第37話 作戦会議




 俺は指揮官用テントの前に来た、これからある作戦を説明したいのだが。その前にスグ男爵が王都からの伝言を今の司令官に伝えるみたいだ。


「失礼します、指揮官殿、わしはスグ・オール男爵と言う、一応王都バーミンカムから来たのだが・・・」


「初めまして、自分はメディオン・クールです、今は司令代理をさせていただいております」


「メディオン殿、わしの持って来た商品は役に立ちそうですかな」


「ええ、それはもう、ありがとうございますスグ・オール男爵」


「な~に、わしはただ商売をしているだけですよ」


「それでも助かります」


サリー王女がスグ男爵に問いただした。


「それで、スグ男爵、お父様は何と?」


「は! サリー王女殿下、それが・・・援軍が到着するには二週間かかるそうです」


「二週間!? そんなに長くここは持ちませんよ!」


「マゼランの都からの増援はどうなのじゃ」


「ここに来る途中マゼランの都に寄りましたが、マゼランの都は防衛の為、兵は出せないそうです」


「何じゃと! ミレーヌ伯め、ここを見捨てるつもりか!」


「騎士グレン、落ち着きなさい、それでスグ男爵、貴方は何故ここへ」


「はい、国王陛下より男爵の爵位を維持したくば、バルト要塞を何とかせよ、と仰られまして、それでここまで自分なりに必要な物を用意し、やって来たという次第であります」


「そうですか、よくやりました、ご苦労様です」


「は! 勿体無きお言葉」


スグ男爵の伝えたい事は伝えられたようだ。よくここまで短期間で揃えたもんだ、これも商人としてのスグ男爵の手腕なのか。豪商とはよく言ったものだ。


「何はともあれ、これで前線は支えられます、何とか持たせて見せますよ」


「いえ、メディオン殿、それではいけません」


「ジロー殿?、何かあるのか」


「騎士グレン、冒険者が捕まっているのです、早く救出しませんと」


「そうじゃった! ルビー嬢達が囚われておったわい!」


「すぐにでもルビーお姉様達を助けに参りたい所ですわ!」


「囚われた冒険者の中にサリー王女殿下のお知り合いがいるのですか!」


「そうなのですメディオン、すぐに参りましょう!」


「お、お待ちを、サリー王女様、何の策も無しに突撃するのはいけません」


「ジローさんは心配じゃありませんの!」


「勿論心配ですよ、だからこそ慎重に事を運ぶべきかと」


「ジロー殿、何か作戦があるのじゃな」


「作戦があるのですか、自分は前線の維持だけで精一杯で、とてもそれ以上の事は考えられなくて」


「さ、作戦と言うほどの物ではないのですが」


「聞かせてください、ジローさん!」


さて、俺の作戦は通用するかな? 兎に角、説明しよう。


「は、はい、まず軍を3つに分けます」


「なんじゃと? ただでさえ少ない戦力をさらに3つに分けるじゃと」


「キッチリ3等分にしなくてもいいんです、まず王国軍を主軸とした第一軍、これはサリー王女様が総指揮を執ります」


「え、わたくしが? 指揮など執った事などありませんが・・・」


「いえ、直接の指揮はメディオン殿に執ってもらいます。サリー王女様は旗頭として居るだけで良いのです」


「前線に出るのは構いませんが、わたくしに総指揮が務まるでしょうか」


「大丈夫です、王族が前線に居るだけで軍全体の士気は高まります」


「ワシは引き続きサリー王女様の護衛じゃな」


「そうです、そして第二軍に弓使アーチャーいを主軸とした隠密行動に長けた盗賊シーフと革鎧などで武装した軽戦士からなる隠密行動部隊を編成します」


「音を出さない部隊じゃな」


「そうです、第二軍はまず真っ先に城壁を制圧します」


「城壁が先か、ふ~む」


「最後に第三軍ですが、これは冒険者からなる遊撃隊を編成します、冒険者は4~6人パーティーで構成されていますから各パーティーリーダーが臨機応変に判断してもらいます」


「冒険者のみじゃな」


「ええ、第三軍には要塞内の各建物内を捜索し人質を救出し、建物内を制圧します」


メディオン殿が、この先の話を聞いて来た。


「第一軍はいいとして、二軍と三軍は誰が指揮を執るのですか」


「第二軍は弓に最も長けた者が指揮を執ります。第三軍は指揮官は必要ありません、冒険者の各パーティーリーダーがそれぞれのパーティーに指示を出しますから」


「ふむ、それでジロー殿、具体的にはどうするのじゃ」


「時間が惜しいですからね、今夜決行しましょう」


「え、今夜? 確かゴブリンは夜目が利くと聞いたことがありますけれど」


「ええ、そこでこの閃光の矢の出番です、これはライトの魔法が封じられている矢なのですが、これを第二軍に渡します」


弓使アーチャーいに閃光の矢か」


「はい、まず第二軍が先行して隠密行動で城壁を制圧します」


「第二軍を先行させるのですね」


「はいサリー様、城壁制圧後、要塞中央に密集しているオークやゴブリンに閃光の矢を使います」


「まあ、さぞかし眩しいでしょうね」


「第二軍でオーク共に目晦ましをした後、サリー様率いる第一軍を要塞内に突入させます、この時V字型の陣形でオークを半包囲します、こちらからは仕掛けず、近寄って来たオーク共を攻撃します」


「まあ、さぞかし慌てるでしょうね」


「引き続き第三軍が要塞内の各建物を制圧するため、遊撃します」


「ルビーお姉様達を助けねばなりませんね」


「俺とファンナは第三軍に・・・いいかな、ファンナ」


「は、はい、私でお役に立てるなら」


「そして、人質救出後、完全制圧しバルト要塞を奪還します」


俺の作戦説明に、騎士グレンが驚きを隠さず聞いて来た。


「・・・・・・ジロー殿、お主は一体・・・」


俺の作戦がうまくいくかはわからない。けど、何もしないよりいいと思っただけだ。どうなるかはやってみないと解らない。


「それでは、自分が各隊に説明します、よろしいですかジロー殿」


「はい、よろしくお願いしますメディオン殿」


「では、」


どうなるかはホントやってみないと解らない。俺の作戦なんてゲーム、「ラングサーガ」で使っていた戦略を説明しただけだ。


だけど、ルビーさんやサーシャ、他の囚われた冒険者も心配だ。


作戦は今夜、うまくいきますように。




おじさんはただ祈る事しかできないよ









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る