第70話 ファルメルの街




 俺達は、ドコス領にあるファルメルの街に来ていた。とりあえず冒険者ギルドに行って、宿の手配をして、情報を集めている。街の人に話を聞くとやはりドコス家の影響力は大きかった。この街の兵士達はドコス家の息のかかった者達でまとめられていた。街の人達もドコス家の悪いところはあまり言わない様にしているようだ。


まあ、ここはドコス領の中にある街だからな。当然か・・・


そして、何と言ってもローゼンシル姫の結婚話が街の噂で持ちきりだった。


どうりで街の人の姿がまばらな訳だ。みんな王都に行っている様だ。ローゼンシル姫の結婚式を一目見ようと殆どの住民が王都ザンジバルに行っている様だ。


結婚式まであと3日か・・・王子はどうするつもりなんだろうか。その辺の話も含めて一度ギルドに戻るか、収集した情報をみんなに伝えないと。


「いくよ、ピピ」


「・・・うん」


俺とピピは冒険者ギルドへと戻ってきた。みんなもギルドに戻ってきている様だ。すでに話し合いは始まっている。


「ああ、ジローさん、戻ってきたのかい」


「ええ、どうでした、ルビーさん」


「ダメだねえ、どこもかしこも結婚話で持ちきりだったよ」


「こっちも似たようなもんだったわ、ローゼンシル姫の結婚の話ばかりだったわ」


「サーシャもって事は他のみんなもですか」


「ああ、特にこれと言って王子の話は無かったな」


騎士バンガード達も似たような情報だった。


「まあ、王子の事は秘密ですからね、それだけ今はランディウスの事がばれてないって事ですよね」


「まあ、そうだな」


「ファンナはどうでしたか」


「私の方もローゼンシル姫様の話ばかりでした」


「そうですか」


「ジローの方はどうだったの」


「俺も似たようなものですね、強いて言えばドコス家の息の掛かった兵士でこの街は守られているってくらいですかね」


「まあ、ここはドコス領だからな」


「バンガード殿は」


「一応この街の兵舎に顔を出して来たが、・・・ありゃあドコスの私兵に成り下がっているな」


「やはりギア・ドコス伯爵は王都でも影響力があるんでしょうか」


「そうだろうな、この街でこれだからな」


「それってザンジバル王国軍の大将にまで発言力が及んでいるってわけですかい」


「ああ、ランパの言う通りだ、厄介だな」


「つまり、王都に近づくにつれて王子の素性が知られる可能性が高くなるって訳ですよね」


「そうだ、結婚式に向けて検問も厳しいだろうな」


「しかし、逆に言えば王都に入れば問題無い訳ですよね」


「それはそうだが、さっきも言ったが検問はキツイぞ」


「それなら心配いらないわ、ね、ギャリソン」


「はい、左様でございますな」


「確かに、バーミンカムからの客人を護衛しているって事で俺達は馬車を護衛しているけどな」


「ミレーヌ伯爵の威光がどこまで通用しますかね」


「あら、心配しているのおっさん、大丈夫よ、問題ないわ」


「だと、いいのですが」


「・・・ま、ここで言っていても何も始まらんさ、とりあえずもう夜も更けてきた事だし、飯にしようぜ」


「そうですね、お酒はほどほどにお願いしますね」


「わかってらい、わざわざ言うなよ」


「すいませ~ん、注文いいですか~」


「は~い、ただいま~」


こうして冒険者ギルドで晩飯をいただいて、お酒も少し呑んだ。


バンガード殿は呑みまくっていたけど、ほんと、いいのかこれで。


ランパさん達兵士の人たちは交代で王子の泊まる部屋の警護をしていると言っていた。ランパさん達のおかげなのか、夜は特に何もなかった。明日はいよいよ王都入りだ、しっかり寝よう。


王都に着いたら、さて、どうしたものか。


フレデリック王子は何か考えがあるのだろうか。


まあいいか、王都に着いてからだ。




おじさん、何も考えてないよ






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