第18話 蒼白の記憶
ジンは混濁した意識の中で、祖父の技である
(ああ、そういえばこんな事もあったっけ……)
その日以来、ジンはヒトに向けて体術を使った事は無かった。それを思い出した。
(ごめんな。祖父ちゃん。約束破っちまって。でもさ、俺もっと強くなるから。もっと強くなって、それで――)
それで、どうするというのだろう。ジンは心の中で首をひねった。
(そう、強くなって、そんで俺――)
もう居場所を無くさないで済むようになるよ。
そう、ジンと祖父は結局、元々住んでいた家から引っ越す事となったのだった。
ジンはそれが悔しかった。当時は理由も分からないまま、引っ越す事を余儀なくされた。それは祖父の決めた事だったが、ジンは納得出来なかった。
今なら分かる。ジンがチンピラ達を倒してしまったせいで、祖父はその責任を取らされたのだ。あの一帯の地域を支配していたのはあのカシラだ。だから、追い出された。今なら分かる。自分がもっと強かったら祖父に責任を負わせる事も無かったのにと。
だから、強くなる。
強くなって神だって超えてやる。
そんな欲望がいつからか沸いていた。それはチンピラ達が言っていた〈神殺しの一族〉の血がそうさせるのか。そこまでは分からないが。
そこで、声が聞こえた。
――て! ――ン! ――てジン! ――起きてジン!
バッと起き上がるジン。目の前に居たのはアンナだった。
「大丈夫? ローレンスの〈
「ああ、悪い。〈
「げきやく?」
「ああ……なんていうか、拒絶反応みたいなものが出るんだ。その代わり魂の武器が強化される……俺の〈
しかしアンナはジンの言葉を途中までしか聞いていなかったようで。
「拒絶反応……それは当然だよ。私達人間……〈
「……身体が変質?」
白くなった髪の毛、青く光る瞳。身体強化。次元を超えた感覚etc……。
思い当たる節はいくらでもある。ジンはニンゲンから離れ始めている。
「それは、俺も〈
片手で思わず顔を抑えるジン、アンナはどこか思案しながら。
「ううん、そうじゃない。貴方はきっと別次元のナニカになってしまう……ニンゲンでも〈
「……そっか」
「受け入れたの?」
「いや、まだ分からない。けどいつか答えを出すよ」
「それまでは、どうするの? 〈
「ああ」
即答だった。その青い瞳に迷いは無かった〈
己の腕にその瞳を向けるジン。そこには――
「――なんだこれ」
一瞬、いつの間にか誰かが自分にタトゥーでもいれたのかと思った。でも違う。その文様はいつの間にか腕についていた。幾何学的な模様。それは手のひらから手首にかけて付いていた。
「それが証。あなたがニンゲンじゃないナニカになっている印」
「……上等だ」
拳を握りしめる。文様が蠢いた。
そんな気がした。
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