第4話 トリオ、秘密基地を作る

トリオは秘密基地を作るため、周囲を探索した。川は上流が2~3メートルの川幅で水の流れが急で複雑に入り組んでいるが、基地前になると5メートルほどに広がるため流れが一気に緩やかになり、深さが1メートル以上もあるため天然のプール状態だ。周囲から見えないから「川原で焚火をしながら泳げる!」トリオの胸が躍る。川向こうの崖は10メートル以上あり登れないが川原側の崖は高さ2メートル位で、生えている木を伝ってトリオは崖を登ってみた。そこには休耕田が広がっていた。

カンタ「ここじいちゃんの田んぼがあったとこだ!」

カンタの祖父は数年前に他界していてその後は誰も手を入れておらず、今は雑草のジャングルと化し、崩れかけたアゼで辛うじて田んぼだと判る風になっていた。

知っている場所に出たため一気に地理が理解できる。トリオが居る場所は町と山の堺になる場所で、休耕田を下ると家々や中学校が出てくる町の始まりにあたる。トリオは次からここへ来る時、あの危険な砂防ダムを登らずに来られるのだ。

次の日、トリオは各々様々な道具を持って中学校に集合した。そして山に向かい休耕田を通り、端の土留めがある杭にロープを掛け崖を降り秘密の川原に到着した。簡単な移動、誰も知らない場所、自分達だけの秘密基地、ワクワクが止まらない。キンペイは持ってきたナタで休耕田の端に生えていた細い竹を何本も切りカンタが川原へ運ぶ。テツオは竹を川原の端に持って行き地面へ次々と刺し円形になるように囲って行く。全部刺し終えるとキンペイが先端を手繰り寄せ、反対側を同じ様にカンタが手繰り、交差させるとテツオが先端同士を紐で結ぶ。これを繰り返し竹で囲われた円形がドーム型になる。そこに持ってきたブルーシートを掛け基地が完成した。翌日、テツオは色々な道具を持ってきて基地をいじって修繕する。崖をスコップで削り登り易いように緩やかな傾斜にしたり、基地の屋根が少し歪だったのが気になったのか、竹のしなりを一定にするため梁になる竹を結び形を整えた。キンペイは道具を置く簡単な棚を作ってカセットコンロを持ち込んだ。水筒に水を入れて来ればカップラーメンが食べられる。

カンタ「よっしゃ、秘密基地完成だな」

キン「大体こんなもんかね」

カンタ「この秘密基地はオレ達だけの秘密だぞ」

キン「カンタお前誰にもバラスなよ」

カンタ「キンこそ誰にも言うなよな」

テツ「ねえ、ちょっと気になるんだけど」

カンタ「どうしたテツ」

テツ「結構タバコの吸い殻が落ちてるけど誰かここに来てるんじゃない?」

キン「オレもちょっと気になってた」

カンタ「釣りの人が捨ててったんかなあ」

テツ「マナー無いね」

キン「何か備えをしたほうが良いかも」

カンタ「よし!敵に備えて基地の防御を固めようぜ!」

敵といっても誰かが攻めて来る事は当然無い、空想の敵を想像するのはこの年代の男子の悲しい習性だ。

テツオはスノコをノコギリで切って盾を作り、キンペイは崖の昇り降りする場所に落とし穴を作った。

キン「なあ、敵に対する備えはこんな感じか?」

テツ「盾は作ったし、大丈夫じゃない?」

カンタ「う~ん・・・、相手が大人なら対抗出来るかなあ」

キン「銃があればいいけどな」

テツ「銃みたいな協力な武器がほしいよね」

カンタ「爆弾だ!爆弾作ろうぜ!」

テツ「確かに爆弾なら銃より強力だけど作れる?」

キン「火薬が沢山あれば作れるかも」

カンタ「花火を集めてさ、火薬を取り出せばいいじゃん!」

キン「よっしゃ!家にある花火を集めて明日は爆弾作ろうぜ!」



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