第114話 腕利きの盗賊を求めて




 俺達はマゼランの都へ向けて馬を走らせている。俺は馬に乗れないのでファンナに二人乗りさせてもらっている。それにしても馬はやはり速い、朝サラミスを出発して夕方にはもうマゼランに到着した。


マゼランの都の門衛にギルドカードを見せて、マゼランに入る。相変わらず凄い人だ。流石都会だ。俺達は馬を馬屋の厩舎ぎゅうしゃへ預け、マゼランの街中を歩く。まずは冒険者ギルドへ行こう。


俺達はマゼランの冒険者ギルドへやって来た。そこでまず人捜しと情報収集に長けた盗賊シーフを雇う為、冒険者の一人に声を掛けた。


「こんにちは、今ちょっといいかい」


「ん?何だおっさん」


「実は盗賊を雇いたくてね、腕のいいシーフって知っているかな」


「シーフ? この街で盗賊って言やあ盗賊ギルドなんじゃないか」


「いえ、冒険者で盗賊を探したいんだけど、いないかな」


「冒険者ねえ、この街の冒険者は人数が多いからなあ、一口にシーフって言っても沢山いるよ」


「そうですか、」


「そういやあ、最近エミリーってシーフが腕がいいって評判になっているみたいだぞ」


「え? エミリーさんがですか、わかりました、情報ありがとう」


まさかここでエミリエルお嬢様の名前が出てくるとは思わなかった。う~む、エミリーさんは伯爵令嬢なんだよな、そう簡単に会えるとは思えないからなあ。だけど一応行ってみるか。


俺達は直ぐに貴族街までやって来た。途中門番にギルドカードを見せて貴族街に入る。エミリエルお嬢様が住んでいるミレーヌ伯爵の屋敷は道の一番奥の屋敷だ。そこまで歩いて屋敷の手前でまた門番にギルドカードを見せた時だった。


「ふむ、冒険者か、用向きは何だ」


「はい、エミリエルお嬢様にお話がございまして」


「何? エミリエル様に?・・・なんだ、知らないのか、エミリエル様ならば昨日、50名の私兵を連れてパラス・アテネ王国へご出立されたぞ」


「え?! そうなのですか」


「ああ、ミレーヌ伯爵様の名代としてな、確か女王グラドリエル様の下へ馳せ参じる為とか言っていたな」


「そうですか、わかりました、どうも」


うーむ、そうか、エミリーさんもパラス・アテネへ行ってしまわれた様だ。エミリーお嬢様は意外と盗賊スキルが高いんだよな、当てが外れたな。俺達はその場を後にする。


「どうしますか、ジローさん」


「そうですね、実はもう一人当てがあるのですが」


そんな訳で、やってきました色町に。


「ジローさん、私ジローさんの事軽蔑します」


「ちょっと待って下さい、ファンナ、違いますから、別に遊びに来た訳じゃないですから」


「じゃあ何ですか」


「この色町の愛の巣っていうお店にスカーレットと言う人がいるんですよ、その人なら腕のいいシーフでしょうから、ここまで来たと言う訳なんですよ」


「・・・本当ですか」


「はい、本当です」


「じゃあ早くしましょう」


「はい」


俺達は色町の中を歩いて目的である愛の巣というお店まで行く。途中で客待ちをしているおねえさんに声を掛けられたが、丁重にお断りをした。・・・ファンナとピピがいるからね。


色町にある愛の巣というお店までやって来た。スカーレットさんはいるかな、お店の人に声を掛けた。


「あの~、すいません」


「はい、いらっしゃいませ、おや? 妖精と女性連れですか、珍しいですね」


「あ、違います、客じゃないんです、実は人を捜していて、この店にスカーレットという方はいませんか」


「スカーレットさんですか、ウチに在籍しておりますが、何か御用ですか」


「はい、話だけでも出来ませんか、どうしても腕利きのシーフが必要なんです」


「・・・はあ、わかりました、ちょっと呼んできます」


店の男は二階に上がりスカーレットさんを呼びに行ってくれた、問題はそのスカーレットさんがこちらの事情を聞いて一緒に来てくれるかがわからないという事だ。シスターマリーはまだバーミンカムにいるかセレニア公国にいるかわかっていない訳だしな。


しばらくして、スカーレットさんが二階から降りてきた。


「何? 私にお客さんってあなた達の事、・・・あら? あなたはこの間の・・・」


「どうも、冒険者のジローと申します」


「あら、ジローさんとおっしゃるのね、それで、私に何の用事なのかしら」


「はい、実はスカーレットさんを雇いたくて、・・・盗賊(シーフ)として・・・」


「私を? まあ、一応私もシーフの端くれだけど、目的は何?」


「はい、俺達は人を捜していて、もしかしたらパラス・アテネ方面まで行かなきゃならないかもしれないのです、そこで腕利きの盗賊を雇って人捜しに協力して貰おうと思いまして」


「誰を捜すの」


「サラミスの街に居た女神教会のシスターで、マリー、またはマリアンデールと呼ばれている女性です」


「ふ~ん、・・・報酬は?」


「そうですねえ、金貨1枚、で、どうですか」


「金貨1枚か・・・結構奮発するわね、シーフを雇うにしては」


「急ぎの用件なんです、スカーレットさん、お願いできませんか」


「そうね・・・・・・いいわ、雇われてあげる」


「本当ですか、ありがとうございます、スカーレットさん」


「じゃあ、ちょっと店長に説明してしばらく休むって言ってくるわね」


スカーレットさんは二階へと上がり店長さんと話しに行った。よかった、スカーレットさんの協力を取り付ける事ができて、彼女は盗賊ギルドの元お頭をやっていたからな。腕は確かなんだろう。


しばらくして、スカーレットさんが二階から降りてきた。


「待たせたわね、準備いいわよ」


「そうですか、それじゃあ行きましょうか」


「ジローさん、もう夜も遅いですよ、一旦冒険者ギルドの宿で休みませんか」


「そうですね、ファンナの言う通りです、まずは冒険者ギルドへ行きましょうか」


「あら、行動は明日からって事ね」


「はい、そうなります」


「じゃあ、明日の朝、冒険者ギルドで待ち合わせって事でいいかしら」


「はい、そうしましょう」


「それじゃあね、色々準備しなくちゃならないから」


「それでは、明日の朝に」


こうして俺達は別れて移動した、俺とファンナは冒険者ギルドの宿屋で休む事にした。ブレイブリングを見せて宿代がタダになったのは、やはり嬉しいものだ。冒険者ギルドで遅めの晩飯を食べて俺達は眠った。明日からはファンナとは別行動だ。早めに寝よう。




おじさん今日もなんとかなったよ












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