第86話 チュニックってなんかいいわよね





 あまりマクレーンさんやリッキー君をお待たせするのもなんだわ。

早いとこ服装を決めましょう、何にしようかな。


ワンピースみたいなのもいいわね、あ、でも護衛なんだから目立つのはやめた方がいいよね。

そうなってくると、このチュニックっていうのかしら、この服に革を縫い付けた素朴な感じの服なんてよさそうよ。


色も緑色で目立たないし、よし、この服にしよう。派手な服は私の趣味じゃないのよね。

服に着替えて姿見の前で確認する、・・・いいんじゃないかしら。


・・・やっぱり17歳の私だわ、・・・なんだか不思議な気持ちよ、悪い気はしないけどね。


そっかあ、若返っちゃったかあ、そう言えば体が妙に軽いのよね。

17の時って私、もうちょっとぽっちゃりしてたような気がするんだけど。

・・・まあ、いっか。


「カスミ、着替え終わった?」


「あ、はい、着替えました」


「あら、そんな街娘みたいなのでいいの」


「はい、目立ちたくないので」


「そうなの、わかったわ、ニナ、仕立ての必要はあるかしら」


「・・・そうですねえ・・・よし、このままで大丈夫です、仕立ては必要ありません」


「そう、じゃあカスミ、行くわよ」


「はい、どちらへですか」


「あの二人の男の所よ、これから話があるの」


「話、ですか」


「そうよ、なんで私に護衛が必要かってところからね」


「あ、そうでした、エミリエルさん、なんで私を専属護衛に、なんて言ったんですか」


「それは、あなたがオークを一撃で倒せるからよ」


「あ、あの時は、私、混乱してて、自分で何をやったかなんて覚えていないのです」


「あら、そうなの、私が見てたから本当の事よ」


「だけど・・・」


「はいはい、この話は、終わり、いいわね」


「は、はい、私・・・本当にモンスターをやっつけたんでしょうか」


「そうだって言っているじゃない、行くわよカスミ」


私とエミリエルお嬢様は私が使うであろう部屋を出た。

そのまま応接室みたいな部屋に入る。


「来たわね、それではこれから、これまでの経緯を話します」


ミレーヌ伯爵は話始めた。


ランフォード将軍とマクレーンさん、リッキー君もソファーに座って話しを聞く姿勢になっているわ。私もソファーに促されて腰を下ろす。お嬢様は伯爵様の隣に座った。


こうして見ると本当に親子なのね、美人って得よね。


「まず、私の娘、エミリエルにある手紙が届きました」


ランフォード将軍が眉根を片方下げて聞いた。


「差出人は?」


「書かれていませんでしたわ」


謎のお手紙って事よね。


「何が書かれていたのですか」


「その手紙にはこう書いてありました、エミリエルを殺して自分も死ぬ、僕の愛は本物だ、・・・

この様な内容の手紙です」


うわ~、愛憎を感じる内容のお手紙ね。


どこの世界でもいるのね。そういった感じの愛と憎しみをごっちゃにしている人って。


リッキー君が立ち上がり、ミレーヌ伯に言った。


「それって脅迫文じゃないですか、衛兵を動かせないのですか、ミレーヌ様」


「駄目ね、勝手に王国軍を動かす訳にはいかないのよねえ、王国軍は国王陛下の兵であって私の私兵ではないのよ、一応私が自由に出来る私兵もいるにはいるけど・・・」


マクレーンさんが一つ提案をした。


「その私兵を街の中に配置しておく、と言うのはどうですか」


「それも無理よ、私兵と言ったってみんな何かしらの仕事や生活があるもの、あまり無理をさせたくないわ」


「なるほど、そこで我々に護衛してほしい、という訳なのですね」


「そうなります」


なるほど、つまりお嬢様を脅迫状の送り主から守れって事なのね。

そんな勘違い男からエミリエルお嬢様をお守りするって訳よね。いいわ、やりましょう。


私がなんの役に立てるのかわからないけど、女の子を脅えさせる男は許せないわ。

そんなヤツはビンタよ、ビンタ。






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