第91話 お仕置きですよ!
アクシオン男爵の息子で、ポールという人がエミリエルお嬢様を羽交い絞めにしている。
取り巻きの二人が前に出てきたわ。何よ、やる気。
リッキー君は私の隣で喧嘩腰になっている、マクレーンさんもなにやら呪文みたいな事を唱えてているみたい。
私も身構えるわ、お嬢様を助けないと。こういう勘違い男は何やらかすかわかったもんじゃないからね。
「おまえら! やっちまえ!」
ポールが取り巻きの二人に命令した。こちらに向かって近づいてきたわ、先に動いたのはマクレーンさんだった。
「雷よ!敵を撃て!《スタンボルト》!」
なにかスパークみたいなのが出て、二人の取り巻きを昏倒させちゃったわ。すごい。これが魔法ってやつなのね。
「な、なにい!?」
ポールは慌てている、残りはポール一人よ。
私は今のうちにポールの後ろに回りこんでお嬢様を掴んでいる腕を逆に掴み、お嬢様を解放する。
「ナイス、カスミさん! さあ、後はあんただけだが、どうする」
「く、なめるなよ! ぼくだってやればできるんだぞ!」
ポールは腰に挿してある細身の剣、たぶんあれレイピアだと思うけど、それを抜いた。
「覚悟しろ! ぼくは強いんだぞ!」
粋がってはいるみたいだけど、腰が引けているわよ。
すると突然、私に向かって近づいてきた、レイピアは当たると痛そうよね、ここは避けときましょ。
「何で避けるんだ!」
「知らないわよ!」
その後もブンブンとレイピアを振り回してきた、私は避けまくる。
「この! この! 当たれ! 何で当たらないんだ!」
そりゃあ当たったら痛そうだからよ、私は避ける。
「はあ、はあ、ぜえ、ぜえ、」
もう息があがっているみたいね。チャンスだわ。
「いくわよ!平手打ち!」
パチコーン
あ! しまった! 私ってビンタでモンスターをかるく吹っ飛ばせるんだったわ。忘れてた。
「ぎゃあああああーーーーーー」
ポールは勢いよく吹っ飛んでいった。だ、大丈夫かしら。
ポールは10メートルぐらい飛んで地面にごろごろと転がってのびてしまった。
「さすがカスミさんお手柄ですよ」
「なんだ、俺の出番無しか」
「よくやったわ、カスミ」
こんなんでよかったのかしら、男の人をふっとばしちゃったけど、おまわりさんに捕まらないわよね。
「リッキー、衛兵を呼んできてちょうだい。私に無礼を働いたこいつ等を牢屋に放り込まないと」
「え、そこまでするのですか? お嬢様」
「カスミさん、この街の領主でもあるミレーヌ伯爵家の人間に危害を加えたのですから当然ですよ」
「そうなのですか」
「まあ、相手も貴族だからな、2,3日で出られると思うけどな」
「あら、そうはいかないわよ、脅迫文を送ってきた輩なのだから、しっかり調べて貰わないと」
「はい、そうでしたね、エミリエル様」
こうして、今回の騒動はポールの逮捕で幕を下ろした。
慕われるっていうのも一概にいい事ばかりじゃないって事かしら。
そして、私は正式にエミリエルお嬢様の専属の護衛として伯爵家にご厄介になる事になった。
「カスミ、お茶が入ったわよ、一緒に飲みましょう」
「はい、お嬢様」
まあ、優雅と言えば優雅な毎日を送っているけれどもね。
メイドさんが淹れてくれた紅茶はとてもおいしかった。
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