最終話 神殺刃
ジンと神との戦いは壮絶を極めた。
その刃は透明だった。ジンはなんだかそんな気はしていた。
神殺刃はジンに適合した。そうこれは持ち主が死して尚、残り続けた魂の武器だったのだ。
ジンの一族が残した唯一の武器。それが神殺刃。
そして神殺しの体術。神殺刃を持つ右手を前に、左手を後ろに、右足を後ろに、左足を前に、構えを取った。
神は構えすら取らない。
刃が射出された。そう神殺刃はスペツナズ・ナイフだった。
しかも直線ではない。
――疑似次元爪展開。
展開した刃で射出した刃を掴む、そして軌道を捻じ曲げる。
それに対して神は――
「
渦巻く次元はどこまでも巻き込んで全てを飲み込んでいく。
刃が吸い込まれていく。軌道を捻じ曲げようともその爪ごと飲まれていく。
「クソッ!」
「この程度の技で困っているようじゃこっちも困っちゃうよ」
刃が飲み込まれた。かに見えた――
「だったら内側から切り裂けばいい」
渦に飲み込まれたはずの刃が飛び出して来た。
切り裂かれた渦は霧散する。神は嗤う。
「そうでなくちゃ!」
刃を手のひらで受け止める〈月読〉
ジンはすぐさま〈
一気に一人と一柱の距離が縮まる。
接近戦になる。
「
「
衝撃が迸る。バチバチと音を立ててそれは伝播していく。
「押し斬れぇぇぇ!」
「こっちはまだ片手だよ?」
もう片方の手をがら空きの腹へ向けて放とうとする〈月読〉。
それを読んで脚でガードするジン。
「
太ももと
そのままへし折ろうとする。
しかし。
「次元渦」
今度は自分を次元のブラックホールに吸い込ませる〈月読〉。
そうする事で腕を守ろうとする。
だが。
「切り裂け、〈
神殺刃ともう一つ、持っていた己が武器。その刃にて渦を切り裂く。刃が〈月読〉に届く――
「――
突如〈月読〉の姿が掻き消える。
「何処に行った!?」
『さあて? 何処だろうね?』
虚空から響く声が不気味だった。ジンは辺りに刃をばら撒いた。
「切り裂け! 切り裂け!」
『あはは、無駄無駄!』
「クソッ! どの次元に居る!? 五次元? 四次元? 二次元か? 一次元か!?」
「落ち着けジン!」
黒条先生の声が届く。
「よく概念を見ろ! 意識じゃなく、感覚で捉えろ!」
――感覚。
その言葉を受けて、ジンは感覚器を研ぎ澄ます。五感と第六感までフル活用して、〈月読〉という概念を掴み取る。
「――見つけた」
切り裂いた虚空から〈月読〉が現れた。
「ありゃりゃ見つかっちゃった」
「飄々としやがって!」
掴んだ刃は離さない。捉えた獲物は逃がさない。
神殺刃と〈
「神殺刃?」
「そうだ! そして――」
〈
●
――一瞬、世界が白と黒に反転した――
〇
「二の太刀!」
〈
∞
――神を引き込む無限の引力――
∞
「うおっ!?」
〈月読〉が初めて焦りを見せた。
二度の権能使用。その二段構えは、回避不可能の斬撃の乱舞。
次元を切り裂く概念そのもの。
それを躱す事は不可能であった。
全身を切り刻まれ青い血を吹き出させる〈月読〉。
「ガッ!?」
「まだだ!」
神殺刃を構える。技を放つ。
「
それで終わり、そう思った瞬間だった。
「次元権能・万転回帰」
その時、まさしく地球がいや、宇宙が逆に回った。
「無駄だよ。この技を破れない限り――」
その言葉を最後まで聞く気はジンには無かった。
「捉えたぞお前の本体」
「――は?」
神殺刃と〈
「まさかまさかまさかまさか――!?」
「お前は月なんだな?」
どこまでもどこまでもシロツメクサの花畑は広がって行く月面に。
「ガハッ!」
吐血する〈月読〉。決着。であった。
こうして、ニンゲンは神に勝利した。
彼らが次元を超える力を手にし魂だけの存在になって何をするのか。
それはまた未来の話である。
完
変幻自在のファントムナイフ 亜未田久志 @abky-6102
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