第4章
第61話 王子の話
俺とルビーさん、サーシャとファンナ、エミリーとギャリソンさん、それと妖精のピピで、ランディウス改めフレデリック王子の話を聞く事にした。まだ頭の中が混乱しているけど、よく今までランディウスとしてやっていけたなと思う。だって、暗殺されちゃったって聞いたからね。普通わからないでしょ。
そんなわけで、俺達は妖精の森で秘密のお茶会をしている。当然、誰にも聞かれてはいけない話だ。王子という立場がある、それに顔を隠していたって事はまだ身の危険を感じているって事だろう。その辺りの事も含めて話合わないと。
「さて、何からお話いたしましょうか」
フレデリック王子はみなに向け、切り出した。
「まず、どうして生きているのかって所から聞こうじゃないか」
「そうね、噂だと暗殺されたって聞いたわよね」
最初に質問したのはルビーさんとサーシャだ。
「はい、事実です。もっとも、未遂ですけどね」
「つまり、暗殺されそうになったって事は本当なんだね」
「はい、殺されそうになりました」
次いで、ファンナが聞いた。
「どうやって切り抜けたんですか」
「私が暗殺されそうになった時、偶然通りかかった盗賊ギルドの人に助けてもらいました」
「盗賊ギルド?」
「はい、確か名前はスカーレットと言う名前だったと思いますけど」
その名を聞いて、俺は思い当たる節があった。
「え! スカーレットさんですか」
「ええ、それで、このままではいずれ暗殺の手が厳しくなると言って、隣の国であるバーミンカム王国の副都市マゼランに落ち延びさせてもらいました」
「なるほど、スカーレットさんに・・・」
ルビーさんが更に聞く。
「そもそも、何で暗殺されそうになったんだい」
「その事なのですが、父上、国王が病に倒れた時、薬を渡す者が毒と摩り替える所を偶然目撃したのです。その事で摩り替えた者を問い詰めたところ、その者はドコス家の手の者だとわかったのです」
「ドコス家、つまりギア・ドコス伯爵の手の者って事かい」
「はい、そこからですね。私に暗殺の手が忍び寄って来たのは、間違いなくドコス家は何かを企んでいます」
そこでサーシャが思い当たる事を聞いた。
「そう言えば王様の手紙が見つかったんじゃなかったっけ」
「ああ、そう言やあ、確かローゼンシル姫と結婚した夫が玉座に座るとかなんとか」
フレデリックは落ち着いて質問に答えた。
「それもおそらく、企みの一つだと思います」
「どう言う事ですか」
「父上はいつも言っていました、後を継ぐのはお前だ、しっかり学べ、と・・・」
「なるほど、次期国王はフレデリック王子にと考えていた様ですね」
「当時の私はまだ成人しておりませんでした、しかし今は」
フレデリックの思いに、ルビーさんが想像したようだ。
「成人するまで身を隠していたって訳だね」
「はい、もう成人したので王位に就けます」
「それであたい等にザンジバル王国まで一緒に付いて来たって訳かい」
「騙す様で本当に申し訳ありませんでした」
「別にいいさ、身分を隠しとかなきゃいけなかったって訳だろ、気にしてないよ」
なるほどな、王子様といってもいろいろ立場とかあったんだろうな。
そして、これからの事をルビーさんがたずねる。
「それで、王子様、これからどうするんだい、いや、どうしたいんだい」
「そうですね、まずはサンドリア家と接触したいと考えています」
俺も話を聞いて、確認の為、聞いてみた。
「サンドリア家ですか、確か王子の後ろ盾でしたよね」
「ええ、サンドリア家ならば、力になってくれると思います」
「すみません、そのサンドリア家と言うのは信用出来るのですか」
「ええ、代々王族に仕えている名家ですよ、安心して下さい」
サーシャも話に加わる。
「それにサンドリア家とドコス家って仲が相当悪いって話だったじゃない」
「おっしゃる通りです、王族としては無力を晒している様で心苦しい限りですけどね」
「それじゃあ、サンドリア家が治めている領地まで王子を護衛してって事になりますかね」
俺の意見にルビーさんも賛同してくれた。
「今でも狙われていると考えた方がいいだろうね、王子、悪いけどこれまで通り顔を隠しといた方がいいよ、名前もランディウスのままでいこう」
「わかりました」
「それと、一つだけ言っとくよ、あたい等は冒険者だ、クーデターとか内戦とかは加担しないよ、いいね」
「はい、道中の護衛だけで十分です、宜しくお願いします」
ここまで話を聞いていたエミリーが、声を上げた。
「話は決まったみたいね、当然私も行くわよ」
「エミリーさん、凄く危険かもしれないんですよ、あなたは帰るべきです」
「いやよ、私も行くのよ」
「お嬢様、あまり我侭をおっしゃらないで下さい、わたくしめと共にマゼランへ帰りましょう」
「ギャリソンもくればいいのよ、私の護衛として」
「お嬢様・・・」
「私だって、何かの役に立つかもしれないじゃない、私も一緒に行くわ」
エミリーの申し出にサーシャが俺に聞いて来た。
「どうする、ジロー、この子一応貴族のご息女だけど」
「そうですねえ、・・・」
「あの~」
ここでファンナがおそるおそる挙手をした。
「どうしました、ファンナ」
「そのアレキ・サンドリア伯爵と言う人にお会いになられるんだとしたら、私達冒険者が行ってもお会いになってくれないかもしれませんよ、ここはいっそ伯爵令嬢のエミリエルさんに同行して貰うっていうのはどうでしょうか」
ふむ、確かに。俺達冒険者が突然訪ねた所で会ってはくれないだろうな。
「エミリーさん、いえ、エミリエルお嬢様、俺達と一緒に来て下さいませんか」
「ジロー様、あまりご無理は・・・」
「わかっていますギャリソンさん、ランディウスの護衛とエミリエルお嬢様の護衛。出来うる限りやってみせます、俺達が行くのはサンドリア家が治める領地までです、そこから先はアレキ・サンドリア伯爵に任せましょう」
「わかりました、わたくしめがお嬢様をお守り致します、しかし、あまりご無理をさせないで下さいませ」
「はい、わかりました」
話が纏まり、ルビーさんが次の行動方針を伝えた。
「それじゃあまずは、ここから南にあるサンドリア家の領地の町、コムサイの町まで行こうかねえ」
「どれぐらいの距離ですか」
「ここからだと、馬車で1日って所かねえ」
「意外と近いですね」
「まあ、サンドリア領はこのすぐ近くだからねえ」
「それじゃあ、行きますか」
こうして俺達は妖精の森を後にした。霧の森もモンスターはあまり出てこなかった。目指すはコムサイの町だ。
おじさんやっぱりついていけないよ
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