第133話 議事堂での戦い




 


 公都セレニア西門付近ーーーーーーーーーー



「駄目です隊長! モンスター共の進行速度が速すぎて戦線を維持できません!」


「ええーい! どうなっておるのだ! 何故突然こんな事が!」


「モンスターの数! 尚も増加中! 距離12000! このままでは!」


「魔法兵! 範囲魔法で足止めしろ! その間に態勢を整える! 弓兵! 援護射撃はどうした!」


「今やっています! しかし! 魔物の数が多すぎて!」


「バリスタ! 投石器! なんでもいい! ありったけもってこい!」


「東門の防衛ラインでも足りていないそうです!」


「とにかく! やるしかないぞ! ここを突破されれば門の内側へ後退せざるを得ないぞ! そうなったら一般市民に被害が出る! 持ちこたえろ! 何としても!」


「・・・なあ、これってもしかしてアレか?」


「・・・アレって?」


「ヤバイって事さ」


「・・・ああそうだ」


「そこのバリスタ兵! くっちゃべってないで手を動かせ!」


「「 は! 」」


「とにかく、どんどん太矢の雨を降らせろ! 投石器はまだか!」


「隊長! 至急伝!」


「なんだ! このくそ忙しい時に!」


「は! 議事堂内におられる上級貴族達の撤退が完了するまで戦線を死守せよ、との事です」


「なんだと! お偉いさん達はもう逃げ出す準備をしてるってのか! 冗談じゃねえぞ! こっちだってまだ戦線を支えきれていないんだ! そんな命令聞けるか!」


「・・・では、私は東門の兵にも伝えて来ます、失礼!」


「まったく! 何を考えているんだ! 貴族共は! こっちはまだ安全じゃないってのに!」


ドゴーーーーーーーーーン!


「うわあああああーーーーーーー」


「!?な、なんだ! どうした!」


「に、西門が・・・破壊されました・・・」


「何だと! どこからの攻撃だ!」


「第1防衛ラインのもっと奥にカノントータスを確認! ヤツからの砲撃です!」


「なんだと! カノントータスなんて大物まで出てきたのか! 対処が追いつかん!・・・よーし! 最終防衛ラインまで後退! 急げ! 後退だ!」



ジローサイドーーーーーーーーーー



 それは突然の出来事だった、議事堂内に突如、黒いローブを身に纏った者達が数人駆け込んできたかと思うと、召喚の宝玉を使い、周囲に召喚モンスターが次々と現れた。そして周りの貴族達を襲撃しはじめた。一体全体どうなっているんだ? モンスターはジョアンナ様やシスターマリーにも襲ってきたが、騎士ヨムンさんと俺達で何とかお二人を守れている。


「何だこれは! 一体何がどうなっておるのだ!」


「わかりません! しかし、こいつ等を何とかしないと、外へは出られないでしょうね」


不意に、バインダーとホークウッドの方を見やる、奴等は堂々と椅子に座っているだけだ、バインダーも慌てている様子も無い。・・・さてはこいつ等の仕業か、相変わらずこちらに対して鋭い眼光を向けている。俺もホークウッドを見据える。二人の視線がバチバチだ。


これで決まりだな、やはりホークウッドも闇の崇拝者の一員と言う事だな。奴等だけモンスター共に襲われていない、おそらく、議事堂内に入って来た黒ローブ達も闇の崇拝者だろう。


「騎士ヨムンさん! こいつ等は闇の崇拝者の引き起こした事です! とにかくこいつ等を何とかしましょう!」


「あいわかった! ジョアンナ様! わしからあまり離れますな! ジロー殿! マリアンデール様は頼むぞ!」


「はい!」


モンスターが次々と掛かってくる、それを容赦なく迎え撃つ。シスターマリーを守りながらだから大変ではあるが、やるしかない。スカーレットさんもいい動きをしている、襲ってくるモンスター共を次々と撃退している。ピピは上空に退避している。


辺りは大混乱だ。逃げ惑う貴族達、襲い掛かるモンスター共、そのモンスターを操っている闇の崇拝者達、その中にあって落ち着いているホークウッドとバインダー、このままじゃいずれこっちが息切れしてしまう。何とかしないと。


「スカーレットさん! モンスター共の相手はいいですから、先に黒ローブ達を無力化していって下さい!」


「わかったわ!」


スカーレットさんが動く、二刀流のダガーを巧みに使って闇の崇拝者達を一人、また1人と倒していく。よし、いいぞ、流石はスカーレットさんだ。モンスターの動きが鈍ってきた。よし、俺もモンスター共を次々と倒していく。大丈夫だ、シスターマリーには危害は加えられていない。


騎士ヨムンさんもジョアンナ様を守り通している。さすがだ、一方、ジョアンナ様はというと、モンスターの襲撃にも関わらず恐れるどころか、まるで物語の一幕を見ているかのような瞳を輝かせているようだ。・・・もしかしてジョアンナ様は大物なのかもしれない。


「これで!・・・ラスト!」


スカーレットさんが最後の闇の崇拝者を無力化した。その途端、モンスター共の動きが極端に鈍った。よし、やったか。流石スカーレットさん。後はこのモンスター共を各個撃破していくだけだ。


俺はミドルアックスを振り下ろす、モンスターを一撃で倒す、・・・最近妙に体が軽い、レベルが高くなったお陰かな。それに一撃でモンスターを倒せる様になってきた、能力値がそれだけ上がっているって事なのかな。まあ、楽になったと言えばそれまでなんだが。


しばらく戦っていると、辺りはだんだんと静かになってきていた。モンスターの数もあとは数えるほどだ。その時、ホークウッド達の方から声が聞こえた。


「ホークウッド様、そろそろ・・・」


「うむ、そうだな、・・・では諸君、私はここで失礼する」


なに!? ホークウッド達はこの場を逃げる気か。


「待て! ホークウッド!」


「では、さらばだ」


ホークウッドの指輪の様な物から光が輝いた。・・・あ、あれはテレポートリングか! ここまでの事をやっておきながら自分達は逃げる気なのか、させるか!


俺はハンドアックスに持ち替えて、割と本気でホークウッドに向けて投擲した。


「ふん!」


ハンドアックスは勢いよく飛んでいく、しかし・・・


カキンッ!


何故かはわからないが、ホークウッドの周りにバリアーの様な物が張り巡らされているようで、ハンドアックスは弾かれた。


「・・・」


ホークウッドがこちらを見据える、俺も見据え返す。


「・・・」


「ホークウッド!」


「・・・確か、冒険者、だったな・・・」


「ホークウッド様、そろそろ・・・」


「うむ、ではな・・・」


ホークウッド達は一瞬にして何処かへと掻き消えてしまった。おそらくテレポートリングを使ってどこかへと転移したんだろう。逃げられたようだな・・・いや、見逃してもらった、と言う方か。


周りを見ると、どうやらモンスター共を全て排除できたみたいだ。ジョアンナ様もシスターマリーも無事だ。よかった、何とかなった。しかし、これで終わった訳じゃないんだろうな。何も無しにこの場を離れる訳ないよな。・・・なんだろうな、ホークウッド達は何がしたかったのかな。




おじさん腑に落ちないよ










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