第103話 ジャスティーニの廃坑





 俺とピピとファンナはジャスティーニの廃坑の入り口辺りで待機している。

ただ待っているだけなのも退屈なので、火を起こす為の準備として薪拾いをしている、ジャスティーニの廃坑は山の中にあって、木が沢山生えているから乾いた木の枝がそこかしこにある。数十分で薪は集まった。


「薪はこれぐらいでいいだろう、ファンナ、ピピ、そろそろ引き上げよう」


「はい、ジローさん」


「・・・うん」


廃坑の入り口近くまで戻ってきて、いつでも薪に火を付けられるようにしておく。


「ジローさん、まだ日は高いのに、もう焚火(たきび)の準備ですか、長丁場になると思っているのですか?」


「違うよファンナ、ボルボ教官が言っていたじゃないか、一手二手先の事を考えて行動しろって、おそらくだけど、みんなはフロストバットとの戦闘をすると思うから、冷気のブレスにやられてしまうだろうからね、こうして何時でも暖が取れる様にしておくのさ」


「なるほど、流石ジローさんですね、私なんか気付きもしませんでした」


「それほどでもないよ、・・・・・・よし、これでいいはずだ」


ジャスティーニの廃坑の入り口から少し離れた場所にたき火の準備をしておく。これで何時でもたき火が出来る。


どれぐらい時間が経過しただろうか、もう昼過ぎぐらいだ。


「ファンナ、ピピ、何か食べよう」


「そうですね、ただ待っているだけなのも退屈ですからね」


俺とピピとファンナはパンと干し肉とチーズを食べ始めた、何か腹に入れておかないとな。ファンナと三人で遅めの昼飯を食べた。


昼飯を食べ終わってまたしばらく時間が経った頃、変化があった、廃坑の入り口から数人の冒険者が出てきた。あれはカークス達のパーティーだ、何かあったのかな。


「カークス、どうした、何か見つけたのか?」


「いや、俺らの担当した廃坑1階層部分は調べたんだがな、フロストバットとの戦闘でみんな凍傷ギリギリの状態なんだよ、悪いけど火を起こしてくれ」


「わかった、ちょっと待ってろ」


準備しておいた薪に火を付ける、やはりたき火の準備をしておいて正解だったな、よし、これでカークス達に暖を取らせる事ができるぞ。


「ありがてえ、寒くて凍えそうだぜ、フロストバットのヤロウ、バンバン冷気のブレスを吐きやがって、往生したぜ、みんな、怪我とかしてないよな」


「ああ、大丈夫だ」


「寒いだけよ」


「あ~、凍える」


カークス達のパーティーは1階層を探索していたらしい、1階層目でもうフロストバットとの戦闘か、確かにEランクの俺とファンナじゃジャスティーニの廃坑は危険過ぎるな。何はともあれ二重遭難にならなくてよかった。


「カークスさん、デニムさん達は見つかりませんでしたか?」


「ああ、少なくとも1階層には居なかったぜ、後は2階層に行ったバニング達を信じようぜ、ファンナ」


「はい、みなさん無事だといいのですが」


カークス達は焚火で暖を取りながら干し肉を食べている、パーティーメンバーは全員フロストバットの冷気のブレスにやられているようだ、寒そうにしながらたき火に集まって暖を取っている。


またしばらくして、今度はバニングさん達のパーティーが出てきた、やはりみんな寒そうにしている、フロストバットにやられたのだろう。


「う~、さみ~、・・・お、カークス、そっちはどうだった」


「ダメだ、デニム達はいなかった」


「そうか、こっちも2階層の半分を担当してたんだがな、デニム達はいなかったよ」


「そっちもか、ってことは後はルビー達のパーティーだけだな」


「ああ、そうだな、・・・お、焚火があるぞ、用意がいいな、モンシア、アデル、焚火に当たろうぜ」


「おう」


「了解です」


そうか、バニングさん達のパーティーでもデニム達は見つからなかったのか、これはいよいよ心配になってきた。バニングさん達もフロストバットの冷気のブレスにやられて凍えそうになっている。やはりフロストバットは危険なモンスターなんだろうな。


それにしても、みんなはやはりベテラン冒険者なんだな、引き際をわきまえている感じだ、凍傷になる一歩手前で帰還している、さすがだ。ルビーさんとサーシャは無事だろうか、無茶してなければいいけど。


そして、またしばらくした時だった、事態は急変する。


ルビーさん達のパーティーが駆け込むように廃坑の入り口から出てきた、デニム達も一緒だ。デニムとジーンがそれぞれスレンダーとレミを背負いながら駆け込んできた。


「よかった、みなさん無事だったんですね」


「ファンナ! 話は後! 急いでここから脱出するよ!」


「ど、どうしたっていうんですか、ルビーさん!」


「ヤツが来るよ! みんな急いで!」


何だ、ルビーさん達は何かに追われているのか。


すると突然、廃坑の入り口から黒い大きな何かが飛び出してきた、な、なんだあれは。もの凄く大きな蝙蝠(こうもり)じゃないか、・・・あ、もしかしてあれは、ゲーム、「ラングサーガ」にも出てきたボスモンスター、ジャイアントフロストバットか! まさかここへ来てこんな大物に出くわすとは。




おじさん対処できるかな








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る