第65話 朝ご飯
翌朝、目が覚めると隣でピピが寝息を立てていた。昨日はみんなほどほどにお酒を飲んでいた、俺も少しだけ飲んだ。
いい目覚めだ、布団が柔らかい事もあるが、ほろ酔いだったからな。顔を洗いに外にある井戸へ行き、冷たい水で顔を洗う、一気に目が覚める。
「おはようさん、ジロー」
不意に声を掛けられた、バンガード殿だった。
「おはようございます、バンガード殿、早いですね、鍛錬ですか」
「いや、そう言う訳じゃねえ、いつもこのぐらいの時間に起きるんだよ、見習い騎士からの癖ってやつだな」
「そうでしたか、そう言えば俺達と出会う前に任務中だと仰っていましたね、どんな任務なんですか?」
「な~に、大した事じゃねえよ、ただの街道警備さ、ドコス家からの命令ってのが気に食わないがな」
「と、言う事はドコス家の発言力は騎士にも及んでいるって事でしょうか」
「いや、そう言う訳じゃねえよ、騎士達はみな陛下に忠誠を誓っている、間違ってもドコス家の為じゃねえ」
だけどドコス家の命令でバンガード殿は街道警備任務をしていたわけだしな。ドコス家の力ってのはどこまで広がっているんだ。王宮内まで及んでいるのは間違いないだろうし、フレデリック王子も大変だな。
まあ、俺達は王子をムサイの街まで無事に送り届けて、後の事はアレキ・サンドリア伯爵に任せるしかないよな。
俺達は冒険者だからな。
「おはようございます、お早いですねえ」
「これは町長さん、おはようございます」
「もうすぐ朝食の準備が出来ますよ」
「それは、ありがとうございます」
町長さんも顔を洗いに井戸に来ていた。
「昨日の騒ぎで負傷した人はいませんか、俺は回復薬を少し持っています」
「それには及びません、ウチの方でも備蓄はありますから。お心遣いだけで十分です」
「そうですか」
コムサイの町をぐるりと見回してみる、牧歌的なのんびりしたのどかな村だ。放牧もしているようで、朝早くから農家から動物の鳴き声がそこかしこから聞こえてくる。
昨日戦場になった穀倉地帯も焼けたのは少しだけだった様だ。そうしていると朝食の準備が出来たらしい、イイ匂いが漂ってきた。
「バンガード殿、そろそろ朝ごはんとしましょうか」
「ああ、わかったぜ」
町長の家に入って広間の座布団に座っていると、みんな起きてきた。
「おはよ~、ジローさん早いねえ」
「おはようございますルビーさん」
「ふあ~、よく寝た。ジロー、おはよ」
「おはよう、サーシャ」
「おはようございます、ジローさん」
「おはよう、ファンナ」
「う~ん気持ちのいい朝ね」
「左様でございますな、お嬢様」
「エミリーさん、ギャリソンさん、おはようございます」
「おはよう」
「おはようございます、ジロー様」
「・・・まだねむい」
「ピピ、おはよ」
「・・・あさごはん」
どんな挨拶だ。
「みなさん、朝食が出来ましたよ」
おぼんの上に幾つかの料理が乗っている、お手伝いさん達が次々と部屋に入ってきてみんなの前に朝ごはんを置いていく。これはうまそうだ。パンにスープ、サラダにベーコンエッグ、ミルクも付いている。
「この様な物しかございませんが、どうか召し上がって下さい」
「とんでもない、十分豪盛な朝食ですよ。それでは、いただきます」
「「「「「 いただきます 」」」」」
ああ、温かい朝ごはん。おいしい、眠気がすっ飛ぶ。みんなは眠気眼で朝食を食べていた、ピピは相変わらずさくらんぼだ。
うまい朝ごはんはあっと言う間に完食してしまった。
「「「「「 ごちそうさまでした 」」」」」
食後、まったり過ごしていると町長さんから話掛けられた。
「やはり、行ってしまわれるのですか」
「ええ、すいません町長さん、俺達にはやる事があるのです」
「そうですか、いや、無理に引き止めるつもりはありません」
「ここまでして頂いて申し訳ないです」
「いえいえ、警備隊が引き上げてからは、村の若い衆頼みなのが現状なのはどこの町や村も一緒ですから」
ここで、サーシャが話に入って来た。
「冒険者を雇うって訳にはいかないの」
「はい、そのような余裕はありません」
ルビーさんも参加した。
「ザンジバルの国王様に嘆願してみるってのは」
「王様は今現在病に臥せっておられますので」
「代わりのヤツじゃ駄目ってわけかい」
「ええ、まあ・・・」
ここまで沈黙を続けていたランディウスが、ふいに口を開いた。
「うまくは言えないんですけど・・・」
「・・・ランディウス?」
「きっと良くなる様になると思いたいですね」
「・・・そうだな」
朝食を食べ終わり、まったり過ごしていると、馬車の準備が整った。そろそろ出発する頃合だ、ギャリソンさんが御者台に座り手綱を握る。俺達も馬車に乗り込み、椅子に座る。バンガード殿は馬に跨り、俺達の乗った馬車の護衛に付く。
「皆様、準備の方は宜しいでしょうか、そろそろ出発致します」
「みなさん、この村を救っていただきありがとうございました、道中お気を付けて」
「はい、町長さんもあまりご無理をなさらない様に」
「ギャリソン、準備できたわ」
「はい、お嬢様、それでは出発致します」
俺達を乗せた馬車はコムサイの町を後にする。
次の目的地はムサイの街だ、そこにアレキ・サンドリア伯爵がいるだろう。まずは伯爵に会えるのか心配だけど、行ってみなければわからない。
おじさん、旅慣れてきたのかな
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