進む

 あれから一週間。


「如月さーん。あ、あの。あれ、なんて言おうとしたんだっけ。やっぱりなんでもないです」


 最近良く白河さんの方から話しかけてくれるようになり、目的のことを考えると順調な感じである。


 が、あまりにも白河さんは周りから目立つため、僕たちへのなんだあいつらという視線が痛い。


 そう思っているが、前よりかは視線の数が減った気がする。


 特に男子。僕に対する視線が減った。おそらく僕もこのクラスに馴染めてきているのだと思う。


 まあ相変わらず女子からのチラッと興味深そうに見てくる視線は変わらない。


「いい感じなんじゃないか。その調子でもっと友達作るんだな」


 白河さんが「なんて言おうとしたんだっけ」と言いながらどこかに消えていくと、隣の天堂から応援された。


「おっす」


 嬉しかったので、へへんといった感じで鼻を掻く。


 天堂はハハッと笑い、「気持ちわりー」と軽々しく口にしたが、本意ではないだろう。


 天堂からいい感じなんじゃないかと言われて、僕も実感する。

 僕は変わった。


 人と話すことはなかったあの日常も。

 人に興味がなかったあの感情も。


 まるで人が入れ替わったかのように変わった。


 それに、姫乃さんに関しては少し気を遣っている気がするが、井早坂さんとも普通に今は話せている。


 僕が距離を置いたのにも関わらずに、話しかけてくれる優しさ。


 姫乃さんが時々僕の机の前に座って話しかけてきたり、井早坂さんがネイルしてきたんだなど、他愛のない話をしてきたりと、楽しい学校生活を今も送れている。


 後、必要なのは天堂たちと得たコミュニケーション能力や、ノリ、ツッコミなどを生かして友達を作ること。


 今は白河さんと段々深い仲を築けているので、後はそれをどのように生かして2軍の人たちと友達の関係になるかの段階だ。


 そう僕は変わったなと自分でも実感しているときだ。


「如月くんー。今日遊べない?」 


 姫乃さんが声をかけてきた。

 後ろからは井早坂さんもついて来ている。


 別に距離を置くにしても、相手から距離を詰められれば拒否はしない。

 今日はバイトもないし1日暇だ。


「遊べるよ」


 後ろからついてくる井早坂さんが顔を出す。


「瑠翔フッ軽ナイスー」


 僕たちは変わらず今のように関わりながら、僕は1つ他の道に進もうとしていた。


 ──目的までもう少し。

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