第13話 たった一人の修学旅行


 私立第一武器学園で明らかとなった〈解放獣アウター〉の存在。外の世界。ひび割れた向こうに広がる赤い空、青い炎。

 最高機密は破られた。もう混乱は止められない。

「あの化け物なんだんだよ!」

対大陸戦争グラウンドウォーって普通ただの戦争じゃなかったっていうの!?」

「ニンゲンの進化って何!?」

「魂を具現化して強くなって、そうすればで出世出来るって……」

「その自体、存在しないんじゃないのか!?」

「あのひび割れた世界はなんなの!?」

 阿鼻叫喚、止まらぬ憶測。恐怖、困惑、怒り、悲しみ。

 そんな中、一人。そのを飛び出そうとしている者が居た。

「よっと。これで準備はいいかな?」

 荷物をまとめていたのはジンであった。大きなリュックサックを背負っている。混乱する校内を他所にして、悠々と歩き出す。目指すはだった。

「おい、どこへ行く気だ。そんな荷物背負って。つーかそれ学校の備品だろ。避難時のための非常食とか勝手に持ち出してんじゃねーよ」

「あ、黒条先生。丁度良かった。探してたんですよ」

 黒条先生が首を傾げた。

「あん? なんだ」

「俺を〈解放区アウターゾーン〉に連れて行って下さい」

「はあ!? なんで」

「行きたいからです。俺が」

「……あーそうかよ。行きたいなら勝手に行け。〈上限者ハイエンド〉になったお前なら〈解放区アウターゾーン〉の気配を辿ってはずだ」

「なるほど。了解です。ありがとうございました」

 ペコリと頭を下げてから、その場を去ったジン。黒条先生はその大きな荷物を背負った背中を見ながら。

「……ったく世話が焼ける」

 と一人ごちた。


 校門を抜ける。そして深呼吸。手のひらを目の前に突き出す。目を瞑り、風を感じる。

「――理解わかった!」

 グッ! っと虚空を握り込む。何かを掴んだ感触。一気に引き抜く。すると――


 ――虚空は剥がれ落ち、空が真っ赤に染まった。青い炎が溢れ出し、平和だったはずの街並みの光景は、見るも無残な姿に崩れている。


「こっから先が〈解放区アウターゾーン〉。俺の新天地だ」

 ジンは〈虚空の刃ファントムナイフ〉を取り出した。前回とは違い〈上限者ハイエンド〉であるこちらを警戒している〈解放獣アウター〉共に己の力を見せつける。

「〈虚空跳躍ファントムジャンプ〉」

 〈虚空の刃ファントムナイフ〉の切っ先を前方に向けてトリガーを押す。すると一瞬でジンの姿はその場から消えた。

 ジンはそのまま〈虚空跳躍ファントムジャンプ〉を繰り返して真っ直ぐ進んだ。海に向かって。海を越えるため。海を越えて。に着くために。

「待ってろよ大陸王……! 俺が狩ってやる!」


 ――さて、ジンの大陸王狩りが始まるその前に。

 何故、彼がここまでの戦闘狂バトルジャンキーになってしまったのか。

 話さなくてはならないだろう。

 それがである私の役目なのだから――

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