第88話 お茶会でもしましょうか




  私達は、まず手紙を受け取った人物に話を聞く事にする。

誰が手紙を受け取ったかは、すぐにわかった、この屋敷に出入りしている御用聞きの人らしい。


マクレーンさんが私に聞いて来た。


「それで、そのアコースと言う御用聞きの方に話しを聞く訳ですよね」


「ええ、まずはそこからですね」


リッキー君も話しに加わってきた。


「でも、そのアコースってヤツは今は買出しに出かけているんだよな」


「そうです、帰ってくるまで少し待ちましょう」


そこへ、お嬢様から声が掛かった。


「あなた達、お茶が入ったわよ」


「はい、お嬢様、有難うございます、それでは少し待ちましょうか」


「そうだな」


「何時ごろ帰ってくるのかわかりませんからね」


私達は応接室に用意されたお茶とお菓子をいただく事にした。

う~ん、イイ匂い。この紅茶は随分お高いお茶の葉を使っているのかしら。

この焼き菓子もサクサクしていておいしいわ。

あ~、このまったりした時間。いいわね、紅茶もイイ感じよ。


「カスミ、なにゆるい顔してるのよ」


「すみません、おいしくて・・・」


「ふふーん、ウチ自慢の焼き菓子だからね、他の家じゃあまり出されないのよ」


「そうなのですか、良かったです、お嬢様の護衛をしていて」


「まだなにも起きてないでしょ、これからよ」


「と、言いますと?」


「私も犯人探しに行くからね」


「ええ! 危険じゃないですか、おやめになった方が・・・」


「私も行くのよ、いいわね」


「どうしてわざわざ自ら行動するんですか、お嬢様なんだから安全な所で待っていればよろしいのに」


「そんなのつまらないわ、私も行くから」


「・・・お嬢様、まさかその為に私を護衛に・・・」


「そうよ、いいでしょ」


なんて事かしら、この子身の危険を感じてないのかしら。

私だったら怖くて外に行くのが躊躇(ためら)われるのに。


・・・お転婆って言うより意外と勇気があるのかしら。

お嬢様をしっかりと護衛しないとね。

私に何が出来るのかわからないけど、おいしいお菓子とお茶の分はお礼しないとね。


「皆様、御用聞きのアコースが帰って参りました」


「ご苦労様ギャリソン、それじゃあ早速行くわよ」


「はい、わかりました、お嬢様」


私達は台所にある休憩室にいるアコースさんの所へ行く事にした。

お嬢様を連れて。


このお屋敷の台所もすごく広い、何人もの人がキッチンに居てもお互いに邪魔にならないぐらい広い。そこの椅子に腰掛けているのがアコースさんかしら。


「アコース、聞きたい事があるのだけど」


「これはお嬢様。私めに何か」


「あなたが昨日手紙を受け取ったのよね」


「はい、そうです、私があの手紙を受け取りました」


アコースさんに聞いてみる。


「その、手紙を渡してきた人物は、どんな人でしたか?」


「一見すると何の事も無い普通の男の人でしたが」


「いつも手紙を渡してくる人とは違ったわけですか」


「ええ、そうです、そう言えばいつものヤツじゃなかったから、おかしいな~とは思いましたが」


「その男というのは幾つぐらいでしたか」


「そうですねえ、大体20代ぐらいでしたでしょうか」


「名乗りましたか、その人は」


「いいえ、ただ手紙だ、と言って渡してきただけです、・・・そう言えば・・・」


「何か」


「いえ、大した事じゃないんですが、何日も体を洗っていない様な臭いだったような」


ここで、マクレーンさんが顎に手をあてて、考え込みながら意見を述べた。


「なるほど、風呂に入っていない様な感じですか」


「何か解ったのですか、マクレーンさん」


「おそらくですけど、もしかしたらスラム街の人かもしれません」


「スラム街の人ですか?」


「それじゃあスラムに出かけましょ」


「お待ち下さいお嬢様。危険ですよ」


「大丈夫よ、スラムは別に初めてじゃないから」


なんて事なの、スラム街なんて治安が悪そうな所に行かないといけないなんて。

私、怖いのはちょっと遠慮したいんだけど。


そうもいかないみたいよねえ、これって。





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