保護者
「あら、瑠翔くんの負けのようね」
「負けたぁ」
悔しそうに声を出す。
今僕たちはトランプで様々な遊びをしていた。ババ抜きや七並べ、大富豪など。ずっとトランプも飽きそうな気もしたが、変わった親や楽しそうにする井早坂さんを見ていると、思ったよりも飽きずに続けられた。
「フハハハハ! 私が強すぎたようだ!」
お父さんが大笑いしている。
「ポーカーフェイスが上手すぎるのよ」
そう井早坂さんが言うように、お父さんはとても強い。ババ抜きでトランプを引かれる立場のお父さんは、もう心ここにあらずといった感じで表情の取引は全くできない。
だからお父さんは1回もビリになっていないのである。
そうしてトランプを続けていると、あっという間に外は暗くなっていた。
と、そこでお父さんが思ってもいなかったことを良い事を思いついたかのようにサラッと口にした。
「ああ、瑠翔くん。今日泊まっていかないかい」
僕は言葉が出ずに顔だけお父さんに向けた。
そして数秒経ってから少し重くなった口を開けた。
「今日ですか……?」
「今日以外いつがあるんだい!」
井早坂さんに助けを求めたいところだが、今さっきお母さんにどこかに連れて行かれてから戻ってきていない。
ここはどうすれば正解なのか。
明日もイチヨウ学校があるのだが……。
「着替えとか何もないんですけど……」
制服で井早坂さんの家に着ているので、明日の学校には行ける。しかし、部屋着などが一才手にしていない。
「私の服で良ければ貸すけど、それでどうかな」
それなら僕も泊まれる状況なのだが……。井早坂さんがどうか分からない。
と、そこで僕の心を読んだかのようにお父さんが言った。
「安心するといい。
驚いた。まさか井早坂さんがオッケーを出すとは思えなかった。
男子との距離感が近いところはあるが、僕の感覚からすると、異性とのお泊まりは流石にあり得ないだろうと思っていたのだ。
「それほんとですか……?」
このお父さんは少し変わった人だ。もしかしたら嘘を吐いているのかもしれない。疑ってしまい申し訳ない気持ちがあるが、そこは訊いておかなければいけないことだった。
「大丈夫。私は嘘を吐かないからね」
信じていいのだろうか。まあここは信じるしかない。井早坂さんに後で聞けば分かることだ。ここで嘘を吐くメリットがないからな。
「分かりました。じゃあ……お願いします」
僕は断る理由も無いし、まさか井早坂さんがオッケーすると思わなくて少し嬉しい気持ちになっているので泊まることを選択した。
この後、井早坂さんに泊まりオッケーか訊いたら、少し顔を赤らめて恥ずかしそうに「オッケーしたわ」と言っていた。
ちなみに、僕はお泊まりをしたことがない。
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