第85話 久しぶりね、・・・私




エミリエルお嬢様の護衛をする事になったんだけど、私って何かの役に立てるとは思えないのよね。


だって一般人だし、こっちは民間人よ、民間人。戦いなんて持っての他よ。

なのにエミリエルさんったら、私を専属護衛に雇うとか言い出すし、この子意外とお転婆なのかしら。


「カスミ、いくわよ」


「行くって、どこへですか?」


「あなたのお部屋に案内するわ、ニナ、カスミの面倒を見て頂戴」


「はい、お嬢様」


「それではランフォード将軍、私達はこれで失礼致します、お子様に宜しくお伝え下さい」


「うむ、お嬢様も息災でな、カスミと言ったか、お嬢様の護衛は大変だろうが、しっかり頼む」


「は、はい、出来る限り勤めます」


「カスミ様、こちらへ」


「あ、はい」


私はニナと呼ばれたメイドさんと共にエミリエルお嬢様に続いて退出した。

私はニナさんに付いて行く、やっぱり広い廊下だわ。

暫く歩いて行くと一つの部屋の扉の前で立ち止まった。


「こちらがカスミ様のお部屋になります」


「あ、はい、どうも」


「あなたの着ているドレスは私のなんだから、カスミに何か衣服を用意するわ」


「あ、そうでしたね、何時までもこの服という訳にはいきませんものね」


三人で部屋の中に入る、結構広いお部屋だわ。

ここを私が使ってもいいのかしら。なんだか申し訳ないわ。


「さあ、ここがカスミの部屋よ、まずは着替えて頂戴」


「はい、ニナさん、服は何処にありますか」


「クローゼットに何着かございます、お好きなお召し物をどうぞ」


「有難うございます」


早速クローゼットに向かう。扉を開けてびっくり、凄い服の数だわ。

下着なんかもあるみたい、すごく色っぽい下着ばかりだけど。

あ、メイド服があった。これも着てみたいけど私の歳じゃねえ。


お嬢様のドレスを脱いでニナさんに渡す、すぐに下着を身に着ける。

さて、どんな服にしようかな、こういう時結構迷うのよね。


あら、これは、姿見かしら、流石貴族ともなると鏡もちゃんとあるのね。

だけど、一応自分の姿をチェックしてみる。

そこには・・・・・・


「あら? どちらさま?」


「? カスミ、なに自分に挨拶してんのよ」


「え?」


思わず二度見した。そこに映っていたのは17歳ぐらいの私だった。


え?・・・え?・・・ちょっと待って・・・なんで私若返ってるの。

目をぱちくりして一応ポーズを取ってみる。

同じポーズで映っている。やっぱりこれって私よね。

ど、どうしましょう。私、若返ってる。


「なにやってんのカスミ、早く着替えなさいよ」


「あ、はい、すみません」


どうやらあの時の喫茶店の店員さんが言っていた事って、こういう事だったのね。


・・・私、17歳になってしまったわ。


でも、とりあえず、こう挨拶しとこう。


「久しぶりね、わたし」



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