十四ページ目:初マ〇クラ配信した日 後編

「あった」

 03に呼ばれ、歩くこと数十秒。予想以上に近いところに村があった。村はエメラルドがあれば交渉してアイテムと交換できるし、序盤で見つけられたら色々な資材をパクることも可能。始めて30分も経っていない俺たちからしてみればまさに宝の山である。

「この村、畑もありますぜ」

「やった、勝った」

「これは勝ったな、風呂入ってくるわ」

 そう言いながら俺も村へ突入。数人の村人を見ながら周囲を見渡すと03の言うとおり、かなり大きな村だった。

「ホント、取れ高やばいな。本当なら何パートにも分かれてやる内容がぎゅっと凝縮されてる」

「わいとホッシーの運が組み合わさってわけわからんことに……」

「あ、ゴーレムさんだ」

 それから村の中を探索したが、スイカや俵、白紙の地図、なによりベッドなどを手に入れることができた。まだ鉱石を手に入れていないので白紙の地図はありがたい。

「砂漠だ」

 村を探索している間に村の奥が砂漠になっていることに気付き、そのまま俺一人で様子を見てくることになった。装備は整っていないがベッドで朝にしたばかりなので敵MOBはほぼ皆無。軽く見てくるだけなら特に警戒する必要もないだろう。

「砂漠って目ぼしいものあったっけ?」

「ピラミッドくらいかな」

 しかし、ぐるっと見て回ったがあまり大きくない砂漠だったため、すぐに探索は終わりにして村へと戻る。そのまま白紙の地図が入っていたチェストを開け、インベントリーへと入れた。

「そこに製図台があるから拡張してもろて」

「お、おう」

 ホッシー、初めての製図台による地図の拡張。前は作業台で地図の周りを紙で囲えば大きくすることができたのだが、今は製図台がないとできないらしい。

 それから視聴者に使い方を教わりながら最大まで拡張。どうやら、初期スポーン地点は地図と地図の境目に近いところだったらしく、村で地図を使ったため、初期スポーン地点は同じ地図上にはなかった。

「とりあえず、村人は閉じ込めておくか」

 この村を拠点にするつもりはなかったが、交渉する可能性もあるため、ゾンビに殺されないように家に村人を閉じ込めていく。




 ――この人でなし! あっヒトデだったわ

 ――このヒトデなし!




 その光景を見た視聴者が俺のことを『ヒトデなし』と呼び始める。俺のアバターが星なのでそれにかけた罵倒だった。

「ヒトデ言うなし」

「監禁するなんてサイテー!」

「このヒトデなし!」

 そんな会話をしながら村を後にし、初期スポーン地点へ戻ってきた。夜になっていたのですぐにベッドを設置し、眠る。

「じゃあ、ここにチェスト(村からパクってきた)を置くからここに入れていこう」

 このままインベントリーがいっぱいだと資材を見つけてきても持って帰って来られないため、一度整理することにする。

「あ、俺、宝を探してくるわ」

 初期スポーン地点近くにあった沈没船で見つけた宝の地図をずっと放置していたので試しに探しにいくことにした。石の剣とツルハシ、スイカを持って地図を頼りに冒険へと向かう。方向的には先ほどの村があった方らしいが宝の地図は初めて触れるのでイマイチ仕様はわかっていなかった。




 そして、これが長い冒険の始まりだった。






 村の奥の砂漠へ移動し、その先が海だったのでボードを作成。そのまま単身でボートに乗り込み、大海原へ突入。




 ――本当に方角合ってる?



「え?」

 視聴者の指摘にF3を使って方角を確認。全く逆だったことがわかり、慌てて踵を返して改めて初期スポーン地点付近から大海原へ。

 だが、ボードで進んでも進んでも一向に宝の地図には何も変化がない。F3で方角を確かめ、ひたすら北西へと向かう。

 冒険を始めて40分ほど経った頃、ずっと北西に向かって歩いていたが何故か宝の地図には変化がない。03の話では近くにあると言っていたのにここまで変化がないと不安になってしまった。




 ――サーバーに入り直してみたら?




「サーバー? あ、もしかしてバグ!?」

 その時、視聴者の一人がそんなチャットを打った。宝の地図に触れたことがないと言ってもここまで変化がないのはおかしいと思っていたのだ。すぐにサーバーから抜け、入り直してみる。

 そして、アバターの左手にあった地図は綺麗な青色に染まっていた。

「バグだった……戻ります」

 バグにより地図に変化が出なくなっていたようで完全に宝の場所を通り過ぎていたのである。しかも、宝の地図にはメサっぽい茶色い土地も見えるので初期スポーン地点から目と鼻の先にあるようだ。そして、現在、自分がいるのは初期スポーン地点から40分ほどほぼノンストップで北西へ進んだ場所。




 ――バグだったぁw

 ――バグかぁ

 ――うわぁ……




 半分泣きそうになりながらも初期スポーン地点に向かって走り出す。イベント盛りだくさんで最後の最後にバグ。

「あ、これ俺、小説書かなきゃならないのか……死にそう」

「頑張ってねぇ」

 本当ならもう少し穏やかな配信になると思っていたのでこの先に待ち受ける執筆作業に絶望する。イベントが起きるということはそのイベントに纏わる情報はもちろん、その時の俺の心情、視聴者のチャット、03の反応などをアーカイブを見ながら何度も巻き戻して確認しなくてはならない。考えるだけで面倒臭い作業であることは一目瞭然である。

 なお、俺が戻っている間、03は最大まで拡張した地図を埋めていた。バグのせいで時間を無駄にした俺よりも仕事をしている。

 それから20分ほど経った頃、夜になったのでそろそろ寝ようとした時だった。地面にマグマブロックがちらほらと埋まっているところを見つける

「……あ、これネザー跡地か」

 これはSwitch版のM〇NECRAFTで見たことがあったので知っていた。黒曜石とマグマブロック、そしてチェストがぽつんと置いてある場所である。とりあえず、ベッドで寝て朝にしてからネザー跡地の調査へ向かう。

 チェストを開けると金インゴットや火打石、エンチャントされた金のクワとツルハシやファイヤーチャージ。そして、金のリンゴが入っていた。

 他に目ぼしいものはなかったのでマグマブロックを数個だけ取ってそのままネザー跡地から離れる。だが、歩き始めて数分後、今度は村を見つけた。本日、2つ目の村である。

 さすがに無視するわけにもいかず、村で資源集めを始めた。今度は燻製器を見つけ、ツルハシで回収しておく。それ以外は俵を大量に回収しただけだ。

「……あれ、メサだ」

 村を後にしてすぐ。今度はメサを見つけた。初期スポーン地点付近のメサだろう。しかも、海の上から見て大量の蜘蛛の巣があったので念のために近寄らずに帰り道を急ぐ。

「あ、ジャングル来ちゃった」

「え、どこ? 近い?」

「いや、近くはない」

「きちゃ?」

「きちゃー!」




 ――ふぁああああああ!?




 だが、その直後、地図埋めをしていた03がジャングルを見つけてしまう。あとで知ったのだが、ジャングルはレアバイオームらしい。俺はそこまで珍しいとは思っていなかったのでどうしてそんなに騒ぐのかイマイチ理解していなかった。

「あれ、これ、違うメサだぞ!?」

 そして、俺は俺で最初に見つけたメサではないメサを見つけていたらしい。初期スポーン地点付近のメサよりもあまりにも大規模だったのだ。大規模すぎて登って超えるのが大変なほど大きい。

「……え、待って。メサ超えた先にもメサあんだけど!」

「こっちのジャングルも大きいからオウムとかパンダいるかも」

 更に山を越えた先も同じような山がいくつも連なっていた。03も03で広いジャングルを引き当てたらしい。

「ひぇ……ん? あれ、ネザー跡地あった」




 ――メサにネザー跡地!?




 そこへ怒濤のイベントラッシュ。メサにネザー跡地が突き刺さっていた。もはや笑うしかなかった。メサとネザー跡地の夢のコラボレーションである。

 ネザー跡地には特に紹介するべき資材はなかったのでチェストの中身だけ回収して終了。そのままメサを超えるために何度も山を登る。

「これ、もしかして俺たちが最初に見つけたのって一部だったのかな?」

「そうなの?」

「うん、宝の地図も少し埋まってきたから」

 チラッとしか見なかったのでわからなかったが、上陸したメサの山の向こうにもまだメサは続いていたらしい。

 それからやっと初期スポーン地点付近へ帰って来た俺はすぐに宝の地図が示す赤×の地点へ到着する。早速、近くの地上でスコップを作って掘り始めた。

 だが、掘っても掘っても出てこない。本当にここに埋まっているのかと疑ってしまうほど出てこなかった。

「ッ……あった、見つけた」

 掘り始めて50分弱ほど経った頃、やっとチェストを発見する。正直、もう見つからないと思っていたのでホッと安堵のため息を吐く。

 チェストの上にあった砂を取り除き、開けるとそこには見覚えのない青い球体のアイテムとダイヤモンドなどの鉱石などが入っていた。青い球体は『海洋の心』というアイテムのようだ。




 ――宝の地図を持ってから約2時間10分




 視聴者のチャットを見て苦笑を浮かべる。本当に長い戦いだった。特に最後の掘り作業は苦痛でしかなく、何度か止めようと思ったほどである。

 チェストの中身を全て持ち、初期スポーン地点へと帰還。荷物がいっぱいなので何往復かしなくてはならないが作業が終わったため、初期スポーン地点が見えてきて心底安心してしまう。しかも、03が俺のいない間に即席の家を作っていてくれたので仮拠点も完成し、少しずつではあるがゲームが進んでいるという実感を得ることができた。

「じゃあ、そろそろやめますか?」

「あ、ちょっと待ってー」

「はいはーい」

 宝探しも終わったのでそろそろ配信を切ろうとしたが、03がまだ何かの作業をしているようで今後の配信の予定ややりたいことを話しながら時間を潰す。

「――と、いうことでこれから1週間は連続でやりますが、それが終わった後は週に3~4回のペースで配信していきます」

「あ、宝、見つけたぁ!」

「え?」

 どうやら、地図を埋めている最中に沈没船を見つけたようで03も宝探しをしていたらしい。それから彼女が帰ってくるのを待つことにする。

「じゃあ、このチェストに成果を入れて」

「全体の成果入れちゃうね」

 03がチェストに成果を入れた後、入れ替わるように中身を確認。そこには宝探しで見つけた『海洋の心』を始めとして色々なアイテムが入っていた。もちろん、03が半分ほど埋めた地図もそこにある。




 ――一日で海洋の心二つはやばすぎるんだよなぁw




「ホントやばすぎるんだよなぁ」

 『海洋の心』だけでなく、今回の配信では本当に色々なことがあった。ありすぎた。ぜひとも次回以降はもう少し落ち着いた配信がしたいところである。

「と、いうことで……今日から、というか昨日からか。VTuberとして活動していくことになりました。色々な企画も考えているのでチャンネル登録、あとTwitterのフォローよろしくお願いします。それでは今日はこの辺で失礼したいと思います。以上、交信終了! お疲れさまでしたー!」

 こうして、初M〇NECRAFT配信が終了した。取れ高だらけの濃密な配信だったが、視聴者と交流も持てた充実した時間だったのは間違いない。














 前編と後編に分かれた今回のお話もここまで。次回は――というか、次回もM〇NECRAFT2日目のお話をしようと思う。さすがに取れ高は今回ほどないが、俺にとって切っても切れない大切な施設の建造をしたので紹介するつもりだ。




 それでは、皆様、また、次のお話でお会いしましょう。















アーカイブ:https://www.youtube.com/watch?v=iQhbK48OsSw&feature=youtu.be

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