第21話 大陸王討伐作戦
一人、シロツメクサの花畑で泣いていたジン。その肩に手が置かれた。
{!?」
思わず振り返る。アンナが戻って来たのかと思って。しかしそこに居たのは。
「よう、なんか青春みたいな事でもあったか少年?」
そんな的外れな事を言う黒条先生だった。
「先生!? どうしてここに……?」
「馬鹿な生徒を、監督するのも担任の役目だからだ」
「……先生」
涙を拭い立ち上がるジン。
「少し悲しい別れがあっただけです。それ以上でも、それ以下でもありません」
「……そうか、お前が納得出来てんならいいがな」
「納得なんて、多分一生出来ません。でも今ここで飲み込まないと立ち止まってしまう気がするから。俺は己の衝動に従います」
「……衝動ねぇ」
どこか訝しげにジンを見やる黒条先生だったが、それも一瞬の事。すぐさまどうして此処に居るのかを語り始めた。
「俺達は今、以前の襲撃を受けてから会議をし、その後『大陸王討伐作戦』を実行中だ。中心となっているのはかの
「そんなに広範囲に能力を広げられるんですか……? ん? それより俺達って、先生達の他にも誰かまだいるんですか?」
「やっほー☆」
顔を出したのは碧崎クラウディアだ。
「クラウディア!? どうしてここに……って今聞いたばっかりか。お前も大陸王を討伐しに?」
「そだよー。でもジン君に先越されちゃったかもねー」
「かも?」
小首を傾げるジン。クラウディアはにひひと笑い、言った。
「アフリカ大陸の大陸王は私が倒した!」
その言葉に愕然とするジン。
「なんだって!?」
「えへへ~。褒めてもいいんだよ? まあ、ほとんど白輝先生の力借りちゃったから単独撃破とは言えないけどー」
「嘘だろ。倒してからもう此処に居るって事は俺より早く倒したって事じゃ……」
「残念ながら、そういう訳でもない」
注釈を入れたのは勿論、黒条先生だ。
「〈
そう言って後ろに浮かぶ軍艦を親指で指さす黒条先生。
「どうやってここを?」
「お前が派手に暴れたってのもあるが……〈
「さすが、英雄……」
「おっと、だが俺をあなどってくれるなよ北アメリカ大陸の大陸王は俺が倒した。単独でな」
「あー、先生ずるい! 雑魚狩りはしてもらってたくせに!」
クラウディアが抗議の声を上げる。
「ちなみに南アメリカ大陸の大陸王は宝玉アカネが倒したぞ。あいつ〈
「宝玉先輩が!?」
あの〈
「そして、オーストラリア大陸の大陸王は白輝先生が倒した……主力一隻だけでな。他は全部、他大陸のサポートに回してな」
「……凄すぎる」
「つーわけで
「え、大陸王ってまだ……あっそうか」
人が住める地ではないため一瞬失念していたが大陸は全部で六つ。残るは――
「南極大陸の大陸王〈極天〉を倒しに行く。ソイツはあの大大陸戦争も生き残って最後まで白輝ケイと
「〈極天〉、それが最後の大陸王……」
「さあ乗れ、出航だ」
光の軍艦へと跳躍する黒条先生。続くクラウディア。ジンも遅れて乗り込んだ。
「さあ動くぞ! ホントに一瞬だから覚悟しろ! 光速酔いに注意しな!」
「私アレ嫌い~」
「え、そんなあるんですか――」
聞き終わる前に、そこはもう氷の大地だった。
「こういう時、宙に浮いてるこいつは便利だよな。光の海原を泳ぐ無敵の軍艦」
「ちょっと待って下さいオロロロロ」
「あ、せんせー。ジン君が吐きましたー」
のんきに告げるクラウディア。黒条先生は嘆息し。
「はぁ、それでも最速で大陸王を破った勇者かよ?」
「いやだって……俺は一週間もかかりましたし……」
「みんな大体一週間くらい戦ったよ?」
「え?」
「神が世界を一週間で作ったなら、俺らは一週間で大陸を塗り替えた訳だ。これでまたジン類は神に一歩近づいた」
「……ジン類って結局なんなんです?」
「さあな、悪いが、その質問には教師である俺にも答えられん。白輝ケイ辺りなら『進化したニンゲンである』ってな感じに断言しそうだがな」
「というか〈極天〉は?」
その質問を受けて黒条先生は顔をジンの方に向けたまま人差し指を上に向けた。ジンはその方向を目線で追いかけた。すると、そこには――
「なっ!?」
砲撃戦、であった。光の乱舞とでも呼ぼうか。撃ち合いになっている色とりどりの光線が空を埋め尽くしサイケデリックな模様を作り出していた。
「――なんですアレ!?」
「見てわからんのか? 〈極天〉と〈
「あの中に、俺が?」
瞬間、無理だ。そう思った。思ってしまった。〈雷帝〉との戦いでさえアンナの協力あってこそ成しえた勝利だった。今、なんの協力も無しにあの頂へ登る勇気は、今のジンには無かった。
「怖いのか?」
「……怖いです。俺は〈雷帝〉の〈次元雷〉も結局避けれなかった」
「……ユーラシア大陸の大陸王との戦いで何があったのか知らんが、それでも今お前は此処に居るそうだろう?」
黒条先生がジンの肩を叩く。
「それに仲間もいる」
「――情けない。それが私に勝った男の姿か」
そこに居たのは宝玉アカネで――
「――はっ! 俺だって〈
そこに居たのは柿崎ワタルで――
「ね? だから行こジン君!」
そこに居たのは碧崎クラウディアで――
「俺達ならやれるさ。お前達は立派な俺の生徒だ」
そこに居たのは黒条ナオトで――
そして大勢の私立第一武器学園の生徒、教員たちであった。
「俺達はもう負けねぇ!」
「もう〈
「あんな奴ら一捻りだぜ」
「だから行こうぜ!」
『1年D組!
同級生からも上級生からも声援を送られる。
いつの間にか有名人になっていたらしいと羞恥に顔を染めるジン。
「あ、照れてる」
「おいおいおい最終決戦前なんだぞ? そんな場合か?」
「先生、こいつはこのぐらいがちょうどいいんですよ」
「ちょっと柿崎君、何様~? っていうか崎が被ってるんですけど!」
「うっせ! だったら〈
「そこ今関係なくない!?」
「あーもう締まらねぇなあ! 俺がまとめっぞ! いいな! 全校生徒! 全員前へ!」
ジンは深呼吸して、一歩踏み出した。
『応!』
こうして私立第一武器学園と〈極天〉との戦いが始まったのだった――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます