第82話 伯爵令嬢ってやつかしら
どうなっているのよ、これ。
なんで私裸な訳、そしてなんであんな大きなモンスターをビンタでふっとばせる訳。訳がわからない、・・・とにかくこのままじゃやだわ。何か着る物はないのかしら。
周囲を見回してみる、やっぱり草原よね、ここって。
近くに町とか人が住んでいる所ってないのかしら。
あ、でも私何も持ってない。だって裸だもの。
どうしましょう。ここって何処なの。
「ちょっとあなた! 大丈夫なの!」
びっくりした、突然大きな声が聞こえた。女の子の声だわ。
「素っ裸じゃないの! モンスターにでも襲われたの!?」
「えっと、私、気が付いたらここにいて」
「気が付いたら? まさかダンジョンのテレポートトラップに引っかかったの」
「え~と、よくわからないんですけど」
「まあいいわ、ギャリソン! 私の予備のドレスを持ってきて!」
「畏まりました、お嬢様」
「とにかく、このままじゃモンスターに襲って下さいって言ってる様なものだわ、すぐに服を着なさい」
「ドレスを持って参りました、さあ、お嬢さんこれを」
まあ、40代の私にお嬢さんだなんて、口がお上手ね。このロマンスグレーなおじさまは。ドレスをみると貴族とかがよく着ている様な青い派手なドレスだった。
「これを着ても宜しいのですか」
「早く着なさい、風邪を引くわよ」
「どうも有難うございます」
青いドレスを着る。あ、胸がきつい。でもこれは言ってはいけないわよね。
「ふう~、なんとか落ち着きました、すみません、ドレスをお貸し頂いて、すごく助かりました」
「いいのよ別に、あなた、お名前は? 私はエミリエル・ルクードと言うの」
「あ、私は森野カスミと言います」
「モリノカスミ、変わった名前ね」
「あ、カスミで結構です」
「カスミね、それじゃあカスミ、こんな所で話もなんだわ、私の馬車に乗るわよ」
「馬車?」
ああ、そうか、ここってもう異世界なのよね。車なんてある訳ないか。
「有難うございます、お言葉に甘えさせていただきます」
「こっちよ、来なさい」
私は草原を歩いて馬車が止まっているであろう場所まで歩いて行く。
二頭立ての立派な馬車だわ。映画とかでよく見る屋根付きの馬車ね。
「さあ、乗って頂戴」
「お邪魔します」
馬車の中は結構広い、6人ぐらい楽に座れそうね。
エミリエルと言う女の子の向かい側に座る、お話がし易い感じね。
「ねえ、カスミは何処から来たの」
「日本と言う国です」
「ニホン? 聞いた事がないわね」
「たぶんですけど、物凄く遠い所です」
「つまり、相当な田舎から出てきたって事かしら」
「はい、そのようなものです」
「なるほど、それで私の名前を聞いても驚かない訳ね」
「それは、どう言った事でしょうか?」
「私はね、伯爵家のご令嬢って訳」
「え! 貴族だったのですか、それは大変失礼を致しました」
どう見ても15歳ぐらいにしか見えないこの女の子が、まさか伯爵令嬢だったとは。さすがファンタジーだわ。
「ところでカスミ、あなた何者なの」
「はい?」
「さっき、見てたわよ、オークを一撃で倒してたわよね」
「オーク?」
「あの豚頭のモンスターの事よ、普通オークを一撃で倒せる女なんてそうそういないわよ」
「ああ、なんかビンタしたらふっ飛んでいきました」
「ビンタ?! つまり素手で倒したって訳なの、これはいい拾い物をしたわ」
「え? それってどう言う・・・」
「気にしない気にしない、さあ、もうすぐマゼランの都へ着くわよ」
「マゼラン? あの、すいません、ここって何処なのでしょうか?」
「なに? そんな事も知らないで田舎から出てきたの、この国はバーミンカム王国よ」
「バーミンカム?」
聞いた事ないわね、やっぱり異世界なのね。
「で、私達が今向かっているのがマゼランの都、私の家があるの、うちが管理している街よ」
「それって領主さまって事ですよね、エミリエル様って実は物凄く身分の高いお方なのでは」
「あら、今更、まあいいわ」
どうしましょう、私とんでもない人に拾われたかも。
「お嬢様、マゼランに到着致します」
「わかったわ、ギャリソン」
マゼランの都って街に到着するみたい、どんな街なのかしら。
私、これからどうなっちゃうの?
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