第6話 スペツナズ・ナイフ


 ジンが〈解放獣アウター〉を最初の一匹含め十体狩り終わりその〈魂血ソウルブラッド〉を〈虚空の刃ファントムナイフ〉に吸わせた時だった。ジンの頭髪が純白に染まったのだ。己の視界に移る真白の髪の毛を見てジンは。

「先生これって!」

「ああ、良かったな、これでお前も〈上級者ハイクラス〉だ」

 五条先生の言葉を受けて喜びのガッツポーズを取る。

「やった! それで俺の〈虚空の刃ファントムナイフ〉って〈上級者ハイクラス〉になったら何が出来るんですか?」

「リーチが伸ばせる」

「……へ?」

「だから、リーチが伸ばせる」

「え、嘘ですよね。だって宝玉先輩は〈炎気えんき〉って技とか、再生能力とか……」

「あー、そういう固有の〈技能〉について俺から言える事はない。というかぶっちゃけわからん」

「はあ!?」

「だって当たり前だろ、十人十色、ニンゲンそれぞれに固有の武器があるんだ。それをいちいちどんな能力があるかなんて把握出来るかっての」

「嘘でしょう……ここまでやってリーチを伸ばせるだけ? っていうかナイフでリーチを伸ばすってどうやるんですか!? 如意棒みたいに伸び縮みするとでも!?」

「それに関しては一家言ある。お前、スペツナズ・ナイフって知ってるか?」

「すぺつな……?」

「ソ連の特殊任務部隊が使ってたって言う。のナイフだ」

「ナイフを射出?」

「ああそうだ、バネ仕掛けでな。ボタン押せば飛び出す仕組みだ。それをイメージしろ」

「イメージですか……? それだけで変わるんですか?」

 コホンと咳を吐く黒条先生。

「いいか? 俺達〈魂操士ソウルマスター〉は魂を武器にしてる。つまりはその魂が描く力がそのまま能力として開花していくものなんだ」

「さっきから思ってたんですけど、その〈魂操士ソウルマスター〉って言葉も初耳なんですけど、そんなダサい名前で呼ばれるんですか俺達」

「ダサいとはなんだダサいとは、偉大なる初代〈魂操士ソウルマスター〉が名付けた名前だぞ」

「はあ……」

「あーまあいい話を戻すぞ、お前の〈虚空の刃ファントムナイフ〉が本当にナイフの形をしているというのなら、リーチを伸ばすにはお前の言った通り単純に伸び縮みさせるより、実在するスペツナズ・ナイフのが実戦向きだ」

「……やってはみますけど、えっとでもボタンなんてないですよ?」

「だからイメージしろ。それで生やせ」

「生やせ!?」

「いいから早くしろ」

「ああもう! 分かりましたよ! イメージイメージ……ボタン……射出……」

 〈虚空の刃ファントムナイフ〉を構えて虚空に向ける。持ち手の所に現れたであろう虚空のボタン、トリガーに手をかける。

「ええいままよ!」

 ジンはカチッという音を確かに聞いた。

 射出された刃は虚空を切り裂き飛んで行く。飛んで行った先の壁を突き破り、そこに居た〈解放獣アウター〉を切り裂き真っ二つにしてさらに突き進んで、その軌跡は見えなくなるまで飛んで行った。

「……これがスペツナズ・ナイフ」

「本物はこんなに威力無いけどな。これぞ〈上級者ハイクラス〉の証って奴だ。そしてここまできたご褒美だ。対宝玉戦のアドバイスをやる」

「!? なんですかそれ!?」

「落ち着け、いいか子の言葉をよく覚えとけ? アイツと戦う時は宝玉本人じゃなく。いいかもう一度言うぞ? 

「……不死鳥を斬る?」

「そうだ、意味はおのずと分かるはずだ。アイツとの戦いの中でな。これ以上は俺は一生徒に肩入れしない。まあもう充分し過ぎたくらいだがな」

「……ありがとうございました」

「いいって事よ。再戦リベンジマッチ、期待してるぞ」

「はい!」

 そうして二人は校舎へと帰って行くのだった。

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