問題児

 このクラスで問題児と言われれば、よく2軍の人たちと一緒に行動している2人のことを誰もが指すだろう。クラスだけではなく学校でも有名な問題児。


 ただただ元気一杯のやつ。どんな人にでも絡みに行くような活気良さ。いつも一緒にいる白河さんや神崎は本当に尊敬できる。


「あんたが如月か!」


「おっす〜!」

 

 こんな僕にも躊躇うことなく大きな声で元気よく僕の名前を呼ぶ。


「そうだけど……」

 

 僕がこのグループに入ったことで反応したのだろう。いつもは興味すら見せないのに今日だけ話しかけてきた。


「あんたってそんな髪型してたっけ⁉︎」

 

 この元気そうな女の子は恩田おんだ晴香はるかという名前だ。恩田さんは誰もが一瞬チラ見してしまうスタイルの良さを持っている。それでもって顔も可愛い。


「髪切ったんだよ」


「梨央奈ってこいつのこと好……」


「わぁぁぁ!」

 

 クラスの中で恩田さんが何かを口にしようとすると、白河が慌てて口を抑えた。恩田さんはただでさえ声が高くて元気な声をしているので言われたくないことを口にされそうになったのだろう。


「晴香ちゃん辞めてぇ!」


「わ、分かったから!」


 そして2人は内密な話でもするのか、白河さんに腕を引っ張られて奥へと消えた。

 

 すると、もう1人の問題児が僕に話しかけてきた。


「如月」

 

 僕のことを呼ぶ問題児の女子、月栄つきえりん。金髪ロングで髪をオールバックに上げているのが特徴だ。クールさはあるが、性格からはクールな感じはしない。

 

 それにセクシーさが少しあるが、見た目からかギャルっぽさもある。化粧も他の人よりも濃そうだが違和感はない。


「……なに?」 


「アンタって好きな人いるん?」

 

 急な質問だ。こう見えてもイチヨウ初対面のはず。初対面の相手に好きな人がいるのか聞く人がいてびっくりした。


 僕自身、好きな人誰と言われてハッキリ答えられるような人はいない。まだ自分に自信が持てていないからか、恋なんか考えていないのだ。まだ僕に恋愛ができるような容姿などがあれば考えるのだろうが、それはまだ早い。


 正直に答えよう。


「いない」


「へぇ〜」


 まるで興味がなさそうだ。

 

 それよりもさっきまでの活気の良さはどこいった。ずっとはしゃいでいるイメージが強いが今は普通に大人しい。

 

 周りに誰もいなく、僕と2人っきりだからか。それとも僕といるのがつまらないからか。いつものような活気良さが窺えない。


「何でそんな質問を?」

 

 僕は言ってくれればラッキーのつもりで訊いてみた。

 

「これ言っていいと思うから言うけど」 


 どうやら言ってくれるそうだ。


「アンタ梨央奈のこと振ったんでしょ」

 

 月栄さんは白河さんが僕に告白したことを知っているらしい。別に意外なことではないが白河さんが口にしたのだろうか。

  

 白河さんは正直なところがあって嘘が吐けなそうなので言っていてもおかしくはない。

 

 もしかしたら月栄さんは僕のことを嫌っているのかもしれない。口調が何で振ったの、と言いたげな口調だった。


「まぁ……」 

 

 振ったことを知らないフリしても意味がないと思い、濁す形ではあるが正直に答えた。


「あっそう」

 

 冷たい言葉を残して月栄さんは奥へと消えていった。おそらく月栄さんには嫌われている。態度や口調からでも分かる。絶対に嫌われていると。


 何で嫌われているのかは分からないが、友達関係を築きたい。2軍の人たちと打ち解け合うにはとりあえず気軽に話せるような仲を作らないといけない。

 

 今では神崎と白河さんは大丈夫だと思うが、残りは問題児2人だ。片方のとにかく元気な恩田さんはまだいいとして、今のところ苦戦しそうなことができた。

 

 月栄さん。この問題児が何で僕のことを嫌っているのかを知らないといけない。そしてそれを解決して仲良くならなければいけない。


「……しんどい」

 

 弱音を吐くほど今までの相手とはレベルが違う。井早坂さんたちは僕から行かなくても話しかけてくれた。

 

 しかし今回は僕から行かないとダメ。天堂の助けもおそらく神崎の助けもない。白河さんに頼るのはなんか違うし、今回は1人で何とか頑張って行動しなければいけないのかもしれない。


「とりあえず話すしかないよな」

 

 とりあえずの目的は話しかけてみる。とりあえず話てからこれからのことを決めよう。

 

 また明日から振り回されるような1日を送りそうだ。



 

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