第38話 バルト要塞奪還作戦 ①




 夜、バルト要塞へ向かう俺達は、静かに行動していた。


バルト要塞は北側にある迷いの森を監視するために建てられた要塞だ。モンスターはこの迷いの森から南にある草原やサラミスの街にまでやって来る事がある。それを食い止めるのがバルト要塞の役目になっている。


今、そのバルト要塞がオークやゴブリンによって占拠されてている。


おまけに女性冒険者までもが囚われているのだ、その中にルビーさん達がいるかもしれない。


気持ちばかり焦ってしまう、早く救出しないと。


バルト要塞のすぐ側まで来た、サリー王女様が静かに号令を出す。


「・・・第二軍、行動開始・・・」


弓使いからなる第二軍がバルト要塞に静かに突入する。


第一軍と俺とファンナがいる第三軍はこのまま待機だ。静かに時間だけが過ぎていく、待っているだけでも緊張する。うまくいきますように。


「緊張しますね、ジローさん」


「そうですね、ファンナは俺の後ろで援護してくれればいいから」


「は、はい」


しばらくして、城壁制圧の合図である灯りが城壁上から灯った。どうやら城壁を制圧したみたいだ。


凄いな、ほとんど物音がしなかった。腕のいい冒険者がいるもんだ。


そして、灯りが点滅するような合図が来た。閃光の矢を使う合図だ。第一軍に緊張が走る、サリー王女様が腕を上げる。


「第一軍! 突撃いいー!!」


「「「「「 おおおおおーーーーー!!! 」」」」」


第一軍が要塞内に怒涛どとうの勢いで突入していく、それと同時にモンスターの近くで閃光が光る。バルト要塞内が一気に眩い光に包まれて明るくなる。


よし、目晦まし成功だ。モンスター達はひるんでいる。中にはオークがゴブリンを棍棒で攻撃しているヤツもいる。


「第一軍! ブイ字陣形!」


メディオン殿が指示を出して第一軍が陣形を整える。


ブイ字陣形は見事にモンスター達を次々と倒していく、同時に第三軍も要塞内に突入する。俺とファンナもバルト要塞に突入する、目指すは建物の入り口だ。


「ファンナ、俺からあまり離れるなよ!」


「はい!」


第三軍の冒険者達が次々と4か所ある建物内に突入していく。俺とファンナも建物内に突入した。


目の前にゴブリンが4体、進みながら倒していく、ファンナはまだ剣士のままだ。


さらに進む、またゴブリンだ、多いなさすがに。6体か。


「ファンナ、左の3体を頼めるか」


「はい!」


右の3体のゴブリンを攻撃する、ショートアックスを左右に振って蹴散らす。ファンナの方も無難に倒している様だ。


それにしてもショートアックス一撃で倒せる様になった。この世界に来た時は戦闘なんて無理だと思っていたけど、ルビーさん達を助けたい一心で体が動く。今でも怖いは怖いのだが、不思議と動ける。レベルが上がったおかげかな。


少し進んで曲がり角にオークがいた。盾を構えて近づく、オークも臨戦態勢だ。


「ファンナ、下がって」


オークの槍が襲ってくる、鉄の盾でしっかりとガードする。


ダメージなし。よし、カウンターでショートアックスを振る。


「ブヒッ」


オークにかなりのダメージを与えた。だが一撃という訳には行かない。


オークが怒りに任せて槍を振り回す。


連続バックステップで確実に避ける。


大丈夫だ、まだ疲れていない。やれる。


一気に一歩踏み込んで接敵する。


オークの槍をかわしながら一気に踏み込む。


オークの頭に渾身の力を込めてショートアックスを振り下ろす。


「ブヒィィー・・・」


オークがどさりと倒れる。そのまま動かない。


「ふうー、倒したか」


「凄い、オークを2撃で倒すなんて」


「ファンナ、このまま先を急ごう」


「はい」


俺とファンナは先に進む。


通路の途中に扉がある、ゆっくりと開けて室内を確認する。


「ゴブリン4、オーク1」


「ど、どうしますか」


「制圧が目的でもあるから、倒さないと」


「そうですね、行きましょう」


「ファンナ、フォーメーション2だ」


「え? フォーメーション?」


しまった、ついゲーム用語を言ってしまった。


「俺が敵を引き付けるから、ファンナは後ろに回り込んで挟み撃ちの位置取りをするんだよ」


「わ、解りました。何とかやってみます」


「無理だけはしない事、いいね」


「はい」


「いくよ、3・2・1・今だ!」


扉を勢いよく開けて室内に突入する。


急いで位置取りをする、目の前のゴブリンを一撃で倒す。


「さあ! こい!」


盾を構えて俺に注意が向く様に前に出る。


その隙にファンナがモンスター達の後ろへと回り込む。


「えい!」


ファンナがゴブリンを攻撃、ゴブリンはかなりのダメージを受けている様だ。


「ファンナはゴブリンを!」


「はい!」


オークの目の前まで行き攻撃する。


よし、俺に注意が向けられた。


後ろに回り込んだファンナはゴブリンとの戦闘を危なげなくこなしている。


ゴブリンはファンナに任せてもよさそうだ。


「ブヒ!」


おっとあぶない、よそ見できないな。


オークの攻撃を盾で防ぐ、盾熟練のスキルのおかげだな。


カウンターで反撃する。


「ブモッ」


「すまんな」


オークの頭にクリティカルヒットした。オークを一撃で倒した。


力が上がっているせいなのか、ストレングスのスキルのお陰なのかよくわからん。


続けざまにゴブリンの相手をする。


ファンナと挟み撃ちの位置取りになって戦い易い。


ファンナもゴブリンを2体相手取ってやすやすと避けている。凄いな。


ゴブリンを攻撃して一撃で倒す。残り2体。


ファンナもショートソードを振り下ろしてゴブリンの1体を倒した。


「ファンナ!」


「ジローさん!」


二人同時にゴブリンを攻撃してゴブリンを倒す。


「ジローさん、今のがふぉーめーしょん2なんですね!」


「え? ええ、まあ・・・」


室内を制圧した俺とファンナは室内を隅々まで調べる。


そこで、あるものを発見した。


「こ、これは、ルビーさんの魔法の杖とサーシャの弓と矢筒だ!」


「え! ジローさんのお知り合いの方の物ですか!」


「はい、間違いなく!」


と、言う事はこの建物のどこかにルビーさん達がいるって事なのか。


「ファンナ! 行こう!」


「はい!」


俺とファンナはルビーさん達の装備を持って部屋を出た。どこにいるんだ、ルビーさん、サーシャ。俺達は建物内を走る、必ず見つけてみせる。待っていてください、二人とも。




おじさん、ちょっと本気だよ







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