七ページ目:調べ物をした日

 唐突だが、この世には様々な権利が存在する。

 平等権、財産権、生存権、選挙権、生殺与奪権。そして――著作権。

 特に著作権はYouTubeでライブ配信をするにあたって気づかない内に侵害してしまう可能性があり、注意しなければならない事柄の一つだ。

「なので、今日はフリーのBGMを探しまーす」

 いつものように生放送をしながら準備を進める。リスナーさんももう慣れたのか、『はーい』といった感じで特に驚いた様子もなく、普通に受け入れていた。生放送のタグにわざわざ『自由奔放生放送』と入れるほどタイトル詐欺は当たり前として突然別のことをやりだしたり、寄り道したりと突拍子もない行動を取ることが多い。そのため、常連であるリスナーさんからしてみれば生放送中にライブ配信の準備をするぐらいなら慣れているのだろう。

「と、言ってもまだ何も調べてないんですけどね。多分、サイトとかあると思うんだけど」




 ――YouTubeにフリーBGMの動画あるみたいですよ




 そう言いながらグーグル大先生に質問しようとした時、リスナーさんから情報を貰う。その後、コメントに貼られたURLに飛び、その動画のBGMを視聴する。

「おー、すごいいい曲。でも、今は雑談用BGMを探してるからこれは使えないかなぁ」




 ――まぁ、例えの一つなので参考程度に




 リスナーさんが貼ったURLの動画はどちらかというとおしゃれなジャズといった雰囲気の曲だったため、残念ながら見送ることに。

 それから関連動画に表示されていた動画をいくつか視聴するが、なかなかピンと来るBGMがなく、動画から探すのを断念することになった。

「なかなかないもんだねぇ……お、これいいんじゃない?」

 サイトを転々と移動している最中、雑談用BGMとして使えそうなものを発見。きちんと著作権フリーか確認し、大丈夫そうだったので早速ダウンロードする。更にもう一個、雰囲気の違うBGMを見つけ、それも保存した。

「とりあえず、使うのは二曲目にしよっか……じゃあ、とりあえず、今日はこれをかけたまま、生放送しよう」

 ダウンロードしたBGMをリピート再生し、音量を調節。リスナーさんにバランスを確認してもらって調整は終了した。

「じゃあ、今日はもう一つやりたいことがあってですね。ほら、よくライブ配信でコメントが画面で流れるじゃん? あれのやり方を調べたいと思います」

 VTuberのライブ配信を見ているとよく画面にリスナーさんが打ったコメントが下から上へ流れている。個人勢なので有名なVTuberたちのように目で追えないほどコメントを貰えるとは思えないが、可能なら同じようにコメントを画面に出せるようにしたかったのである。

「えっと……ん? これじゃないな」

 しかし、検索ワードが悪かったのか、なかなかお目当てのサイトに辿り着くことができず、グーグル大先生に何度も質問することになってしまった。その間、リスナーさんはリスナーさん同士で和気藹々とコメントで会話しており、生主である俺のことは放置している。

「あ、これかな」

 どうやら、コメントを画面上で流すためには配信ソフトと『Chat v2.0 Style Generator 日本語版』を使用するらしい。配信ソフトはOBSを使用しているため、変更する必要はない。それからやり方が載ったサイトを読み進め――。

「あー、これ、ニコニコ動画じゃできないっぽいね」

 OBSにYouTubeのチャットURLをコピー&ペーストする必要があり、現状では使用は不可。因みに『Chat v2.0 Style Generator 日本語版』はコメントの背景を切り抜きするために使用するらしく、切り抜く必要がなければ使わないようだ。

「うん、これに関してはライブ配信できるようになってからだな」

 他人の配信でテストができるようだが、アバターが完成していない以上、焦って確認することでもないので後回しにしてもいいだろう。そう判断してサイトをブックマークして今日の調べ物は終了した。

「……ところで、BGMどう? 全然触れてくれないけど」




 ――触れることすら忘れるほどマッチしてるわ

 ――いいんじゃない?




「なら、本番もこれを使うか。じゃあ、今日のやることが終わったので別のことをしまーす」

 生放送タイトルを手早く変更し、生放送を続ける。もちろん、リスナーさんも戸惑うことなく、会話に戻っていく。生主が置いていかれる生放送。それがいつもの俺たちだった。




 さて、今回のお話はさほど盛り上がることもなく、終わった。現実問題、まだVTuberにすらなっていないため、こうやって小説にするほどのこともない。

 そのため、次回は少しばかりだが、ニコニコ生放送の様子を見せたいと思う。VTuberになった後、同じような雰囲気でライブ配信できるか定かではないが、一つの記録として残しておきたいのである。大した生放送ではないかもしれないが、お付き合いしていただけると嬉しい。




 それでは、皆様、また、次のお話でお会いしましょう。

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