月栄さん
どっちかというと、恩田さんの方が接しづらい。月栄さんも他の人よりはテンション高い人間だが、それよりもテンションの高い恩田さんは僕にとって苦手だ。
テンションを合わせられないし、それだからか話のスピードが早い。僕が口を挟む暇もなく、それなのに質問をどんどんぶつけて来たりする。
なので、どっちかというと僕のことを少し嫌っている月栄さんでもそっちの方が僕にとって気楽だ。
だからまず、月栄さんが僕のことを嫌っている理由、それを解決して仲良くしようと思った。
まとめて仲良くといった陽キャラがするようなことはできない。一番早い解決方法は井早坂さんみたいに、いろんな人に話しかけたりして仲良くするようなことは僕にはできない。
なので、1人ずつ、少しずつと解決する方法しかないのだ。
そう考えた結果、僕のことを嫌っているようなイメージのある月栄さんとまず仲良くすることに目標を決めた。
***
しかし、あまりにも上手く行かない。
ずっと恩田さんと月栄さんは2人でいるからだ。昨日目標を決めて次の日になっても話しかけられなかった。
と、そこで姫乃さんが声をかけてきた。
「如月くん悩み事?」
僕の顔色を窺うように下から覗いていくる。
「いや、別にそんなことはないよ」
まあ悩んでいることではあるが、姫乃さんに頼ることはできない。したくない。
「そう? ならいっか」
そう言ってすぐに僕のところから離れていく。
どうやら僕の顔色が悪かったのか気になって遠くから駆けつけてくれたようだ。
「優しいなぁ……」
心の中で思っていたことが思わず声に漏れてしまう。
そして、それが井早坂さんに聞こえていたようだ。近くまで来ていたらしい。
「結愛が? ふ〜ん」
僕の前の席が空いていたので、そこに座って言う。
「そうだけど……優しいじゃん?」
「そうね。でも優しいなんて分かんないよ? もしかしたら瑠翔の口を裏で言ってるかも!」
それは……流石にないだろう。あの姫乃さんだ。愚痴なんて言わないと思う。
でも確信できない部分があるのが少し怖い。迷惑かけまくっているのがその根拠だ。
そんな心配をしていると、井早坂さんは僕を安心させるような口ぶりで言った。
「安心して、冗談よ。結愛は本当に優しいから」
「だ、だよね」
ホッとする。
「それで、あたしも気になるんだけど悩み事でもあんの?」
どうやら井早坂さんにも今の僕が悩み事を抱えているように見えているらしい。どうやって誤魔化そう。ここで人を頼ってはいけないことは理解している。
悩み事無いと言ったら怒るぞというような顔をしているし……。僕の表情を良く窺ってくる井早坂さんは、僕に悩み事があるのを確信しているようだ。
表情のクセなどを理解しているように思える。
なので、僕は嘘を吐けなそうだと判断し、正直に答えることにした。
「実は…………」
僕は問題児2人仲良くするための方法がイマイチ上手くいかないのと、月栄さんが僕のことを嫌っているかもという悩みを大雑把に話た。
「あーあたしも凛は瑠翔のことを嫌ってると思う。2人が前に話してるの見てすぐ思ったわ」
周りから見ていたらしい井早坂さんもそう感じとっているようだ。
「別に何かあったわけじゃないのよね?」
「うん、何もしてない。思い当たる節がなさすぎる」
本当に思い当たる節がないのは事実だ。何より、あれが初めての会話だ。もしかして直接的な関係ではないのかもしれない。
他に誰かが絡んでいるのか、いやイマイチぴんと来ない。何で嫌われているんだ。
「あたしが聞いてみよっか? 仲良いから答えてくれるかもしれないし」
結局は頼ってしまう立場になってしまう。が、僕としてここは大事なところだ。もしかしたら井早坂さんのおかげで解決できる可能性もあるし、今回のことは月栄さんの身近な人に頼る他ない。
原因が分からない以上は下手に動かない方が良さそうだ。
「お願いできる……?」
「もっちろん! その変わり」
取引しようと言った顔をする。そしてそう前置きをして軽々と口を開いた。
「あたしと遊ぼ?」
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