第83話 マゼランの都って所に到着したみたいだけど




 私は今、馬車に乗っている。

エミリエルお嬢様の馬車だけど、この服もお嬢様からの借り物だ。


「マゼランの都に到着致しました」


ギャリソンと言うロマンスグレーのおじさまが言った、街に到着したみたい。

馬車は検問をしている所まで進んで停止したわ。

どうしよう、私、検問にひっかかっちゃうかしら。

どう見ても異邦人だもんね、私。ドレスは着てるけど。


検問官がこちらに声を掛けてきた。


「お帰りなさいませ、エミリエル様、舞踏会はいかがでしたか」


「退屈だったわ」


「そうですか、・・・おや? そちらの方はどなたでしょうか?」


「私のツレよ、通っていいわよね」


「お連れ様でしたか、・・・わかりました。お通り下さい」


「ギャリソン、出して頂戴」


「はい、お嬢様」


私達を乗せた馬車は検問を通り過ぎた、よかった。何も言われなくて。


「エミリエル様、よろしかったのでしょうか」


「何が? カスミは犯罪者って訳じゃないでしょ」


「は、はい、悪い事はしていません」


「だったら別にいいのよ」


「すみません、お手数をおかけしました」


「こんなのただの検問でしょ、気にしなくていいわよ、だってこの街は我が家の領地ですもの」


「そう言っていただけると気が楽になります」


マゼランの都は高い壁でぐるりと囲まれている街みたい、凄く大きな街だわ。街の中は色々な人達でいっぱいだった、すごい人の数だわ。


・・・あ! あれ知ってる、エルフってやつよね、耳が長くて体がシュッとしている。身軽そうだわ。映画に出てくる感じそのままって感じね。


あっちはドワーフね、ずんぐりむっくりした体形に筋骨隆々な感じで髭もじゃで背が低い。確か鍛冶職人が多いって事を何かの本で読んだ事があるわ。


あれは、猫みたいな耳をした人もいる、尻尾もあるみたい。獣人って言うのかしら。ぱっと見、人間に見えるから最初は気付かなかったわ。


本当に色々な種族の人達がいるのね、さすがファンタジーだわ。


お店も沢山あるみたい、いろんなお店が並んでいるわ。露店商とか、何を売っているのかしら。私のウチの近所のスーパーマーケットでもここまで賑わっていないわよ。


「凄く賑わっていますね、この街」


「まあね、バーミンカム王国の要の街だからね」


「そうなのですか、あ、あれは何ですか、武装した民間人みたいな人達がいますけど」


「ああ、あれね、冒険者よ、ただの飲んだくれの集まりのギルドが近くにあるの」


「冒険者?」


「困っている人から依頼を受けて問題を解決してくれる仕事をする人達よ」


「はあ、なるほど、冒険者ですか」


ホント、色々あるのね、ファンタジーって。


暫く馬車は進んで行くと、また検問をやっている人達が見えた。

・・・と、思ったら素通りした、なんで?


「今の検問はしないのですか」


「ええ、ここから先は貴族街だからね」


「そうなのですか」


貴族街、確かに立派なお屋敷が立ち並んでいるわね。


馬車はそのまま一番奥の大きなお屋敷に着いた。

お庭も広いしお屋敷も大きいわ、誰が住んでいるのかしら。ってエミリエルさんか・・・


伯爵家で街の領主ともなるとこれほど大きなお屋敷に住めるのね。

馬車はお屋敷の玄関っぽい広い場所に止まった。


「お嬢様、お屋敷に到着致しました」


「ご苦労様ギャリソン。さあ、カスミ、降りて」


「はい、ギャリソンさん、有難うございました」


「お気を付けて降りて下さい、カスミ様」


「はい」


馬車を降りて、辺りを見す、やっぱり大きいお屋敷ね。

玄関の方を見るとメイドさん達が一斉に整列してきた。


「「「「 お帰りなさいませ、お嬢様 」」」」


「出迎えご苦労様、お母様は?」


「はい、お戻りになっております」


「そう、わかったわ」


・・・驚いた、まさか現実でこんなシーンを見られるなんて。

ファンタジーだわ。


「カスミ、行くわよ」


「あ、はい」


私は大きなお屋敷の玄関を通って中に入る、お屋敷の中も凄く広くて豪華絢爛って感じだわ。さすが伯爵家、かなり身分がお高い貴族なのね、なんだか緊張してきちゃった。


「カスミ、まずはお母様に挨拶しに行くわよ」


「お母様にご挨拶ですか」


「ええ、あ、お母様はミレーヌ伯爵だから、一応無礼の無い様にしなさいね」


「え? 伯爵様!」


どうしよう、ビビッてきちゃった、仕事の上司に挨拶するとは訳が違うわよね。


・・・ミレーヌ伯爵様か、どんな人かしら・・・





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