第102話 救助依頼(レスキュー)





 上級職のバトルマスターへクラスアップした次の日の朝、冒険者ギルドへいつものようにピピと来てみたら何やら騒がしい、何かあったのかな。っとそこへルビーさんとサーシャ、ファンナがやって来た。


「おはよう、ジローさん」


「おはようございます、ルビーさん、サーシャ、ファンナ」


「・・・みんな、おはよ」


最近はピピも挨拶する様になった、いい傾向だ。元々社交的なのかな、この子。


「ギルドの中が騒がしいみたいだけど何かあったの、ジロー」


「さあ? 俺も今来たところだから、何だろうね、サーシャ」


そこでルビーさんが受付のおねえさんに聞いてみた。


「ちょいと受付のお姉さん、この騒ぎはなんだい」


「ああ、丁度良かった、ルビーさん、これからギルマスから皆さんに報告があります、申し訳ありませんがしばらくギルド内で皆さんとお待ち下さい」


「あいよ、それはいいけど何か聞いてないかい」


「私も詳しくは知りませんが、どうやらデニムさん達のパーティーがまだ戻ってきていないらしいのです、今はギルマス達で会議をしていて、これからどうするか話し合っているみたいなんです」


「デニム達かい、一応ベテラン冒険者だから何か不測の事態があったとしても何かしらの対処をしてると思うけどねえ」


「ですから、今話し合っているみたいなんですよ」


「わかったよ、ありがとよお姉さん」


ルビーさんは受付から離れて俺達の方へ戻って来た。


「どうやらデニム達のパーティーがまだ戻ってないらしいよ」


「え、デニム達が」


「ジローさん、何か聞いてるのかい」


「ええ、昨日依頼に誘われましたよ、鉄鉱石の採掘をしに行くみたいな事を言っていました、確か盗賊(シーフ)のレミを誘うみたいな事も言っていましたから」


「鉄鉱石の採掘かい、・・・するとおそらくジャスティーニの廃坑へ行ったかもしれないねえ」


「この近くで鉄鉱石っていうとまずあそこよね、だけど・・・」


サーシャの心配する様子を見て、ファンナが落ち着き無く聞いた。


「何ですか、サーシャさん」


「そっか、ファンナは知らないか、ジャスティーニの廃坑ってフロストバットっていうちょっと厄介なモンスターが棲みついているのよね」


「フロストバット、ですか」


「うん、何かね、冷気のブレスを吐く厄介なヤツなのよ」


「ブレス攻撃ですか、危険そうですね」


「実際危険よ、ブレスは防御を無視してダメージが入るから、あと凍傷になる事もあるからね」


「ええ! 大変じゃないですか、デニムさん達は大丈夫でしょうか」


「まあ、デニム達三人は普段パーティーを組んでいるDランクのベテランだから、大丈夫だとは思うけどね」


「レミさんはどうなんですか」


「レミも確かDランクだったはずよ」


そうこう話しているとギルドマスターが奥の部屋からホールにやって来た。


「みんな! ちょっと聞いてくれ!」


ギルマスがみんなに声を掛けるとみんなは静かになり、ギルマスの声に耳を傾けはじめた。


「これから救助依頼レスキューを出す、依頼内容はデニム、ジーン、スレンダー、そしてレミの捜索だ、場所はジャスティーニの廃坑、これから名前を呼ばれたものは参加してくれ、まず第一班、バニング、モンシア、アデルのパーティー、第二班、ルビー、サーシャのパーティー、第三班、カークス達のパーティー、それ以外の者達は不測の事態に備えて待機、以上だ、準備の出来た者から出発してくれ」


「ギルマス、ジローさんとファンナを連れて行ってもいいかい」


「ダメだルビー、二人はEランクに上がったばかりだろ、ジャスティーニの廃坑は二人にはまだ早い」


「じゃあさ、荷車係ならどうだい」


「ふむ、そうだな、荷車係ならばいいだろう、二人ともやってくれるか」


「勿論です」


「出来る事をやります」


「よし、ジローとファンナも連れて行け、ただし、絶対に廃坑の中に入れるなよ、いいな」


「「 はい! 」」


「以上だ、各自出発してくれ」


ギルマスの話が終わり、みんなはそれぞれ行動し始めた、俺とファンナは万が一デニム達の誰かが怪我をしていた場合に荷車で搬送する為の人材としてルビーさん達に同行することになった。


「ファンナ、裏手にある荷車を持って来よう」


「はい」


俺とファンナは冒険者ギルドの裏手にある倉庫に行き、荷車を二つ持ち出す、回復薬などのアイテムは常にバックパックに入っているから大丈夫だ。


「ルビーさん、準備出来ました」


「あいよ、それじゃあ行こうかねえ」


こうして俺達はデニム達の捜索と救援に向かう、ジャスティーニの廃坑はサラミスの街から西へ1時間ほど歩いた場所にある。そこまで俺とファンナは荷車を引いて行く。デニム達が無事だといいな。


ルビーさん達は第一班のバニングさんと第三班のカークスと何やら話をしている、おそらくそれぞれどの辺りを受け持つのか相談しているのだろう。ジャスティーニの廃坑は間違いなくダンジョンになっているだろうからな。


そして、目的地のジャスティーニの廃坑へ到着した。なんだか嫌な気配を感じる、モンスターの巣窟になっている場所だからだろうか。ルビーさんが声を掛けてきた。


「ジローさん、ファンナ、二人はここで待機だよ、荷車の番を頼むね、あたい等は廃坑に潜るから」


「わかりました、皆さんお気を付けて」


ルビーさん達はジャスティーニの廃坑へと入って行った、みんな無事だといいな。俺とファンナはただ待つ事しか出来ない、Eランクになったばかりだからな。


「無事だといいですね、ジローさん」


「そうですね、ファンナ」




おじさん、みんなの無事を祈るよ








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