやられた訳だな、ホークウッドに。


そのホークウッドとバインダーはこの場を離れ、テレポートリングで何処かへと姿を消した。辺りは静けさだけが残った。もう動いているモンスターはいない、みんな砂粒になった。召喚モンスターを倒すと砂粒になるんだよな。


「シスターマリー、無事ですか」


「は、はい、何とか」


「ジョアンナ様もご無事ですか」


「ええ! 問題ないわ! 凄かったわね! モンスターを間近で見るのは初めてですわ! わたくし怖くて足が震えています!」


とても元気そうだ、まあ、なによりだな。お二人を守る事が出来てよかった。


「スカーレットさんもお疲れ様でした」


「まあ、ざっとこんなもんよ」


「ピピ、辺りに危険は無いかい」


「・・・うん、だいじょうぶ」


「騎士ヨムンさんもお疲れ様でした」


「うむ、しかし、こやつ等は一体どこからこの国に入り込んできよったんだ」


「・・・さあ? おそらくですけど、少しづつ入り込んで来ていたんじゃないでしょうか」


「う~む、この国の危機管理ももっと徹底せねばならんかもしれんな」


闇の崇拝者達をロープで縛り、衛兵に突き出して事なきを得た。しかし、この国の西門と東門でモンスターの大軍が現れたと確か伝令が伝えに来ていたよな。それらに対処しないと本当の意味で安心は出来ないよな。


「ジョアンナ様」


「何かしら、ジロー」


「この国の公都の西門と東門でモンスターの襲撃があったみたいですが、いかが致しますか」


「・・・そうね、まずはお兄様に相談しましょう、きっと良い知恵を出してくださいますわ」


「ジョナサン様ですか、わかりました、」


「ジロー達はこれからどうするのですか」


「そうですね、街の様子を見てきます」


「わかったわ! マリアンデール! あなたも来なさい!」


「私もですか」


「ええ、そうよ! 今までの事の謝罪と、これからの事を話さなくてはならないでしょ」


「あ、はい、わかりました、だけどジョアンナお姉様、辛く当たっていたのは私の為だと、さっき聞きましたから、それだけでもう十分です」


「マリアンデール・・・ありがとう、そう言って貰えるとこちらも肩の荷が下りた気が致します」


やれやれ、結局この姉妹は仲が良かったって事か、よかったよかった。辺りの貴族達を見ると皆さっさとこの場を後にしていた、おそらく逃げ出す準備でもするのだろう。


「それでは皆さん、わたくしはこれで失礼致しますわ、お兄様と相談して軍の再編成をしなくてはいけませんから」


「はい、では我等は町の様子を見て参ります、何か手伝える事があればその様に行動します」


「頼みます、ジロー、では」


ジョアンナ様とシスターマリーは騎士ヨムンさんに護衛されながら議事堂を後にした。よし、俺達も街の様子でも見に行ってみようかな。まだ安心は出来ないみたいだし、俺達も議事堂を後にする。別に俺達が行った事で何かが変わるとは思っちゃいないが、まずは情報を集めてみるのもいいだろう。




おじさん、もうちょっとゆっくりしたいよ








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