五ページ目:チャンネルができた日
「あ、ママも来れるってさ」
「おー」
俺に相方ができた後、設定やアバターの話をするためにママも呼んで3人で通話することになった。まぁ、通話と言ってもママは基本的にチャット参加なので話しているのは俺と03さんだけだったが。
「それでとりあえず、色々設定を決めてチャンネルを作りたいんだけど。03さんはどんな感じの子がいいとかある?」
「うーん、すぐには思いつかないなぁ」
それもそうだ。たった数分前にVTuberになることが決まったのに設定なんてすぐに思いつくわけがない。
「なら、まずは俺の設定なんだけど――」
アバターの話はしたが、まだ俺のキャラの設定に関して詳しく説明していなかった。今後の活動方針も決めるのに必要な設定なのでその内容は03さんに話す。
簡単に説明すると俺のキャラは地球外生命体で色々あって日本に墜落してしまった。その時の衝撃で体に異変が起こり、チャンネル登録数が増えると成長する。まだ、細かいところは決めていないが、だいたいはこんな設定だ。
「面白いと思いますよ。それでいきましょう」
説明が終わると03さんは笑いながらゴーサインを出してくれた。ここでダメ出しをされたら自分のアバターそのものも却下するしかなかったので安心する。
「それで03さんのキャラの設定なんだけど結構絞られそうなんだよね」
「具体的には?」
「神か、宇宙船のAI」
「あ、なるほど。天の声的なポジションか」
「そんな感じ。最初、立ち絵がないのもエネルギーが足りないから音声だけしか送れないってことにもできるし」
それから03さんのキャラに関して話し合い、最終的に03さんは神様のお導きに従うことにした。
「じゃあ、サイコロ振るわ」
「いいのかそれで。まぁ、いいか。1で神。2でAI――3でその他ね」
「え、増やすの? ま、いっか!」
突然、選択肢を増やしたのにすぐにそれを受け入れてサイコロを振る03さん。通話では見えないのでドキドキしながら結果を待つ。
「……3!」
「その他! え、マジか」
「その他って何? 他に候補あるの?」
「じゃあ、魔法使いとか?」
「いいねぇ」
しかし、これで決めてしまうのは神のお導きと言えるのだろうか。いや、違う。やはり、最後はサイコロの目に決めてもらわなくては意味がない。
「じゃあ、1で神。2でAI。3で魔法使い。4でその他で」
「オッケー。じゃあ、振るね」
再び、03さんがサイコロを振る。ここで4が出ればまた候補が増えて振り直し。しかし、神様は俺たちの遊戯に付き合う気はなかったのか、結果はすぐに決まった。
「2!」
「なら、AIだな」
もう少しこのノリを続けたかったが、神様が決めたのなら仕方ない。03さんのキャラはAIで進める。チャットでママも『いいね』と言ってくれた。
「じゃあ、03さんの設定も決まったし……チャンネル作るわ」
元々、チャンネル開設は早めにするつもりだった。理由はもちろん、小説化した時に登録するチャンネルがなければ宣伝にならないからである。だが、問題が一つ。
「チャンネルの作り方ってわかる?」
「さぁ?」
そう、誰もチャンネルの作り方を知らないのである。
とりあえず、Gmailが必要なのは知っていたが、それはすでに作ってあるので問題ない。しかし、具体的にどうやってやるか調べていなかったのだ。
善は急げとグーグル大先生に質問を投げるがイマイチわかりやすいサイトが見つからず、どうしようかと少しばかり困ってしまった。
「あ、そういえば、友達にチャンネル作った人いるから聞いてみる?」
「お、それじゃ、お願いできる?」
そんな俺の様子を見た03さんがすぐにその友人に連絡を取り、チャンネルの作り方をわかりやすく説明した動画を紹介してくれる。
(お、これならいけそう)
その動画を見ながらチャンネルの作成を始める。どうやら、チャンネルは先ほども言ったようにGmailを基に作るようだが、基となるチャンネルさえ作ってしまえば更にいくつもチャンネルを作ることができるらしい。その動画では『親チャンネル』、『子チャンネル』と呼んでいた。俺もそれに倣って子チャンネルを作成。
「チャンネルの名前、どうする?」
「そこは任せるよ」
「じゃあ、『ホッシーの宇宙船』にしよう」
それから何度も躓きながらもなんとかチャンネル開設を終わらせ、概要欄に必要事項を書くところまで辿り着いた。
「概要欄には俺の活動してるサイトのURLでも貼るか」
まずは小説を投稿している3つのサイトと動画と生放送をしているニコニコ動画、Twitter、あとはマシュマロも必要か。
「いや、多いな。URL貼るの大変なんだけど」
それだけ色々な活動をしてきた、ということなのだろう。だが、一つ一つのサイトに飛んでURLをコピーし、それを概要欄に貼る作業は正直、面倒だった。
「よし、できた。このチャンネルのURLをTwitterに貼って」
チャンネルが出来たら今度は別のサイトにそのURLを貼る。ついでにTwitterの自己紹介欄もVTuber仕様に変更。この時点でチャンネル開設作業開始から1時間以上経っていた。なお、この間、03さんとママは普通に雑談していた。
「お、おし……これで完成した、と思う」
作ったばかりで宣伝もしていないため、もちろん、チャンネル登録数は0。でも、チャンネルがあるだけで俺たちはVTuberになるのだ、と実感させられる。
「おー、できたね」
「ちゃんと飛べる?」
「飛べる飛べる」
リンクもきちんと繋がっているようでとりあえず、チャンネル開設の作業はこれで終了だ。これでいつでも小説を投稿することができる。一文字も書いていないけれど。
「それじゃ、チャンネルもできたから今日はこの辺でお開きにしますか」
「はーい」
「あ、明日、自己紹介動画の台本作るから集まれる?」
「多分、大丈夫です」
こうして、俺たちのチャンネル――『ホッシーの宇宙船』が完成した。まだ始まったばかりでこの先、どうなるかわからないが、とにかく今はチャンネルが完成したことを喜ぼう。
「あ、そうだ。このディスコードのグループも名前変えるか」
「何にするの?」
「そうだな……『宇宙船の内部』にしよう」
カタカタとキーボードを叩いてグループ名を変更する。ここを拠点にして活動に関することを話し合おう。
さて、なんとかチャンネルが完成し、俺たちのVTuber活動も本格的に始まった。
そして、次の日、『俺のVTuber活動日誌』が投稿される。もちろん、小説化もすんなりできたわけではない。それは次回のお話で。
それでは、皆様、また、次のお話でお会いしましょう。
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