十三ページ目:初マ〇クラ配信した日 前編
「はーい、みなさーん、セイハロー。ホッシーです」
無事にデビュー配信を終えた俺と03だったが、その配信で言ったようにすぐにM〇NECRAFT配信を始める。
なお、デビュー配信が終わったのは22時を少し過ぎたぐらいだったが、22時半までにM〇NECRAFT用のサムネを急いで作ってなんとかギリギリ間に合った。
「あ、ほら挨拶して挨拶」
「03でーす」
「ざっつ!」
もちろん、デビュー配信から続けて配信しているので03も参加している。M〇NECRAFT配信は03とマルチプレイでやる予定だったので初M〇NECRAFT配信の時は絶対にいて欲しかったのだ。
――セイハロー
――セイハロー
――セイハロー
配信が始まった直後からデビュー配信に遊びにきてくれた視聴者さんたちが挨拶をしてくれる。きちんと挨拶も定着してくれたようで一安心。
「ほら、もうちょっとさ。03だよーぐらい言ってもいいんじゃない?」
「03だよー!」
「そう! それだよ!」
「……このテンション続かないからもうやめるね」
「いいよ」
03はダウナー系のキャラ――というより、それが素なので無理してキャラ付けしても長続きしないことはわかっていた。なので、すぐに頷いて進行に戻る。
「みなさん、いらっしゃいませー」
――セイハ……こんほし~
「こんほしって言うのは止めるんじゃぁ」
来てくれた視聴者さんに挨拶しているとニコ生時代の常連さんが悪ノリを始める。ここでこれを無視すれば『こんほし』が定着してしまうのでツッコミを入れた。
その後、音量調節もすぐに終わらせ、M〇NECRAFT配信の本題へと入る。
「それじゃ、やっていきましょう。03も入っていいよ」
「はーい」
そう言いながらM〇NECRAFTへとログインするが、なかなか入れない。アバターがアバターなので配信画面に出さずに待つ。
「お、入れ……痛い痛い痛い!」
「ちょっ……あっはっはっは!」
ログインしたと思った矢先、03から素手でボコボコと殴られるが、途中で俺のアバターに気付いたのだろう。殴るのを止めて爆笑し始めた。まぁ、うん、その気持ちはわかる。このデザインを頼んだのは俺だが、出オチ感は否めない。
――スキンコワッ……
――星ですらなくなったw
――……星ですらねぇじゃねぇか……
――スキンほぼ真っ黄色で草
「あの、誰ですか?」
「ども。いたっ、殴らないで」
「ちょっと寄らないでもろて」
「なんかこのゲームに適した体になると聞いたのでちょっと見てみ――」
バスバスと殴られて着実に体力が減っていく中、アバターを見せる。そこには全身黄色いタイツ。そして、胸のところにポツンと顔があるアバターだった。
「――え?」
もちろん、デザインは知っていたが、実際に動かしてみるとそのキモさが際立つ。これは、うん、キモイ。それに今更気づいたが、このアバターの状態で胴装備を付けると胸の顔が隠れるため、自然と縛りプレイが確定した瞬間だった。
「これはあれか? 手と足がこの体の左右と下の星の頂点で頭の部分が上の頂点か?」
「くっくっく……」
俺がアバターの説明をしている間も03は笑い続けていた。正直な話、このアバターができるまでデフォルトのアバターを使おうと思っていたのだ。それだけ星アバターをM〇NECRAFTのスキンにするのが難しかったのである。このスキンを作ってくれたとある常連さんには感謝してもし切れない。
「ぁ……ホッシー」
アバターにツッコんでいると03が何かに気付いたようで俺を呼んだ。何だろうと思いながらも配信上のチャット欄を調整する。
「ん?」
「船の残骸があったよ」
「え? 船の残骸?」
M〇NECRAFT自体は経験したことはあるが、何年も離れていた上、ずっとブランチマイニングしかしていなかったので『船の残骸』というワードに心当たりがなかった。
「え、どこ?」
「こっち」
「うわ、なにこれ」
03のところへ移動するとそこには地面から半分だけ出ている船の残骸があった。まさか初期リスポーン地点の目と鼻の先にあるとは思わず、驚いてしまう。
――地上にあるの珍しいなw
――宝箱あるぞ
「宝箱ある?」
「あるよー」
「あ、眼鏡かけていい?」
「03眼鏡かけるのか!」
「眼鏡属性付けていこうかと」
ツッコミながら『君はAIなんだからもう少し設定を大事にして……』と心の中で思ってしまう。まぁ、その点に関しては最初から諦めていたことなのですぐにまぁ、いいかと完結させ、船の解体作業を続ける。
――最初の木の取り方が特殊すぎるw
――こんな初手木こりがあっただろうか……
チャットでツッコまれながらも作業を続けるが、夜になってしまい、真っ暗な画面の状態だ。配信的には大変よろしくない状態なので早く朝になって欲しい。
「あ、ホッシーはーん」
「はーい」
「こっちきてー」
「はいはーい……って、やべ」
03に呼ばれた直後に壊したブロックの先から水が流れ込んでくる。残骸の近くに海があったのでそれが原因だろう。とりあえず塞いで03のところへ向かった。
「ほら、開けて」
どうやら、03は船の残骸に隠されていたチェストを発見したらしい。少し前に鉄のインゴットも手に入れていたようなのでこれで2個目のチェストだ。
「おお、めっちゃ入ってる」
そこには小麦やジャガイモ、ニンジンはもちろん、紙――そして、竹が入っていた。序盤でジャガイモとニンジンが手に入ったため、食糧問題が解決したのも同然である。
――宝の地図はここには無いか……
――入れ直したな?
――は? 最初から竹とかw 運良すぎかよw
「竹って運いいの?」
「すごいいい方」
「やっぱ、これがホッシーの運なんだよなぁ」
「え~、本当に~?」
今までもそこそこ運が良かったので正直、そこまで驚くことではなかったがVTuberとしては美味しかったのでこれ見よがしにイキる。本音のところ、竹自体、初めて見たのでその価値がどれほど高い物なのかよくわかっていなかった。
――竹はジャングルにしか生えてません
「へぇ、そうなんだ。でも、宝の地図はなさそうだね」
「まぁ、チェストは運が良ければもう一個あるから」
それから再び、残骸の解体作業を続ける。途中、ゾンビに襲われ、間違えて作ったクワで倒したり、小麦をパンに変えて食べたりしていると03が不意に声をあげた。
「あれ……あそこにあるの、メサじゃない?」
「メサ? メサって何?」
「なんか小さ目のメサっぽい」
03がいるところへ向かうと彼女は海の方を見ていた。確かに少し離れたところに見覚えのない茶色っぽい土地がある。あれがメサ、というものなのだろうか。
「ちょっと泳いで見てくる?」
「見てくる?」
そうと決まれば03と一緒に海へ潜り、見知らぬ土地へと向かう。途中、熱帯魚や昆布を眺めながら少し泳ぐとメサ特有の高い土地が見えた。
――は? おめぇまじで運良すぎか?
――まじかよ
――……何このシード……
「あ、やっぱメサだ」
「おー、メサだー……メサって何?」
「金鉱石とか廃坑が多いとこ」
「へぇ」
チャット欄がざわざわしていることには気づいているが、やはりメサの貴重さを知らないため、『そんなに騒ぐことなのか?』と首を傾げながら03にメサについて教えてもらう。
「とりあえず、沈没船の解体進めますか」
メサを少しだけ探索し、すぐに初期スポーン地点へ戻る。その途中でイルカを発見し、テンションが上がっていると窒息ダメージで再び瀕死になってしまう。急いでパンを作って食べて体力を回復する。
「あ、視点主、こっち来て」
「ん?」
作業を続けているとまた03に呼ばれ、そこへ行くと最後のチェストがあった。さすがに今更勿体ぶるのも変なのですぐに開ける。
「あ、宝の地図」
03の話では半分以上地面に埋まっていたのでない可能性もあったが、しっかりと宝の地図も入手することができた。
「いやぁ、いいですね……あれ、03どこ? 探索?」
「うん……あ、村だ」
「え、マジで行ってる?」
「しかも、ゴーレムもいる」
「結構でかい村だね」
数分前に03を見かけたので彼女が探索に出かけたのはほんの少し前。つまり、すぐ近くに村があるのだろう。
初期スポーン近くに地面に埋まった沈没船。
海の向こうにはメサ。
そして、メサの反対側に行けば大きな村。
なにより恐ろしいことが――ここまで配信を始めてから30分も経っていないこと。
M〇NECRAFT配信を始める前は小説に書ける程度には取れ高があるといいな、と思っていたがこれほどまでに濃縮された初M〇NECRAFT配信はあるだろうか。
しかし、まだ怒濤の取れ高ラッシュは終わらない。あまりにも要素が多すぎるため、続きは次回、大きな村探索から書こうと思う。
それでは、皆様、また、次のお話でお会いしましょう。
アーカイブ:https://www.youtube.com/watch?v=iQhbK48OsSw&feature=youtu.be
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