第17話 ルビーさんへのプレゼント





 肉串を買って食べ歩きながら冒険者ギルドへ向かう。冒険者ギルドに着いて中に入ると、ルビーさんとサーシャさんが酒場側の椅子に座って話していた。ルビーさんは相変わらずワインの様な葡萄(ぶどう)酒を飲んでいる。サーシャさんは水だろうか、二人でガールズトークでもしているのかな。


「こんにちは、ルビーさんサーシャさん」


「ジローさんかい、買い物は・・・済んだようだね、・・・あれ?」


「どうしましたか」


「なんだろうねえ、ジローさんが急に逞しく見えるんだけど、酔ったのかねえ」


「たぶん気のせいですよ、そんなことより肉串をいっぱい買ってきたんで一緒に食べませんか」


「おや、いいのかい。そういやもうすぐ昼だねえ」


サーシャさんも肉串を見て、お腹を鳴らしていた。


「私も食べていいジローさん、朝から何も食べてなくて」


「勿論いいですよ、サーシャさんもどうぞ」


「ありがと」


テーブルの上に肉串を置いて、包み紙を広げる。


「「「 いただきます 」」」


旨そうな匂いが辺りに広がる、肉串を1本持って齧り付く。ルビーさんも肉串を1本手にもって食べ始める。サーシャさんは一度に3本持って齧り付いている。


三人であっという間に平らげる、サーシャさんは10本食べてた、その華奢な体のどこに入っていくんだ?


「ふう~食べた食べた、ごちそうさま」


「サーシャ、相変わらず遠慮がないねえ」


「ルビーこそ、なに気取って葡萄酒なんて飲んでるのよ」


「臨時収入が入ったからねえ、ねえジローさん」


食後のまったりした時間が流れている。お腹もいっぱいになり、話も弾む。


「そうですね、まさかアトラス金貨が30万Gになるとは思いませんでした」


「ええ! アトラス金貨売っちゃったの、なんでよ」


サーシャさんがアトラス金貨を売った事に対して、質問してきた。それをルビーさんが答える。


「なんでって、あんた二千Gしか出せないって言ってたじゃないか」


「そうじゃなくて、なんで成金貴族なんかに売ったのかって聞いてんの」


「30万Gで買ってくれたからですよ、サーシャさん」


「お金の問題じゃないの、私たちエルフが管理するべきなのよ、特にアトラス金貨みたいな古代の遺産はね、よりによって成金貴族なんかに」


「またその話かい、終わった事をいつまでも、しつこいよサーシャ」


サーシャさんは何か気になる事でもあるのかな。


「何が問題なんですか、サーシャさん」


「詳しくは私も知らないけど、アトラス金貨に込められた魔力を悪用されるかもしれないでしょ」


「アトラス金貨の、・・・魔力ですか・・・」


あれ? なんだろう、何か忘れてるような気が。


まあいいや、思い出せないって事は大した事じゃないよな、きっと。


「それよりルビーさん、ルビーさんに渡したい物があるのですが」


「ん、なんだい」


「これなんですけどね」


そう言ってガーターベルトとストッキングをバックパックから取り出す。


「こ、これは」


「ファンシー&ガーデンって店で手に入れたんですけど。俺には必要無くて」


「え! ファンシー&ガーデンだって、あそこの下着は肌触りがいいんだよ」


「そうなんですか、このガーターベルトとストッキングなんですが」


「あたいにかい、嬉しいよ。丁度足が肌寒いと思ってたとこさ、わーありがとうよジローさん」


ルビーさんはガーターベルトとストッキングを受け取るとその場で立ち上がり、身に着けだした。


ちょ、ルビーさん、見えてる、パンツ見えちゃってますから。


「どうだい、似合うかい」


ルビーさんはポーズを取って、俺達に見た目の感想を聞いて来た。


「ふ~ん、ルビーには合ってるんじゃない」


「そうですね、似合ってますよ」


「そ、そうかい」


っと言うか、露出度の高いローブの上からガーターベルトとストッキングの組み合わせは凄い。何というか、扇情的すぎる。目線が胸とか足にいってしまう。


「いや~、良かったですよ、無駄にならずに」


「どういう事だい」


「ファンシー&ガーデンで買い物したらサービスで貰ったんですよ」


「え? あたいの為に買って来てくれたんじゃなかったのかい」


「いえ、違いますよ。サービスで貰っただけですから」


「・・・そうかい・・・」


ルビーさんは気落ちしているみたいだった。


「あれ~ルビー、元気ないわね」


「・・・うっさい、何でもないよ・・・」


なんかルビーさん元気ない、酒が入っているとコロコロ性格が変わるのかな。女心はよーわからん。


「そ、そうだジローさん、あんた冒険者になったばかりだろ依頼をこなしなよ」


「クエストですか、そうですね」


サーシャさんが言ってきた。


「薬草採取なんてどう、ここから近いし、歩いて1時間くらいかな」


「サーシャ、あんた付いてってやりなよ」


「え、私が、」


「あたいは酒が入ってるからねえ、いいだろ」


「まあ、新人冒険者の面倒を見るのはベテラン冒険者の務めだけどね、ジローさん、私でいい」


「はい、よろしくお願いします、サーシャさん」


「薬草採取の依頼は常に張り出されているから、依頼表は持ってこなくていいのよ」


「そうなんですか」


「サラミスの街から北東に行った所に森があるのよ、そこに薬草が生えているから」


「助かります、サーシャさん」


「じゃあ臨時のパーティーを組みましょうか」


「よろしくお願いします」


サーシャさんが言いながら立ち上がる。俺も椅子から立つ。


「じゃあルビー、行ってくるわね」


「気をつけなよ」


薬草採取のクエストか、冒険者になって初めての依頼だ、慎重にやっていこう。


俺達は冒険者ギルドを出て、街の外へ向けて歩き出した。




おじさん初仕事だよ






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