第60話 妖精の森




 俺達はようやく霧の森を抜けた。


目の前にはお花畑の様に色とりどりの花が咲きほこっている、空気も何故だか澄んでいる様だ。花畑の中央に泉があって透明度の高い水が張られている。その泉の真ん中に大きな大木が一本ある、まさか世界樹じゃないよな。その緑豊かな自然な感じなのが妖精の森なのかもしれんな。


そんな中で、とても似つかわしくないのがいる。ゴブリンだ。20匹ぐらいいる、そして1匹だけ大きなゴブリンがいた。成人男性なみの身長に筋肉が逞しくついている、皮鎧と曲刀のシミターで武装している。


おそらくどこかの冒険者から奪った物だろう。あれはホブゴブリンだ。おそらくあのホブゴブリンが群れのリーダーだろう、ホブゴブリンに率いられたゴブリンの集団だ。なるほど、奴等に妖精の森を奪われてた訳か。確かにこれはモンスター被害だ。ゴブリン共は妖精の森で草や花を引っこ抜いていたり、捕まえた妖精にいたずらしたりと、やりたい放題している。


ピピ以外の他の妖精の姿は見られない、ピピが言うにはどこかに隠れているらしいが。


「ピピ、ここが妖精の森かい」


「・・・うん」


ルビーさん達が一息つく。


「ようやく到着だねえ」


「だけど、早速戦闘になりそうよ」


エミリーがモンスターの集団を指差して言った。


「あれって、ゴブリン・・・よね」


「そうです、ホブゴブリンに率いられたゴブリンの集団ですね」


ファンナも気付いて意見を述べた。


「まだこちらに気づいていない様ですが」


「そうです、チャンスですね」


「・・・あいつら・・・もりをあらしてる・・・ゆるせない」


「そうです、ピピ、やってしまいましょうか」


「・・・おねがい」


ルビーさんが俺に聞いて来た。


「ジローさん、作戦は」


「そうですね、前衛は俺とファンナ、中衛はサーシャとランディウス、後衛はルビーさんとエミリーとギャリソンさん、ピピは隠れてて、まずルビーさんの魔法で攻撃、サーシャの弓でホブゴブリンに集中攻撃、あとはゴブリンの相手、ってな感じでどうです」


「あいよ」


「わかったわ」


「はい」


「任せなさい」


「畏まりました」


「わかりました」


「それじゃあ、行きますか」


俺達はゴブリンに近づく、さすがに気付いたみたいだ。ゴブリン共が騒ぎだした。


「ルビーさん、お願いします」


「あいよ、・・・いくよ! 氷結の嵐よ! 《アイスストーム》!」


「「「「 ギギャァァ・・・ 」」」」


なんと!ルビーさんの魔法攻撃だけでほとんどのゴブリンを倒してしまった。残ったのは2匹のゴブリンとホブゴブリンだけだ。


「グガァ!」


ホブゴブリンが叫ぶ、残りのゴブリンがこちらに向かって襲い掛かってきた。


「えい!」


ファンナのショートソードによる攻撃でゴブリンを1匹倒す。


「それ!」


俺の攻撃で残りのゴブリンを倒す。


「あとはホブゴブリンだけだね」


するとホブゴブリンに動きがあった、なんとこっちに向かってくると思っていたが一目散に逃げ出した。


「え?逃げるの・・・」


「サーシャ! ホブが逃げるよ!」


「任せて!」


サーシャが弓に矢をつがえる、ホブゴブリンを狙っている。


「私はね、外したくないの、・・・そこ! 狙ったわよ!」


サーシャの放った矢が真っ直ぐ飛んでいき300メートルほど離れた逃げるホブゴブリンの頭を穿った。


ホブゴブリンはドサリと倒れる。


辺りには静けさが残った。



「言ったでしょ・・・狙ったって・・・」



妖精の森は澄んだ空気をしていた。



{シナリオをクリアしました}

{経験点500点獲得}

{シークレットシナリオをクリアしました}

{10BP獲得  1SP獲得}



お、いつもの女性の声が聞こえた。


ふう~、どうやら終わったみたいだ。妖精の森のモンスター討伐依頼、無事に達成だ。


「みなさん、お疲れ様でした」


「どうやら終わったみたいだねえ」


「なによ、わたしの出番なしなの」


「お嬢様、あまりご無理をしてはいけませんよ」


ランディウスも臨戦態勢から通常態勢に移行して人心地付いている。


「これで終わりなのですか、よかったですね」


「ええ、無事、依頼達成です」


空気がうまい、心地よい風が吹いている。


暫くして、ピピの元に他の妖精達が姿をみせてきた。どうやら妖精達も無事の様だ。


「・・・ジロー」


ピピが俺の顔の近くまで飛んできた。と、思ったらほっぺにちゅーしてきた。


「ピ、ピピ?!」


「・・・えへへ」


お礼、なのかな?・・・悪い気はしない。


報酬が妖精からのキスか・・・悪くない。


依頼達成の余韻に浸っていると、ランディウスが畏まった様子で俺達に声を掛ける。


「みなさん、実はお願いがあるのですが・・・」


「どうしました、ランディウスさん」


「僕が実家に帰るのを手伝ってほしいのですが」


「ああ、そう言えばご実家がこの国の王都にあるんでしたね」


「ええ、・・・まあ、そうなのですが・・・」


するとランディウスさんは顔の口元の布を外した。


「僕は・・・いえ、私はランディウスではありません」


「へ?」



「私の名はフレデリック、・・・フレデリック・ザンジバルと申します」



・・・・・・はい?


「「「「 フレデリック王子!? 」」」」


みんなが一斉に声を上げる。


え?・・・ちょっと待って・・・フレデリック王子って暗殺されちゃったんだよね。


なんでここに?




おじさんまったくついていけないよ




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