取引後
取引という形で井早坂さんと遊ぶことになってしまった。遊ぶのは休日。ゆっくり遊びたいという事で放課後遊ぶことにはならなかった。
その休日になるまでの間に、月栄さんが僕の事を嫌っている理由を聞き出すということのなので、まあいいだろう。
そうして休日——僕は井早坂さんのお家に来ていた。
***
今日は親がいると伝えられているので、正直緊張が止まらない。
姫乃さんも変わった親と言っていたので、どんな親なのかはとても気になる。が、変わった親と対面となると、イヤでイヤでしょうがない気持ちになった。
と、思いながら歩みを止めずに歩いていると、井早坂さんの家に着いた。井早坂さんは家の前で待っていたらしく、僕は少し駆け足で向かった。
「ごめん。待った?」
何時に家に行くという待ち合わせ時間は決めていたが、少し早いくらいだ。
「ううん、待ってないわよ」
それが嘘か本当かは知らないが、とりあえず中に促されたので広い庭を歩いて玄関に足を向けた。
「どうぞ」
何かを企んでいるような笑みを浮かべる。何か僕の反応を伺うような目つきだ。
親が待ち伏せでもしているのだろうか。
そう考えながら僕は井早坂家にゆっくりと足を踏み入れた。
と、そこで井早坂さんのお父さんらしき人がひょっこりと影から顔を出してきた。
超絶若くて優しそうな顔を顔をしている。と、そこでお父さんの横からまたひょっこりとお母さんらしき人がジワジワと顔を出してきた。
「……あの人達がお母さん達?」
うんうんと頷き、謎な空気の中面白そうにしている井早坂さん。
挨拶をしてとっとと井早坂さんのお部屋にでも行きたいところだがあまり下手な動きはできない。ここは井早坂さんがリードして誘導して欲しいところだが、当の本人は何も動こうとしていない。
姫乃さんも初めて井早坂さんの親と会った時こんな感じだったのだろうか。頭の中でイメージしてみたが、丁寧にそしてスムーズに挨拶をこなしているイメージしか思い浮かばなかった。だが、心の中では少し困惑をしていたのかもしれない。
とりあえず「お邪魔します」と言って靴を脱ぐ。
「あ、あの、差し入れです……」
僕は行きに買ったお菓子や飲み物類をお母さん達の元へ行きて手渡しで渡す。そして目の前まで行くと——
「君が瑠翔くんだね! カッコいいなじゃないか! なぁハニー!」
「そ、そうね! 浮気していいかしら⁈」
「ダメだ! 私がいるだろう! そ、そそ、それに時雨がいる……」
そこで心ここにあらずな感じで聞いていたが、井早坂さんが大声をあげた。
「お父さん⁈」
そして隣にいたお母さんはお父さんの横腹にパンチを咬ます。
「バカ! あなたって人は!」
「い、痛った! わ、悪かったよ……。 10000万で許してくれ!」
「しょうがないわね」
スムーズにお金を受け取る井早坂さん。
「ご、ごめんなさいね。瑠翔くんよね。時雨がいつもお世話になっているわ。良く話してくれるのよ。瑠翔と遠足の班一緒になったとか、カラオケ行ったとか、たまあに後ろ姿の写真を送りつけてくるのよ。カッコ良くないって一言付け足して送りつけてくるの。困っちゃうわ」
僕のことを井早坂さんは思い出のように語っているらしい。後ろ姿から僕のことを撮っていたのは知らなかった。
井早坂さんはお母さんの肩に手を付き、「もう辞めて……」と苦しそうな声音で言った。
「あら、今結構言っちゃったかしら。アハハハハハッ」
高笑いをしてリビングに消えていった。
お父さんも「ハニーも同じようなことしてるじゃないか!」と文句を口にしているが、立場的にお父さんはかなり下らしく、無視されている様子が伺えた。
「……瑠翔私の部屋行こ」
僕に顔を見せずに僕に背を向けながらそう言った。
後ろからは耳が赤くなっているのが見えたが、僕は気にせず井早坂さんの背中を追って階段を登っていった。
かなり変わっている親だが、1人暮らしの僕からしたらかなり新鮮で良い家族だなと感じた部分が多かった。
実際この家に住んでみたいなとも思ってしまったくらいだ。
そうして僕は井早坂さんの家にお邪魔して遊ぶことになった。
この後、まさか親を巻き込んで遊ぶとは思ってもいなかった。
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