第111話 消えたシスター 2





 俺とピピとファンナはシスターマリー捜索のためサラミスの街にある商店街までやってきた。


シスターマチルダが言うには、シスターマリーに調味料を買い付ける為に使いに行かせたと言っていた、二日前の事らしい、そこで俺達は件の調味料を売っているイッパチという店に行く事にした。


「ジローさん、この近くのはずです、イッパチというお店は」


「はい、行ってみましょう」


商店街を歩き、イッパチという店の前まで来た、早速店の人にシスターマリーの事を聞いてみよう。


「あの~、すいません」


「はい、いらっしゃい、何がご入用ですか」


「あ、いえ、客じゃないんですが、実は人を捜していて、二日前になるのですが女神教会のシスターマリーがこの店に調味料を買いに来ませんでしたか」


「二日前に、シスターマリーがですか? さて、買いにきたかなあ、二日前ですよねえ」


「どうでしょうか、何か心当たりはありますか」


すると店の人は奥にいるであろう他の人にも声を掛けた。


「お~い、二日前にシスターマリーが買いに来たかってよ~」


「二日前~、さあ、来ていないよ~」


「お客さん、どうやらシスターマリーは来ていないらしいですよ」


「そうですか、どうも」


俺達は店を出た。どうやらシスターマリーは調味料を買いに来ていないらしい。


「ファンナ、シスターマリーが他に立ち寄りそうな所ってあるかな?」


「う~ん、シスターマチルダが既に捜したと思いますけど」


「ふ~む、と、いう事はシスターマリーは調味料を買いに来る前にどこかへ行ってしまったのでしょうか」


「でも、一体どこへ?」


「もしかしたら、何か事情があって街の外へ出かけたかもしれませんねえ」


「街の外へですか、う~ん、どうなんでしょうか」


さて、どうする、二日前にいなくなって今も街にいないとなると、これは街の外へ出た可能性があるな。


「どうします、ジローさん」


「そうですねえ、とりあえず街の東門と西門に行ってみましょうか、門衛の誰かがシスターマリーを見ているかもしれません」


「そうですね、行ってみましょう」


こうして俺達は、サラミスの街の東門までやって来た。門衛の人に聞いてみよう。


「すいません、ちょっとお聞きしたい事が」


「なんだ、ジローにファンナか、どうした」


「・・・わたしもいる」


「わかったわかった、ピピもいるな、で?」


「はい、実は人を捜していて、シスターマリーがこの門を通って外へ出て行きませんでしたか」


「シスターマリー? いや、最近は見かけないなあ」


「二日前にもですか」


「ああ、仕事柄人の顔はよく見ている、シスターマリーの事も知っている、なんだ? シスターがどうかしたのか」


「実は二日前から教会に帰ってきていないらしいんです」


「そうか、二日前からだよな、・・・う~ん、やっぱり見ていないな」


「他に何か変わった事ってありますか」


「変わった事? 変わった事ねえ、・・・そういやあ最近やたらと騎士を見かけるな、まあ、この街にはサリー様がいらっしゃるからなあ、その関係じゃないかな」


「・・・騎士・・・ですか」


「ああ、バーミンカムの騎士な」


ふぅむ、・・・シスターマリーとは関係無さそうだな。東門からは出ていないと言う事かな。


「わかりました、どうもありがとう」


「西門のヤツにも聞いてみたらいいよ、シスターマリーが見つかるといいな」


「はい、それでは」


俺達は東門を後にした。このまま歩いて西門まで行く。


「東門からは出て行っていないのでしょうか、心配ですね、ジローさん」


「そうですね、今度は西門へ行ってみましょう」


「はい」


ピピのお腹がぐ~、っと鳴った。ピピはお腹を擦りながら俺の肩に座りこんだ。


「・・・おなかすいた」


「お、そういやあもうお昼か、ファンナ、どこかで飯にしようか」


「あ、じゃあ露店で串焼きでも買いますか、食べ歩きながら移動しましょう」


「そうだね、・・・お、あの店にしよう」


俺達は肉串を売っている露店に行き、肉串を買う。


「おばちゃん、10本ちょうだい」


「はいよ、銅貨5枚ね」


俺は店のおばちゃんに銅貨5枚を支払った、ファンナに5本の肉串を渡してピピの為に一本食べやすい大きさに千切ってピピに渡す。俺も肉串を食べる。うまい、塩、胡椒のシンプルな味付けがまたいい。食べ歩きながら西門を目指す。


肉串も食べ終わり、しばらく歩いて、街の反対側にある西門までやって来た。この先は農場しかない、Eランク昇格試験の時にお世話になったリンゴ農場もこの先だ。早速西門の門衛に話を聞きに行ってみよう。


「あの~、すいません、ちょっとお聞きしたい事がありまして」


「ん? なんだ、ジローにファンナ、それにピピか、何か用か」


「実は人を捜していて、シスターマリーなんですけど、こちらで見かけませんでしたか」


「シスターマリー? いや、見ていないが、シスターがどうかしたのか」


「はい、二日前から行方がわからないのです、もしかしたら街の外に出かけているかもしれないと思って、こうして聞きに来たと言う訳なのです」


「う~む、二日前か、・・・いや、やっぱり見ていないな、まだ街の中にいる可能性は?」


「ファンナ、どう思う」


「う~ん、そうですねえ、シスターマチルダが方々を捜し回ったと思いますから、多分ですけど街の中にはいないのではないでしょうか」


「そうか、・・・う~ん、やはりシスターマリーは見かけていないな」


「そうですか、他に何か変わった事ってありますか」


「変わった事?・・・うーん、そうだな、いつも通り農民が出入りしたぐらいかな」


「二日前にもですか」


「二日前か、・・・・・・そういえば、・・・騎士風の者達がここを通っていったな、まあこの街は見る物なんて農場ぐらいしかないからな、一日も滞在せず馬車で出て行ったよ、はっはっは」


「・・・ふうむ、その騎士はバーミンカムの騎士ですか?」


「いや、あれはどこだったかな、・・・ああ、思い出した、あれはパラス・アテネ王国の騎士甲冑だったよ、パラス・アテネ王国の騎士の鎧は特徴があるからな、よく覚えているよ」


「パラス・アテネ王国、・・・ですか・・・」


「ああ、あの紋章はどこだったかな、・・・確かセレニア公爵家の紋章だったかな」


「こうしゃく? 王家の血縁者という意味の公爵家でしょうか」


「ああ、その公爵で間違いないよ」


ふぅむ、今のところシスターマリーとは何の関係も無さそうだな。


「公爵家なんて、そんな大物がこの街に何の用事でしょうか」


「さあ? 何だろうねファンナ」


「変わった事と言ったらそれくらいかな、シスターマリーが見つかるといいな」


「はい、どうもありがとう、それではこれで」


俺達は西門を後にする、そうか、ここでもシスターマリーは見かけていないか。もしかしてまだ街にいるのかもしれない。色々聞き込みをしてみよう。


それにしても、シスターマリーは一体何処に行ってしまったんだ。




おじさんちょっと心配だよ










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