第99話 試験結果





 昼過ぎぐらいに収穫作業も終わり、リンゴの木箱の数を数えて商業ギルドに持って行く分と、メンデル子爵に納める分に分けて荷車に載せているところに、農家の人が声を掛けてきた。


「メンデル子爵様のところへはわしが持って行きますでな、冒険者さんは他の者達と一緒に商業ギルドの方へ持って行って下され、その中の一つを差し上げますじゃ」


「ありがとうございます、とても助かります」


「なんの、収穫を手伝って下さりこちらとしても大いに助かりましたわい、二日間どうもありがとうございますじゃ」


「いえ、あまりお役に立てず申し訳ないです」


「そんな事はありますまい、聞きましたぞ、モンスターを事前に察知して対処してくれたとか、さすが冒険者さんですな」


「いえ、それぐらいの事しか・・・それでは商業ギルドの方へこのリンゴを持っていきます」


「お願い致しますじゃ、その中の一つを冒険者さんに差し上げますでの、ギルドの方の手続きなんかはうちの者がやりますでな、商業ギルドまで運んでくだされば仕事は終わりですじゃ」


「はい、それでは」


俺とファンナは荷車を引いて商業ギルドまでリンゴの入った木箱を持って行く、ボルボ教官とピピは辺りの警戒をしている、ここはまだ街の外だからな。


「リンゴの入った木箱って、結構重いですね」


「ファンナ、ゆっくり行きましょう」


「はい、ジローさん」


農場を出て、あぜ道を進み、すぐに城壁の入り口に着く。門衛の兵士は俺達の事を知っているので顔パスで通行できた。「ご苦労さん」っと労われた、さて、あとは商業ギルドまでこのリンゴを持っていけば仕事は終わりだ、焦らずゆっくり行こう。


しばらく荷車を引いて移動しているとサラミスの街の商業区へと入った、そして二階建ての大きな建物に到着した。ここが商業ギルドだろうか。農家のお手伝いさんが話し掛けてきた。


「ここが商業ギルドです、裏にある倉庫まで荷車を引いてください」


「わかりました」


商業ギルドの裏手にまわって荷車を倉庫まで引いていく。


「さあ、着きました、リンゴの木箱を空いている場所に降ろして下さい、私はギルドの受付で手続きをしてきますので」


「わかりました」


「その中の一つを冒険者さんが持っていってください」


「ありがとうございます、では、作業に入ります」


荷車から木箱を降ろして空いている場所に置いていく、他の農家の方もいるみたいで、別の所で荷降ろしをしている。ファンナと農家のお手伝いさんとで荷降ろしをしていく。


リンゴの木箱の荷降ろし作業も無事終わり、少し休憩しているとギルドでの手続きに行った人が戻って来た。


「手続き完了しました、これで作業は終わりです、冒険者さんお疲れ様でした、一箱持っていってください」


「はい、どうもありがとうございました、それでは俺達はこれで」


リンゴ一箱を持ち上げる、少し重いが持てないわけじゃない。それを持って商業ギルドを後にする。あとは冒険者ギルドにこのリンゴ一箱を納品すれば試験終了だ。慌てずゆっくり行く。


「重くないですか、ジローさん」


「大丈夫、これくらい持てるよ、ゆっくり行こう」


「無理せんでもええぞジローよ、ギルドに戻って荷車を借りてきたらどうじゃ」


「大丈夫です、これでも戦士なんで」


「・・・ジロー、がんば」


「おう、任しとけピピ」


こうして、冒険者ギルドに到着して受付の納品カウンターのところまでリンゴを持ってきた。受付のおねえさんが対応してくれた。


「すいません、昇格試験のリンゴ一箱の納品にきました」


「は~い、今お調べしますね・・・・・・はい、確かにリンゴ一箱ですね、どうもお疲れ様でした」


「ふう~、やれやれ、ようやく終わったみたいだな」


「お疲れ様ですジローさん」


「・・・ジロー、よくやった」


「うむ、よくぞここまで漕ぎ着けた、・・・ではこれより試験結果を言い渡す」


いよいよか、なんだか緊張してきた、失敗した事もあったし、だけど最後にちゃんと納品も達成できたし、どうなるのかな、なんかドキドキしてきたぞ。


「冒険者ジロー、ならびに冒険者ファンナ、・・・・・・二人とも合格じゃ、おめでとう」


「やった! やりましたねジローさん!」


「よかったですね、ファンナ」


「・・・ただし、ジロー、お前さんには話がある」


「な、なんでしょうか、教官殿」


「うむ、ジローよ、お前さんは新人冒険者にしては歳を取りすぎておる、一人で突っ走らずに仲間と協力せよ、よいなジロー」


「はい、肝に銘じます」


「二人とも、わしの言った冒険者心得を忘れんでな、では、以上をもってEランク昇格試験を終了する、お疲れ様でした」


「「 ありがとうございました、ボルボ試験官殿 」」


「では二人とも、ギルドカードを受付で更新してくるように、ではな二人とも、精進せいよ」


ボルボ教官はギルドの奥の部屋へと行ってしまった。・・・そうか、とうとうEランクに昇格か。ファンナと二人で合格できてよかった。


「ジローさん、お祝いしましょう、今日は飲みますよ」


「そうですね、まずは受付でギルドカードを更新して、それから一杯やりますか」


{シナリオをクリアしました}

{経験点500点獲得}

{シークレットシナリオクリア}

{2BP獲得  1SP獲得}


お、どうやらシナリオをクリアしたみたいだぞ。いつもの女性の声が聞こえた。もう慣れてきたよ。さあて、受付へ行ってカードを更新して、酒を一杯やりますか。だけどその前にもう一度言っておこう。




ボルボ教官殿、ありがとうございました







「ギルマス、おるかの」


「これはボルボさん、教官のお勤めお疲れ様でした、どうでしたか、あの二人は」


「うむ、あれはいい冒険者になるぞい、ジローは歳の割りによう動けておったしの、ファンナもよい素質をもっておるようじゃ」


「ほ~う、そうですか」


「二人とも今すぐにでも義勇軍に欲しいぐらいじゃわい、ふぉっふぉっふぉ」


「それは困りますよ、うちのギルドにまだまだ在籍してもらわないと、人材はいくらあっても足りませんから」


「わかっておるよ、無理に引き抜こうとはせんから安心せい」


「闇の崇拝者との戦いがまだまだ困難を極めようとしている時ですからね」


「そうじゃな」


「それでは、これからも宜しくお願い致します、義勇軍団長ボルボ殿」







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