第66話 ムサイの街




俺達はザンジバル王国の西側に位置している、サンドリア領を旅している。ランディウスの目的地は王都だけど、とりあえずアレキ伯爵に会うため、ムサイの街へ向かっている。


さて、アレキ・サンドリア伯爵は会ってくれるかな。


「ふ~ん、するってえとおめえさん方は伯爵に会いてえって訳だな」


「そうなんですよ、バンガード殿」


「う~ん、そう都合よく会ってくれっかな、あの人忙しいからなあ」


「やはり難しいでしょうか」


「う~む・・・よし!わかったぜ、この俺に任しとけって、何とかしてやらあ」


「え?大丈夫なんですか、そんな事言って」


「ああ、大丈夫だ、知らねえ間柄じゃねえしな」


「ちょっと髭のおっさん、ホントに大丈夫なんでしょうね」


「任しとけってお嬢ちゃん、俺は騎士だぜ」


「とりあえずは、バンガード殿に任せてみましょう」


「いざとなったら私に任せなさいよね」


「はい、エミリーさん、その時はよろしくお願いします」


そして、しばらく街道を進んで行くと、城壁の様な壁が見えてきた。


「あそこだ、着いたぜ、ムサイの街だ」


ムサイの街に到着したみたいだ。そこそこ大きな街だな。サラミスの街と同じぐらいかな。伯爵様が治める領地にしては若干小さいかもしれないけど、バーミンカムと比較するのは失礼だったか。ムサイの街の門の前まで進んで、一旦馬車を止める。


「ムサイへようこそ、旅の方ですか?」


「いえ、冒険者です・・・はいこれ、身分証です」


俺達はギルドカードを提示した。


「うむ、確かに冒険者の様だが、その者達は同じ冒険者ではないのか」


「あ、はい。旅の途中で知り合いまして」


「だったら入市税を徴収するが」


「幾らなのかしら」


「銅貨2枚だ」


「ギャリソン」


「はい、お嬢様。・・・他の二人と合わせて銅貨6枚です」


「・・・うむ、確かに・・・よし、通っていいぞ」


「はい、お疲れ様です」


俺達の馬車はムサイの街へ入る。


街の中はそこそこ賑わっている様だ。もう夕方なのでお店の方は閉店しているところが多いが。それでも酒場などはこれからという感じだ。馬車をうまやに預けて、俺達はまず冒険者ギルドへ行く事にした。こんな時間に伯爵の屋敷を訪ねても迷惑だろう。


「ここがムサイの街の冒険者ギルドですか、・・・なんかサラミスの街と変わらないって気がしますね」


「まあ、ギルドなんてどこも一緒さね、さあ、飯にしようかねえ」


「あーお腹ぺこぺこ、早くご飯食べたい」


サーシャがお腹を擦りながら歩く。


「私もお腹空きました」


ファンナもか、確かに俺も腹が減ったな。


「・・・さくらんぼ」


「はいはい」


ピピにさくらんぼを渡す。


「う~ん、こう長時間馬車に揺られていると、お尻が痛くなってくるわね」


「お疲れ様でございます、お嬢様」


「ギャリソンもご苦労様」


「すみません、お嬢様、私の分の入市税を払っていただいて」


「気にしなくていいのよ、ランディウス」


「さあ、ギルドに入りましょう」


俺達は冒険者ギルドへ入る。ギルドの中はそこそこ冒険者で賑わっていた、空いている席に座る。ウエイトレスのおねえさんに声を掛ける。


「すいませ~ん、Aセット8つ下さい」


「は~い、ただいま~」


俺は皆にお酒を呑むか聞いてみた。


「お酒はどうします?」


「ほどほどでいいんじゃない、ここは王子の後見人の治める街なんでしょ、めったな事はまず起きないと思うわね」


「う~む、確かにそうなんですが・・・」


サーシャは飲みたいようだ。


「気にしても始まらないよジローさん、息抜きも大切だよ」


「そうですね、少しだけいただきます」


「わかったよ、ちょいとウエイトレスのおねーさん、酒はあるかい」


こうしてムサイの夜は更けていくのであった。明日の朝にアレキ・サンドリア伯爵の屋敷へ行こう。まだ伯爵に会えると決まったわけじゃないけど、ここはバンガード殿に任せよう。


バンガード殿はお酒をじゃんじゃん呑んでいるけど、大丈夫か。




おじさん少し不安だよ






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