瞬きの詩集

白霧 雪。


 青い空にいだかれて

 遠くへ

 とおくへ

 手を伸ばす


 ほんの少しだけ

 前へ踏み出す勇気


 後ろを振り返ることのできない

 臆病なわたし


 すべて置いていくの


 嫌いな英語も

 大好きな小説も

 大切な家族も

 優しかった友達も


 振り返ればすぐそこにあるのに

 わたしは前だけを向いていく


 風が優しく頬を撫でて

 全身を包み込む


 視界いっぱいに広がる青い空

 青い蒼い、あおいそら


 自由に翼を広げる鳥になりたかった

 ゆったりと流れる雲になりたかった

 真っ白に輝く太陽になりたかった

 しっとりと濡れる月になりたかった

 わたしという個人から抜け出したかった


 ほら

 両腕を広げて

 口の端を上げて笑うのだ


 さようなら、と

 大きな声で告げる


 全てを羨み

 恋焦がれるわたしとは

 今日でさようなら



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瞬きの詩集 白霧 雪。 @yuki1230

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