六ページ目:VTuber活動を始めた日

 創作、といってもその種類は多岐にわたる。

 絵、小説、動画、ゲーム制作などパッと思いつくだけでもこれだけの種類があり、更に一次創作や二次創作とジャンル分けをするとそれはまさに無数に存在している。

 その中でも俺が選んだのは小説だった。

 そもそも小学校から本を読むのはそこまで嫌いではなく、作文を書く時は決まってクラスで一番に書き終わり、先生に提出していたので元々文章作成能力はそこそこあったのだろう。

 それから時は経ち、高校生になって初めてライトノベルという存在を知り、ドハマりしたのだ。最近はもうほとんど読んでいないが500冊ほど本棚に収まっている。

 そして、ライトノベルを読むにつれ少しずつ『こうなった場合はどうなるのだろうか?』と思うようになり、試しにノートに書いたのが俺にとって初めての創作物だった。それがライトノベルを知ってから2か月ほど経った頃の話。

 一度書いてしまえばその後はもう当たり前のように自分の妄想をノートに書き連ね、自己満足するようになった。小説を書き始めて数か月でオリジナルにも手を出し、パソコンで書くことを覚え、物書きにのめり込んでいった。

 俺が創作活動を始めて半年、俺は今もなお続いている『東方楽曲伝』を書き始めた。その頃の文章力は当時のままの状態で投稿しているので読めばわかると思うが、素人丸出しそのもの。だが、俺は夢中になって書いた。アイディアがどんどん浮かび上がり、書きたくてたまらなくなり、書いて、書いて書いて書いて書いて。サイトに投稿することには30話ほどストックがあるほどであり、3日に1回更新という今思えばなかなか無謀な更新スピードで投稿していた。なお、現在は週1更新である。

 しかし、書く作業は文章のバランスや言葉選びなど時間がかかる。そのため、アイディアばかりが溜まっていく。それが伏線を仕込むにあたってとても役に立った。

 『東方楽曲伝』で例えるなら2012年に投稿した第2章に仕込んだ伏線を2017年に投稿した第9章で回収した。前にネタバレが大丈夫な人に『東方楽曲伝』について数時間にも渡って今後の展開を説明した時など伏線を仕込みすぎて『頭おかしい』と言われたほどである。

 それも俺の小説の書き方のせいだ。俺の場合、書き始める前からすでに終わり方を決めて書くのでどこでどんな伏線を仕込めばいいのか、わかるのである。『東方楽曲伝』が完結した記念生放送の際に過去の俺が書いたネタ帳を開いてみたらほとんどそこに書いてある通りに話が進んでおり、終わり方さえ当時に決めたままだった。

「……」

 しかし、今回、俺が書こうとしているのは『ノンフィクション』。終わり方どころか今後の展開が一切読めないまさに見切り発車の小説。だからこそ、第1話を書く時、大いに悩んだ。

 第1話の内容はまさに俺がVTuberになろうと決意した日のお話。まだ数日しか経っていなかったので記憶が不鮮明になっていたわけではない。それでも、どう書けばいいかわからなかったのである。

(とりあえず、俺のことは書かないとな)

 物語の書き始めたやはり、世界観や設定、主人公について説明しなければならない。そうしないと一体、これはどんな話なのだろうと読者が混乱してしまう。

 しかし、説明ばかりでは何も面白くない。『ノンフィクション』だが、あくまでこれは物語だ。ただ状況説明するだけでは何の意味もないのだ。

 俺が目指しているのは執筆系VTuber。ライブ配信や動画には向かない創作で勝負する。

 もちろん、己が天才だとは思っていない。もし、そうなら『東方楽曲伝』を始め、これまでに書き上げた作品たちはもう少し日の目を見ることができただろう。これも俺が未熟なせい。でも、未熟だから面白くない作品でいい、なんてことはないのだ。

 やるからには全力で。

 書くからには面白く。

 作り出すのなら最後まで責任を。

 これが俺の創作活動をするにあたって掲げる信念。すでに更新が止まっている作品は数多く存在しているが、可能な限り、この信念を曲げるつもりはなかった。

 俺が俺の作品を面白いと思うものではなければ、他の人が読んでも面白くない。だから、俺の作品のファン第一号は俺であり、続きを一番待ち遠しく思っているのも俺だ。

「……」

 だが、今現在進行形で書いているこの話は――面白くない。先ほど言ったようにただの状況説明。ところどころに心情描写を入れているが申し訳程度であり、何も訴えかけてこない。

 そう思いながらもとりあえず、最後まで書き上げた。第一話の完成である。

 そして、すぐに前半の大部分を削除した。面白くない、と自分で書いた文章を睨みつけながら。

 状況説明は大事だが、多すぎたら駄目。

 しかし、それを疎かにすればどんな物語かわからないまま、終わってしまう。

「……よし」

 気を取り直して前半部分を書き進める。使えそうな部分はそのままに。変なところは修正。そんな単純作業を続け、やっと人に見せられるレベルまで上げることができた。

(まだ、何かできるような気がする……けど、俺の実力では無理だな)

 きっと、俺以上に文才のある人ならもっと上手く書けるのだろう。だが、これが俺の全力だった。完璧な出来に仕上げることができなかった作品に申し訳なく思いながらも――俺は好きだと思った。

 VTuberになることは決意したけど、本当にどうしていいかわからない拙さ、のようなものが滲み出ている。そんな感想を抱いたのだ。

 そして、それこそこの小説で伝えたいことだった。

 確かに物語として書くのなら面白い方がいいし、完璧であった方が人も見てくれるだろう。

 だが、あくまでこれは俺が実際に体験したことを書き連ねる物語。

 この拙い小説も、俺が実際に書いた物語だ。俺だけにしか書けない、俺だけの物語なのである。この作品ばかりはどんな人であっても書くことのできない、俺だけのものだ。

 Twitterで『VTuberになろう』と呟いた。

 生放送では俺がVTuberになることを伝えた。

 仮だが、美少女になった。

 相方ができた。

 チャンネルも開設した。

 だが、これらはただの準備にすぎない。まだ、俺はスタートラインに立っているだけ。すでに先駆者たちはずっと前を走っている。存在は知っているのにその背中は全く見えない。彼らの背中を見ることができるのだろうか。追いつけるのだろうか。追い越せるのだろうか。

 いや、そんなことは後。まずはスタートをするところから始める。話はそれからだ。

 今し方書き終えた文章を小説投稿サイトの投稿画面にコピー&ペースト。必要事項を埋め、あとは投稿ボタンを押すだけとなった。

「すぅ……はぁ……」

 さぁ、始めよう。この小説を投稿して初めて俺のVTuber活動が始まる。ここから俺は――俺たちは走り出す。ゴールの見えないどこかへ向かうために。




 これが俺のVTuber活動日誌、最初のページだ。




 でも、最初から話数を『ページ』にするのは少しばかり、勿体ない。

 なら、小説を書いた時のことを書いた時に全てを修正しよう。そうした方がいいような気がした。だから、とりあえず、『第1話』として投稿する。それがこの小説で最初に仕込んだ誰も知らない伏線。最初から『ページ』ではなく、『第〇話』と投稿した理由だ。




 さて、これを読んでいる頃には全てのサイトの話数が『ページ』に変わっているだろう。でも、確かに俺は最初の五話だけ『第〇話』と表記して投稿した。その事実だけは知っていて欲しい。それもまた、俺が実際に体験したことなのだから。




 こうして、俺のVTuber活動は始まったが、まだ問題はたくさん残っている。

 デビューするまでの日々はもう少しだけ続く。

 次に語るのは――ライブ配信に関する準備。あまり書くことはないが、少しだけ付き合って欲しい。




 それでは、皆様、また、次のお話でお会いしましょう。

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