変わっていく日常

「学級委員になってくれる人いますかー?」


 クラス替えから数日。係や、委員会を決める日だ。

 先生が司会をし、話を進めている。

 そして一番決まりにくい係の学級委員がすぐに決まった。


「私やります」


 前髪の間から声の主の方を見る。

 茶髪な髪に、綺麗な顔の人。姫乃さんだ。


「あら、ありがとうね。他にやりたい人はいますかー?」 


 女性の先生はそう言うが、誰も手を挙げようとしない。

 それもそうだ。


 ──こんな学校中でも人気のカースト上位の人たちがこのクラスに集まれば、手を挙げられるのはカースト上位の人に限られる。


 そう、このクラスではあらゆる陽キャラが集まり、学校でも女子に人気のイケ

メンたち、美少女たちが集まっている。


 その中でも1軍、2軍といった2つのグループで分かれている形だ。

 1軍、2軍の人たちは普通に仲良く話しているのをよく見る。


 なので、どちらかというともう陽キャラと陰キャラにハッキリと別れている感じだ。


「じゃあ姫乃(ひめの)さんで決まりね。他は上手く決まるでしょうから皆で決めるのよ」


 そう先生が言い、生徒たちに後は任せる形になる。


 もう1人学級委員が必要だが、姫乃さん1人でこのクラスをまとめられると思っているのだろう。


 甘い先生だ。

 そんなことを考えていると、教室から男らしい声が響いた。

 僕の隣に座っている学校でも有名な人物だ。


「じゃあオレは黒板係やるぜ」


 自由に選ぶ形にするのか、そう大きな声で言った。

 自分はこれ以外やらないといった感じの言い方だ。


 声の主の名は──天堂慎弥(てんどうしんや)。

 僕の中ではイケメンだけど、陰キャラの僕からしたら嫌いなタイプではある。


 でも、女子には優しく、運動ができるといった部分が女子の人気を買っているのだろうと思う。まあ顔はピカイチでイケメンではある。誰が見ても異論はな

い。


 そして先生が生徒に任せたところで教卓の前に出た学級委員、姫乃さんは天堂

の発言を皆に問う形で言った。


「他になりたい人いるー?」


 優しく、お姉さんが子供になにかしたいことがある? と聞くような感じだ。

 一瞬子供の気分になってしまった。危ない、危ない。


 そして天堂の言い方に怖くて手を挙げられない人がいるかも、という配慮で優しく言ったのもあるだろう。


 だが、やはり誰も手を挙げない。


 そうしてカースト上位の男女が係や委員会の枠を埋めていっていき、次に僕みたいな陰キャラな人たちが余った枠を埋めていく。


 が、僕はピクリとも動かずに座っていた。

 余った枠でいいやと思っていたからだ。


 そして係決めが終わり、最終的に余った枠が出た。

 すると姫乃さんは僕に対してこう言った。


「えーっと、如月くん黒板係でいい?」


 まさかの黒板係が余ったらしい。

 僕は言葉を発さずに、こくりと頷いた。


 てことは、僕は天堂と一緒に黒板係をやることになるわけだ。

正直嫌で嫌でしょうがなかったが、怖いのでしょうがないしょうがないと言い聞

かせた。


「よろしくな」


 すると、隣にいる天堂にそう言われる。


 顔に出ていたかと思い、思わずピクリと体を強張らせた、天堂はなにも言ってこなかった


「……よろしく」


 僕は天堂の方に振り向くことなく、そう言った。


「おうよ」 


 思ったより優しい対応だなと思ったが、これはみんなの前だからだと解釈した。


「俺は結愛と一緒の学級委員だねー」


 隣の天堂の席に集まった人たちはそんな雑談をし始めた。


 すると、学級委員の姫乃さんは係決めも終わったので、隣にいる1軍のグルー

プに入っていった。


「ほんと皆一緒で良かったよ」 


 一緒のクラスで良かったということだろう。


「それなー。マジ奇跡って感じ」


 そんな会話が嫌でも聞こえてくる。

 隣にいる1軍の人たちは1年の頃から一緒にいるイメージが強い。


 でも何人かは1年の頃別のクラスだった気がする人もいる。

 だから姫乃さんは集まって良かったと言ったのだろう。

 僕は相変わらず友達もいない1人だけど。


 そんなことがクラス替えの初めにあり、何週間が経った頃だ。

天堂が黒板係をやらなくなり、掃除でも1人でするようになったのは。


 そしてそれと同時に変わったことがあった。

 それは──姫乃さんが話しかけてくるようになったことだ。

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