第110話 消えたシスター 1
朝、宿屋のベットの上で目を覚ました。やはり馬小屋とは違う、いい目覚めだった。ブレイブリングのおかげで宿代がタダになるってのは、こういう恩恵を受けられるって訳なんだな。こりゃあ義勇軍任務を疎かにはできないな、勿論無理せずやっていけばいいので、自分に出来る範囲でやればいいけど。
顔を洗う為にピピを起こそうとピピを見たら、ピピはまだ寝息を立てている。もう少し寝かせといてやるか。俺は先に部屋を出て、裏庭にある井戸で顔を洗う、井戸水は冷たい、一気に目が覚める。
酒場の店内に顔を出してみると店のマスターは既に起きていて、客の為の朝食の準備をしていた。
「おはようございます、マスター」
「おはよう、もう朝食にするかね、銅貨2枚頂くが」
「じゃあ、朝食をください」
俺はカウンターテーブルの上に銅貨2枚を置いた。しばらくして朝飯が出てきた。パンにスープ、野菜サラダだ、朝食としてはこれが普通だと思う。朝飯を食べているとピピが起きて来た。
「ピピ、おはよう、顔を洗っておいで」
「・・・おはよ、・・・あらってくる」
ピピは裏庭へと飛んでいった。
「マスター、さくらんぼってあるかい」
「さくらんぼ? 一応あるが」
「じゃあそれを2つ」
「ああ、いいよ、それぐらいはサービスしといてやるよ」
「どうも」
暖かいスープを飲み、野菜サラダを食べ、パンを齧り朝食を食べているとピピが戻って来た。
「・・・おなかすいた」
「はい、さくらんぼ」
「・・・やったね」
ピピはおいしそうにさくらんぼに齧り付いた、ホント好きだよね、ピピって。俺も朝食を食べ終わった。
「マスター、ごちそうさま」
「ああ、」
ピピが朝飯を食べ終わるのを待つ、今日の予定はとりあえず冒険者ギルドへ行ってファンナと合流してからだな。しばらく待っているとピピも朝飯を食べ終わった様だ。
「・・・おいしかった、ごちそうさま」
「それじゃあピピ、冒険者ギルドへ行ってみようか」
「・・・うん」
「それじゃあマスター、いってきます」
「ああ、部屋は空けておくから今後は自由に入っていけばいいからな」
「ありがとうございます、それでは」
俺達は酒場兼宿屋の店を出て、冒険者ギルドへ向けて歩きだした。
・・・街を歩いていて気付いたが、なんだかやたらと騎士達を見かける、まあ、この街にはサリー王女様が滞在しているから別に珍しいって訳でもないが。なんだろうか。
冒険者ギルドに着いてギルドホールに入ると既にファンナはお茶を飲みながら寛いでいた。
「おはよう、ファンナ」
「・・・おはよ、ファンナ」
「おはよう、ジローさんピピちゃん」
俺とピピはファンナの座っているテーブルの席に着く。さて、今日は何をしようかな。Eランク依頼でも受けようかな、そう思った時だった、ファンナが話し掛けてきた。
「そう言えばジローさん、最近シスターマリーを見かけませんでしたか?」
「え? シスターマリー、いや、最近は見かけないな、ピピはどうだい」
「・・・みてない」
「やっぱり、そうですか」
シスターマリーとは、この街の女神教会にいる17歳ぐらいの金髪ショートヘアの女の子だ、お年頃の女の子で食に関して厳しい子だったな、確か料理上手だったよな、何かあったのかな。
「何かあったのですか、ファンナ、シスターマリーがどうかしましたか」
「それがですね、シスターマチルダが捜しているらしいんですよ、二日前からまだ帰ってきていないそうです」
「え、二日前から」
「はい、私も女神教会で女神様に毎日祈りを捧げているんですが、二日ぐらい前からシスターマリーを見かけていないな~って思っていたんですよ」
「そうですか、それは心配ですね」
「どうでしょうジローさん、依頼ではないんですけど、シスターマチルダに話を聞きに行ってみませんか」
「うーん、そうですね、俺も女神教会に用事があったので、いいですよ、一緒に行きましょうか」
「はい、ありがとうございます、ジローさん」
こうして、俺達は女神教会までやってきた。まずはシスターマチルダに話を聞かないとな。俺達は教会の中へ入ってシスターマチルダを呼んだ。
「すみませーん、シスターマチルダはいますか」
すると、教会の奥の部屋からシスターマチルダがやって来た。なんだか元気がないように見受けられる。やはりシスターマリーの事が心配なんだろうな、話を聞こう。
「シスターマチルダ、朝早くからすいません」
「おはようございます、ジローさん、ファンナさん、え~と、」
「・・・ピピ」
「ああ、ピピさんね、おはよう」
「・・・おはよ」
「そうだわ、ジローさん、シスターマリーを見かけませんでしたか、実は二日前から帰ってきていなくて、何か心当たりがございましたら教えてくださいませんか」
「申し訳ありません、俺はシスターマリーを見かけてはいません」
「・・・そうですか、あの子ったら、一体何処に行ってしまったのかしら」
「シスターマチルダ、実はその事で話を聞きに来たんですが、シスターマリーはどこかへ出かける様な事を言っていましたか」
「いえ、そのような事は言っていませんでしたわ、ただ調味料を買いに使いに出したくらいです」
「ふむ、シスターマリーもお年頃ですからねえ、何か悪い男に引っかかったのかもしれません」
「いえ、それは無いと思います、あの子は身持ちが硬い子ですから」
「そうですか、うーむ、その使いに出したのはどこの店だかわかりますか」
「はい、いつもその店で調味料を買いますから、商店街にあるイッパチというお店です」
「商店街のイッパチですか、ファンナ、早速行ってみようか」
「はい、」
「それではシスターマチルダ、俺達はシスターマリーを一緒に捜してみます」
「ありがとうございます、お二人共、どうかよろしくお願いします」
「ああ、それから、実は俺、バトルマスターにクラスアップしたので、それでは失礼します」
「・・・・・・え? ジローさん、今なんて・・・」
俺達はそそくさと女神教会を後にした。とりあえずは商店街にあるイッパチというお店に行ってみる事にした。シスターマリーを捜す事になった訳だが、二日前からというのがどうにもな。心配だ。
おじさん人捜しは苦手なんだけどな
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