第18話 薬草採取
俺とサーシャさんはサラミスの街を出て草原を北東に歩いていた。
薬草採取のクエストをこなして経験を積もうと言う訳だ、北東にある森に向かっている。
ただ歩くだけなのも退屈なので、会話しながら移動していた。
「へ~、じゃあ今までずっと旅をしてきたの」
「いいえ、ずっとではないですが、ほんの少し旅をしただけです」
つい最近この異世界に転移してきたばかりなのだ。
「それでもファイターなんでしょ、何処で経験を」
「それもつい最近です」
「え、そうなの」
「ええ、」
「ふ~ん」
あまりこちらの事ばかり話しても、いつかボロがでるかもしれない。ここで話を切り替えるか。
「サーシャさんはどうして冒険者を」
「私も旅を色々してきたの、それで流れ着いたのがサラミスの街って訳」
「そうなんですか、アトラス金貨の事に詳しいので、てっきり古代の遺産を探しているのかと思ってました」
「それもあるけど、それはエルフが、っと言うより私がそう思っているだけなんだけどね」
「サーシャさんがですか」
「長く生きているといろいろあるのよ、色々」
ふむ、色々か。
「そう言えばサーシャさんっていくつなんですか」
エルフと言えば長寿で有名だ。
「なーにー、女性の歳を聞くの・・・いいけど、130歳位よ」
やはり長寿だったか、130歳には見えない若さがある。見た目が精々20歳前後といったところか。
「130歳ですか、流石エルフですね」
「そんな事ないわよ、300歳を超えると老いを感じるって言うし」
「そうなんですか、いつまでも若いままだと思ってました」
「ジローさんが言っているのはハイエルフの事ね、あれは別よ、ハーフエルフだって150で老いを感じるらしいもの」
「そうだったんですね、知りませんでした」
「ルビーと会ったのも10年くらい前だったわね、まだルビーが駆け出しだった頃よ」
「ゲイルさんに聞きましたが、どうしてパーティーを解散したんですか」
「・・・ラルドって男がいたの・・・」
いたの、・・・過去形か。
「すいません、変な事聞きましたね」
冒険者なんだ、危険が今まで無かった訳ない。ラルドって人はもう・・・
「私たちを捨てて田舎で奴隷の女と暮らしているわ」
「そっちかい」
「さあ、着いたわよ。北東の森」
「あ、はい」
いつの間に着いたんだ、森を見るとうっすらと暗い、所々日の光が照らされて明るい所もあるが。そんなに大きい森ではない様だ、奥の方にまた草原が見える。
「ここに薬草が群生しているとこがあるのよ」
「解りました」
「それからジローさん、ここからは魔物が出やすいから気を付けて」
「はい、戦闘になったらどうします」
「私は弓使いよ、ジローさんが前に出て」
「解りました」
まあ、当然だな、戦士の俺が前衛で弓使いが後衛なのは。
「ねえ、ジローさん」
「なんですか、サーシャさん」
「そのさん付け、やめにしない、戦闘になると面倒だわ。サーシャでいいわよ」
「じゃあ俺もジローでいいですよ」
「解ったわ、ジロー」
「それじゃあ行こうか、サーシャ」
俺達は森の中を歩いて行く、薬草が生えている場所までサーシャの案内だ。モンスターが出るかもと思うとびくびくしてしまう、ビビりだからな俺。
「あったわ、薬草よ。だけど・・・」
「ええ、モンスターですね」
薬草が群生している近くでデカい猪が木の実を食べている。あれはビックボアだ、ゲーム、「ラングサーガ」にも登場したヤツだ。割と序盤に出てくるモンスターだったな。
「ビックボアね、仕留めましょう。ビックボアは高く売れるの」
「解りました、作戦は」
「私の弓で戦闘開始、ジローは前に出て足止め、とどめは私」
「解った」
「それじゃあ、いくわよ!」
離れた所からサーシャが弓を引き絞り、ビックボアに狙いをつけて狙撃した。
俺は前衛の位置取りをする。
「ピギー」
サーシャの矢が当たる。
まだビックボアは動いている。
ビックボアが俺に向けて走って来た。
俺は鉄の盾を構える。
ドゴンッ
ビックボアの体当たりを鉄の盾で受け止める。
ダメージは・・・無し、よし。
流石新調した装備だ、おやっさんの目利きは確かだ。
もう一度ビックボアが向かってくる。
盾を構える、衝撃がくる。が、それだけだ。
通り過ぎざまにショートアックスを振り下ろす。
「ピギー」
やった、当たった、しかもかなりのダメージを与えた様だ。
ストレングスのスキルのおかげだろう、ビックボアはかなり弱っている。
「ジロー、動かないで」
サーシャの声に俺は盾を構えて待機する。
「そこ、狙ったわよ!」
俺の横をサーシャの放った矢が通り過ぎる。
「ピギーィ・・・」
ビックボアの額にサーシャの放った矢が刺さっていた。ビックボアはピクリとも動かない。
「ふう~、やったわね」
「流石スナイパー、頼りになる」
「でしょ」
{経験点30点獲得}
お、どうやら経験点を得た様だ、サーシャがとどめを刺したけど俺に経験点が入るのか。臨時とは言え一応パーティーを組んでいるからなのか。
よくわからん、攻略本が欲しい。
「それじゃあ私はビックボアを解体するから、ジローは薬草採取ね」
「え、サーシャ解体なんて出来るの」
「言ったでしょ、色々旅をしてきたって」
すごいな、俺なんてそんな事したこともないよ。言われたように薬草採取に向かう、スキル、アイテムの一覧があるから薬草の選別が楽だ。
5束ほど薬草を採取する、サーシャの方はテキパキと解体をこなしている。30分後、全ての作業を終えて俺達はサラミスの街に向けて帰っていく。解体したビックボアは二人で木の棒に吊るして担ぎ上げる。
「あ~疲れた、ジローは初仕事どうだった」
「そうですね、疲れました」
「それにしては随分と動けてたじゃない」
そうか? 自分では分からないけどな、そういや戦闘中あまり疲れなかったな。
体力3のおかげか、最初は1だったもんな。
何はともあれ、これで依頼はこなせた。
おじさんほっとしたよ
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