第74話 冒険者ギルドにて、




 「ジローさん!起きて下さいジローさん」


「う~ん、どうかしましたか、ファンナ・・・」


いつの間にか眠ってしまった様だ、ここは冒険者ギルドの酒場だ。


「大変なんですジローさん、朝、目が覚めたら殿下の姿が何処にもないんです」


「・・・でんかがいない?・・・え! 殿下が?」


「はい、私が目を覚ましたら既にいなくて」


「・・・たぶんですけど、自分の役割を果たしに行ったんだと思いますよ」


「え? 自分の役割、それはどういう・・・」


「昨日言ったじゃないですか、結婚式には国王陛下と王子にご登場願うって、たぶんそれの準備の為にお城へ向かったと思いますよ」


「そ、そうなんですか、私てっきり・・・」


「まあ、ここは冒険者ギルドですからね、常に誰かがいますから暗殺者も手が出ないんじゃないですかね」


「そうですよね、あ~びっくりした、殿下の姿がどこにも見えないんで、焦っちゃいましたよ」


「すみませんファンナ、きちんと説明しとけば良かったですね」


ファンナと話しているとルビーさんとサーシャ、エミリーとギャリソンさんが起きて来た。


「まったく、あなたたち、飲みすぎよ、これだから冒険者っていうのは」


「まあまあ、いいじゃないか、ここは意外と安全なんだよ」


「そうよ、常に緊張の糸を張り巡らせなくてもなんとかなる物よ」


「こちらと致しましてはやはりお嬢様の事が優先でございますから」


「皆さん、おはようございます」


「おはよージロー、何か動きってあった」


サーシャが元気な挨拶をしてきた。


「そうですねえ、ファンナが言うには殿下は事を進めているってとこですかね」


「ああ、そういやあ昨日そんな事言っていたねえ、朝飯でも食べながら話のすり合わせでもしようかねえ」


「え? 何の話、私聞いてないわよ」


「それも含めて話合おうって事さ」


「・・・まあ、いいけど・・・」


俺達冒険者組が朝起きて来て、ギルドの酒場のテーブルに座る、すかさず注文をする」


「「「「 Aセット6つ 」」」」


「は~い、ただいま~」


「ピピにはさくらんぼね」


「・・・うん、いただきます」


ピピにさくらんぼの様な果実を2つ渡す。ピピはそれに齧りついた。もはやお約束だ。


しばらくして、俺達の前にモーニングセットが置かれた。さて、朝飯だ。


「それで、ジローさん、どういう作戦なんだい」


「あ、それ私も聞きたい」


「私もです」


「どうするの、おっさん」


「作戦ってほどじゃないんですけど、昨日言ったように国王陛下と王子にご登場願うだけですよ、ローゼンシル姫の結婚式に、それだけです」


朝食を食べながら、ルビーさんが答えた。


「え、ほんとにそれだけ、もっとこう、何かないのかい」


「いえ、ありませんよ、後は出たとこ勝負って感じですかね」


「呆れた、ジローの事だから何かあるんじゃないかって思ってたわよ」


サーシャは呆れているようだ。


「そんな、買いかぶりすぎですよ」


「そう言えば髭のおっさんが任しとけって言っていたけど、あれは・・・」


「ああ、バンガード殿の事ですからそっちはそっちで何かやるみたいですね」


「大丈夫かしら、衛兵に捕まる様な事じゃないでしょうね」


「さあ? 大丈夫なんじゃないですかねえ」


「そんな適当でいいの、結婚式は今日よ」


「とりあえず我々はエミリエルお嬢様の護衛として結婚式の会場に入れればいいんですよ」


「つまり、予定通りにすればいいんだね、ジローさん」


「はい、下手に動いて衛兵に捕まらない様にすればいいんですよ、今の所はね」


「それじゃあ、予定通りお嬢ちゃんの護衛をすればいいって事で、動こうかねえ」


「よろしくお願いいたします」


ルビーさんが周りを見渡しながら聞いて来た。


「そう言えばランパ達の姿も見えないけど、どこ行ったんだろうねえ」


「おそらく、王子の護衛としてお城に入ったと思うんですけどね」


「おや、そうなのかい」


「ええ、たぶんですけどね」


「それじゃあ私達は予定通り結婚式に出席すればいいのね」


「そうです、エミリエルお嬢様」


「わかったわ」


朝飯も食べ終わってあとはまったり時間を過ごして、急がず慌てず落ち着いて行動するだけだ。それにしてもバンガード殿はどうするつもりなんだろうか、一言で結婚式をぶち壊すと言っても衛兵に捕まるやり方は出来ないだろうし、何か策があるのかな。


まあ、俺達は自分に出来る事をやるだけなんだが、大した事は出来ないだろうし、どうなるのかな。




おじさん、そろそろ行くよ






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