第69話 三人の兵士




 俺達とバンガード殿、そしてアレキ伯爵の兵三人。このメンバーで今はザンジバル王国の王都へ向けて旅をしている、途中でドコス領を通らないとならないが、この馬車にはルクード家の紋章があるので、今はエミリエルお嬢様を護衛していると言う事になっている。


「そう言えば自己紹介がまだでしたな、俺はランパ、こっちがアコース、で、こっちがコズン。俺達はザンジバル王国軍の兵士なのだがドコスのヤツに使われたくないってんでこっちに来たんだ、よろしくな」


「はい、道中の旅の護衛、よろしくお願いいたします。俺はジローと言います」


「私がエミリエルよ、あなた達、護衛の件よろしくね」


「はい、お嬢様、お任せ下さい」


「バンガード殿もお願いしますね」


「おう! 任しとけって」


バンガード殿はずいぶんと張り切っている様だ。やはり王族の護衛と言う事で、騎士としてやる気に満ちているのかもしれない。ランパさん達にはエミリエルお嬢様の護衛と言う事にしてあるけど。


今のところ旅は順調だ、特に妨害はない。まだムサイの街を出たばかりなので、そうそう問題があるわけでもないか。と、思っていたら、ギャリソンさんから声が掛かった。


「皆様、前方にモンスターが見えます」


「何! モンスターだと、よーし! 俺達だけでやるぞ! アコース! コズン! 用意はいいか!」


「はい!」


「準備オーケーです」


なんと、ランパさん達だけでモンスターを倒すと言っている。


モンスターを見ると、どうやらビックボアらしい、デカイ猪だ。


ランパさん達がモンスターに向かって突っ込んで行く。


「バンガード殿、行かなくていいんですか」


「俺は殿下の護衛に徹する、モンスターの事はあいつ等に任しとけばいいって」


「ちょっと髭のおっさん、大丈夫なの」


「ああ、お嬢様、大丈夫だ、あいつ等あれで結構やるからな」


ランパさん達を見ると見事な連携攻撃で、あっと言う間にビックボアを倒していた。やるなあ。あの兵士達、ザンジバル軍は強兵揃いなのかな。


「よし! モンスターの討伐に成功だ、この調子でいくぞ!」


「「 はい! 」」


護衛が付いているというだけでこうも楽な旅になるのか。ランパさん達に感謝だな。その後もモンスターに遭遇したが、護衛のランパさん達のおかげで馬車から降りずに旅をつづけている。ドコス領に近ずくにつれて、モンスターの出現率がぐっと減ってきた。もうそろそろドコス領に入る。


街道の途中に検問所が見えた。あれだなドコス家の言いなりになっている王国軍と言うのは。


ほんと、ドコス家の発言力ってどれくらいの規模に及んでいるんだ。ザンジバル軍を動かしているって事は軍部を統括している元帥あたりにまで影響が出ているという事か。だとすると、これから先ますますフレデリック王子の素性を晒す訳にはいかない。


王都までしっかり護衛しなくては、と、言っても全ての兵士がドコス家の言いなりって訳じゃないだろうけど、そもそも軍って王様の命令で動くんだからな。そのへんの命令系統は実際に王都に行かないとわからないんだろうけど。


検問官がこちらに向け、手を上げ静止を促す。


「そこのお前達、止まれ、馬車を止めろ」


ギャリソンさんが対応する。


「どうかしましたかな」


「検問だ、協力してくれ、時間は取らせない」


「わかりました」


「ん?・・・なんでサンドリア家の兵士が護衛なんかやっているんだ」


言われて、騎士バンガード殿が対応した。


「失礼だな、俺達だって立派なザンジバル王国軍だぜ」


続けてランパさんも対応する。


「それにこの馬車はバーミンカム王国からのお客様だぞ、その護衛をしているだけだ」


「バーミンカムからの客だと? ちょっと中を検(あらた)めさせてもらうぞ」


「・・・どうぞ」


検問官が馬車の中の様子を確認する。


「・・・・・・ふむ、お前たちは冒険者か」


「ええ、そうです、・・・」


「一応身分証を見せてもらおうか」


「・・・はい、これです」


俺達は冒険者ギルドのギルドカードを見せた。


「・・・ふむ、確かに冒険者のようだが・・・そこのお前、口元のマスクを取れ」


まずい! 王子の素顔を晒す事になってしまう。


「私がミレーヌ・ルクード伯爵の娘、エミリエル・ルクードよ。私の護衛が何か?」


「これは大変失礼を致します、こちらも規則ですので・・・さあ、顔を見せるんだ」


フレデリック王子は口元の布を外して顔を晒した。


「!?・・・あ、あなたは・・・!?」


「いや~、この国の暗殺された王子様に顔が似ているってよく言われるんですよね~、そうだよなランディウス」


「まったく困ったものよねランディウス」


「ランディウス、腹が減らないか、街に着いたら何か食べようぜ」


このままランディウスとして押し通す。


「・・・う、うむ、そうか、ランディウスと言うのか、それにしてもよく似ている・・・」


「もうよろしいかしら、時間は取らせないと言う話でしたのに」


「・・・そ、そうですね、通って結構です」


よかった。なんとかなったか、みんな咄嗟の思いつきにしてはよくやってくれる。


こうして俺達は検問を抜けた、あの兵士は疑っていたけど、大丈夫かな。とにかく、このまま東に向けて馬車は進む、ここはもうドコス領だ。


次の目的地はドコス領にあるファルメルの街だ。


そこで一泊して王都に入る事になる。気は抜けないな。




おじさん緊張したよ







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